第91話

 ここは小鳥の止り木。ローランではそれなりに評判の良い宿で貴族やそれなりの冒険者などから愛用されている店だ。


「着いたぞフェニ」


「キュイキューイ!」


 冒険者ギルドでCランクに無事にランクアップし昼食も屋台で済ませたコウとフェニは前回泊まった小鳥の止り木まで来ていた。


 フェニはようやくふかふかのベッドでゆっくりできると思い喜んでいるようだ。


 ゆっくりするといってもフェニは大体コウの肩に乗っているのでそこまで疲れてはいないだろうがそこは気持ちの問題だろう。


 小鳥の止り木の入口のドアを開け中に入ると受付嬢のミランダが箒を持ちせっせと掃除しているのが見え、入り口は店の顔という言葉があって清掃がかなり行き届いている。


「いらっしゃいませ。あら?お客様は確か...コウさんではありませんか?」


「最近いなかったのに俺のことをよく覚えてるな」


「ふふっ、顔を覚えるのは得意なんですよ?本日は何日お泊りになられますか?」


 どうやらミランダはコウの顔を覚えていたようだ。


 ミランダはコウのことを長期間泊まっていく客だと前回コウが泊まった時に理解しているので掃除する手を止めて受付の前に立つと何日泊まるかどうかを聞いてくる。


 コウとしてはまだ30枚ほど金貨の余裕があり、ローランで当分は活動するという予定なので数日は小鳥の止り木で泊まろうと考えていた。


「ん~取り敢えずは5日程でいいかな。金額は?」


「5日ですね。では割引して金貨8枚になります」


 ミランダもコウの長期滞在に慣れたのか5日と聞くとすぐに料金を計算し手際よく対応してくれた。


 コウも金貨8枚と聞きいつも通り収納の指輪から金貨8枚を取り出すと受付の机の上に置き部屋の鍵を引き換えに受け取る。


 鍵の部分についてる番号を見るとどうやら部屋は前回コウが泊まった同じ部屋のようだ。


「ではごゆっくりどうぞ」


「ん、ありがとう」


 コウはさっそく近くにある階段を登り、自分の部屋へと向かう。


 前回の部屋の前に到着し扉を開けるとコウは綺麗にベットメイクされていたベットへ倒れ込む。


 ふかふかのベッドの感触と太陽の匂いがコウを包み込み、丁度昼頃なので少しだけ昼寝でもしようかと思うぐらいだ。


 ベッドの横には机があるのでフェニがいつでも食べれるように果物を皿に乗せ用意する。


 そのままのんびりとふかふかのベッドに寝転がっていると室温も丁度良く目がうつらうつらして少しだけ目をつぶると意識を手放したのであった。


 何かが頬を突くような感じがしてコウは目を擦りながら起床すると身体にだるさや倦怠感が残っている。


 突いてきていたのはどうやらフェニであり、夕食の催促だと思ったのだが外はまだ少しだけ暗い状態だ。


「まだ夕食じゃないぞフェニ...というか果物があったろ...」


「キュイ!キュイ!」


 それでもお腹が空いているらしくフェニはコウへと早くご飯を用意しろと抗議していた。


 そんなやり取りをしていると部屋のドアがコンコンと鳴らされ部屋の外からミランダの声が聞こえてくる。


「お客様おはようございます。朝食はどう致しますか?」


 朝食...?まだ昼を少し過ぎたはずでは?と疑問に思いつつコウは倦怠感が残る身体を起こし部屋のドアの前まで移動しドアを開く。


「朝食はこちらにお持ちしますか?」


「朝食ってもしかして朝?」


「えぇ、朝ですが...どうかなさいましたか?」


「いや何でも無い。悪いけど朝食を持ってきてくれ」


 ミランダは「かしこまりました。すぐに朝食をお持ちしまので少々お待ち下さい」と一言だけ残し部屋の前から立ち去り階段を降りていった。


「なぁフェニもしかして俺は丸一日寝てたか?」


「キュイッ!」


 フェニはそうだ!と言うような感じで返事を返してくるのでどうやら本当に丸一日寝てたらしい。


 思った以上にコウは疲れていたのかここまでぐっすりと寝たのは久しぶりだとコウは思う。


 コウはフェニに軽く謝ると空になった皿の上に追加の果物を乗せるとフェニは待ってましたと言わんばかりに果物を突き食べだす。


 再びドアがコンコンと外からドアをノックされ「朝食をお持ちしました」とミランダの声が聞こえたのでドアを開け部屋へ通すと朝食を机の上に並べていき軽くお辞儀をして部屋を出ていく。


 朝食は手軽に食べれるサンドイッチのようでサラダやデザートの果物、飲み物などそれなりに量はあるようだ。


 コウは次の日は冒険者ギルドに行って依頼を受けようと思っていたので朝食を手早く済ませると外に準備をする。


 まだ朝でも早い時間帯なので依頼はそれなりに残っているだろうと思いつつコウは宿を出ると、宿の隣に立っているルーの魔道具本店が扉を開け、店主のルーカスが店を開ける準備をしていた。


「おや?コウさんではありませんか。お久しぶりです」


「久しぶりだなルーカス。元気にしてたか?」


「えぇ勿論元気ですとも!これから依頼でしょうか?」


「そうだなこれから依頼でも受けようかなって...あっ!そういえば魔道具ってルーカスのところで売れるか?」


 コウは足音を消せる魔道具の靴を持っていることを思い出しルーカスへと尋ねる。


 するとルーカスの目がキラリと光ったように見えどうやら商人モードに入ったようだ。


「物によるのですが勿論買取はさせて頂いてますよ」


「そうか。ならこの靴なんだけど売れるか?」


 収納の指輪の中から魔道具の靴を取り出すとルーカスに渡し見てもらう。


 そこそこに便利なものであり、暗殺ギルドの2人組もあまり手放したくはない様子だったのできっとそれなりの値段になると踏んでいた。


「ふむぅ...少しだけ鑑定しますのでお預かりしてもよろしいでしょうか?」


「あぁ問題ない。じゃあ俺は冒険者ギルドに行って依頼でも受けてくるさ」


「では大切にお預かりさせていただきます。またお店にいらして下さい」


 コウはルーカスに鑑定してもらうべく魔道具の靴を預け別れを告げるとそのまま依頼を受けるために冒険者ギルドへ向かって空いている通りランニングのように走り出すのであった。



ここまで見てくださってありがとうございます!


そしてブクマや星をくださる方もいつもありがとうございますm(_ _)m

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