第93話
トレントは基本的に獲物が来るまで待ち続ける魔物と言われており、獲物が自分たちにとって都合の良い立ち位置に来ると根っこなどを使い攻撃を仕掛けだすのだ。
コウは見事にトレント達の待っていた都合の良い場所に足を踏み入れてしまい、トレント達は攻撃を仕掛けてきたのである。
しかしコウは疑問に思ったのだ外套に魔力を込めれば認識阻害の能力が発動するので基本的に魔物には気づかれないのに何故、トレント達には気づかれてしまったのかと。
ただあまり考えてる暇もなさそうで地面からはトレントの触手のような根っこが何本も突き出しトレント達はこちらへ攻撃する準備をしていた。
「考える前にまずはこいつらを片付けてからだな」
コウは何故、気づかれてしまったのを考えるのを後にしてサンクチュアリを構えるとトレントの根っこが10本こちらへと伸ばしてきて上下左右、様々な方向から襲いかかる。
空中に逃げたとしても先程と同じ様に追尾してきて足を掴まれるのはわかっているのでコウはすべての根っこに対応するようにサンクチュアリを細かく、そして正確に1本1本を対処するように振るい切り飛ばしていく。
しかし襲ってくる根っこを切っても切っても地面からはトレントの新たな根っこが突き出して襲いかかってくるのできりが無く埒が明かない。
「攻撃をずっと受け続けるのも良くないな!氷槍!」
コウは氷槍を目の前に作り出しトレントに向かって打ち出すとトレントは自身の前の地面から根っこを盾にするように出し氷槍を受け止めた。
「駄目か!俺の魔法が炎系だったら楽だったのに!」
確かに炎魔法だったら受け止めたとしても燃えて簡単にトレントを倒せただろう。
しかし炎魔法の適正は無かったのでコウはトレントの攻撃を捌きながらボヤく。
まぁたとえ炎魔法が使えてトレントを倒せても燃えてしまって素材としての価値は無くなってしまうのだが...。
「キュイ!」
肩に乗っていたフェニが急に鳴き声を上げ自身の使える雷魔法をコウの背後に向かって放ったので何だと思い振り返ると、そこにはトレントの根っこがありフェニの雷魔法で焼け焦げていた。
どうやらこっそりと後ろの地面から根っこを出しコウを狙っていたようだ。
「フェニ!助かる!」
フェニが後ろを警戒してくれていたお陰で不意打ちを喰らわずに済み、お礼を言いつつ前方から来るトレントの根っこに対応していく。
「埒が明かないな!まずはトレント達の視界を奪う!
魔法を唱えるとコウの足元から霧が発生し1m先も見えないほどの霧が周囲を包み込む。
この霧は相手の視界を奪いつつ自身は霧の感知能力で動く相手の位置が手に取るように分かるといった魔法だ。
これでトレント達の視界を奪ったので根っこの攻撃が収まると思ったが先程と変わらず根っこは正確にコウに向かって襲ってきた。
「なんで視界が無いはずなのにこっちに根っこが来るんだよ!」
コウは霧の感知能力で根っこがどの方向から来るか、わかっているため対応していると足元の地面からトレントの根っこが飛び出してくるのでジャンプし避けて近くの木の上に飛び乗る。
するとトレント達の根っこがピタリと止まるのが霧の感知能力でわかった。
「いきなり攻撃が止まった?」
もしかしたら木の上の位置までは根っこが届かないのかも知れない。
しかし視界の悪い中なのに何故、コウを正確に攻撃できたのか?そして何故、コウが木の上に乗った瞬間に根っこの動きが止まったのか疑問が残る。
もし位置がわかるのならばコウの乗っている木を攻撃して叩き落とせばいいだけなのだ。
コウは乗っている木に生えている枝を折って先程いた場所に枝を放り込むと地面に落ちた瞬間、トレントの根っこが動き出し木の枝が落ちた場所に攻撃するのが霧の感知能力で確認できた。
「なるほどな。トレントは視界だけじゃなくて地面の振動で位置を感知してたのか」
どうやらトレント達は地面に根を張り、動く時の振動でコウの位置を把握していたようだ。
ようやくトレントが何故この視界が悪い中で正確に攻撃できた理由がわかりコウは1つの対処法を思いつく。
「視界と振動さえ無ければ氷槍は防げないだろ」
氷槍は地面に振動を与えず空中を飛んでいく魔法のため、まずトレントの根っこは反応できないだろう。
そして視界も潰していれば先程のように受け止められることもないと思いコウは氷槍をもう一度だけ作り出しトレントに向かって飛ばす。
するとどうだろうか?やはりというかトレントは視界や振動が無いためか飛んでくる氷槍に反応できず樹木の身体に飛んできた氷槍が突き刺さってしまったようで霧の中から叫び声が聞こえてくる。
「これなら余裕だな」
残りのトレントの位置は樹木の身体が揺れているのか分かりやすく氷槍を空中に作り出し次々とトレントに向かって氷槍を飛ばしていくと、どのトレントも対応できないのか次々と倒されていく。
正攻法ではないがコウにしか出来ない攻略法だろう。
全ての動いているトレントに向かって氷槍を飛ばし終わると自身が出した霧を晴らし周囲の視界を良くして倒したトレントの様子を見る。
どうやら氷槍が木の表面に浮かび上がった顔の部分に当たっていたようで地面から出ていた根っこはだらりと垂れて動きはなく無事に倒せたようだ。
「よし、あとは回収するだけだ」
コウはそのまま乗っていた木から飛び降りると自身が倒したトレントに近づき収納の指輪の中へ回収するのであった...。
ここまで見てくださってありがとうございます!
そしてブクマや星をくださる方もいつもありがとうございますm(_ _)m
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