第94話

「よし...トレントの回収はこいつで終わりだな」


 倒したトレント達を全て収納の指輪の中へ回収し終わり一息つく。


 回収したトレントの数は4体であり、金額に換算すれば金貨2枚分である。


 ただしこれっぽちの稼ぎではこれから小鳥の止り木に泊まっていく上で確実に足りなくなっていくためもう少しトレントを狩る必要があるのだ。


「なんかトレントを見つける良い方法はないかなぁ...」


 近くの木に背中を預け座り一息ついている最中、膝にフェニをのせ毛づくろいをしているがこれといった方法は思いつかない。


 相手は待ち続ける魔物であり、目もあるためきっと石などを放り込むだけでは反応してくれなだろう。


 かといって大切な相棒のフェニを囮に使うわけにもいかないのだ。


 う~んと悩んでいると毛づくろいされているフェニがコウの膝からおり、翼を広げ何かアピールをしてくる。


「なんだなんだ急にどうした?」


「キュイ!キュキュイ!」


 何かしら伝えようとしてるのは分かるが何を伝えたいのかが全くわからない。


 きっとフェニにはトレントを見つける何かしらの案があるのだろう。


「わからんぞ...まるで自分を使えと言ってるようにも...あっ!なるほどそれがあったか!」


「キュイッ!」


 フェニは自分を使えと言っているのではなく自分に似たものをコウの魔法で作り出したらどうだと伝えたかったようだ。


 前にライラへ作ってあげた氷のフェニを同じ様に複数体作り出すと鳥のように飛ばしそこらの地面へと降り立たせ探索させる。


 すると面白いことにトレントは獲物が掛かったと勘違いして地面から根っこを出し氷のフェニを攻撃しだした。


 勿論、そこまで魔力を込めていない氷の為か一瞬で壊されてしまうのだがトレントは氷のフェニに気を取られており、背後にこっそりと回ってから氷槍を打ち出すと気づかずそのまま貫き倒していく。


 普通の冒険者ならパーティーを組んで1人偵察できるような人員を前に出し慎重に進みながら広い森の中、トレントを探すのだがコウにとっては関係なく少々ずる賢い方法でもあった。


 そしてある程度トレントを倒して回収しているといつの間にか葉っぱの隙間から見える空は茜色に染まっており、夕方だということが分かる。


「結構なトレントを倒せたけどトレント以外の魔物は見かけなかったな。まぁ帰るか」


 氷で作り出したフェニのお陰でそれなりのトレントを倒すことに成功し、稼ぎとしては十分だったのでコウはローランへと帰ることにした。


 帰る最中は何事も無く無事にローランへ到着すると門は夕方の帰宅ラッシュのような列が並んでいたのでコウたちも並ぶ。


 受付を済ませる頃には先程まで茜色だった空が青黒い夜の色に変わり頭上に広がっていた。


 ローランの中へ入ると既に帰ってきていた冒険者達が酒を片手に今日の依頼の内容や中には店の看板娘に自身の武勇伝のようなものを言って絡んでいるものもいる。


 といっても看板娘は「はいはい」と言いつつ酒で酔って絡んでくる冒険者を慣れた様子でいなしながら他の客を接客しているようだ。


 依頼の報告のため冒険者ギルドへ向かい扉を開けると冒険者たちの依頼報告は殆ど終わっているらしくそこまで受付には人が並んでいなかった。


「お疲れ様。成果はどうだったかしら?」


 受付の前に歩いていくと朝、依頼の受付をしてくれたミラがまだ仕事をしていたようでコウの成果を聞いてくる。


「そこそこ倒せたぞ。あと解体をして欲しいんだけどトレントはギルドの横にある倉庫に出せばいいか?」


「そうね。隣の倉庫に出してもらってもいいかしら?」


 依頼の報告も無事終わりコウはそのままギルドを出ると隣の大きな倉庫に入っていく。


 倉庫内は壁で区分けされおり解体をする人達は今日、冒険者が狩ってきた魔物を解体しており、換気や血の処理などは魔道具でされているのだが、十分ではないためか血の匂いが漂ってくる。


 ただ基本的に冒険者は自分で解体したほうが解体手数料が取られずに済むため自分で解体してくる者が多くここを頼る人はそこまでいない。


 もし頼っているとしたらコウのように解体が苦手な人だろう。


「らっしゃい。ってこの間のゴブリンとかオークをたくさん持ってきた子か」


 コウを出迎えてくれたのはこの間、ゴブリンやオークの解体を丸投げし対応してくれたオーバーオールの作業着を着た坊主の男性であり、先程まで解体していたのか服に多少の血がついている。


 どうやら顔を覚えてくれていたらしい。


「久しぶりだなおっさん。今日はトレントを頼む」


「まだ20代のお兄さんだ!間違えるな!ったく...それでトレントはどれぐらい持ってきたんだ?」


 どれくらい持ってきたのか聞かれたのでコウは今日倒したトレントを区分けされている場所に収納の指輪の中から積み上げるように出していく。


「おぉ結構すげぇな。最近は魔物の数も何故か減ってきてここまで狩ってこれるとは...」


「魔物の数は減ってるのか?だから今日はトレントしか見なかったのか」


「まぁ理由はわからねぇがな。最近は少ないらしいぜ」


 どうやら魔物の数はやはり減っているようで今日コウがトレント以外を見かけなかったのは偶然ではなかったらしい。


 とはいえ魔物は人々の敵であると同時に倒した魔物は食材だったり素材だったり人々に必要なものであったりするので減りすぎるのも問題であるのだ。


 適当に雑談を切り上げてコウは解体の人にトレントの解体を何時も通り丸投げするとさっさと宿に戻って1日の仕事が終わるのであった...。




ここまで見てくださってありがとうございます!


そしてブクマや星をくださる方もいつもありがとうございますm(_ _)m

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