第89話
氷の魔法で拘束した2人組の男から情報を聞き出すとそれなりに色々な情報が引き出せたのだが、依頼主から直接に依頼をされた訳ではないらしく依頼主の情報までは聞き出せなかった。
聞き出せた情報としては、この2人組は暗殺ギルドに所属しているようだ。
暗殺ギルドはその名の通り暗殺を生業とする者たちが集まるギルドらしく冒険者ギルドと同じくランクがあるらしい。
目の前の2人組はCランクとのことでコウの暗殺に成功していればBランクに上がれたようだ。
ちなみに足音がなかった理由は履いている靴が魔道具だったらしく、音を消して歩けるという代物のお陰であったようだ。
「済まなかった。もうお前には関わらないから見逃してくれないか?」
「いいぞ逃しても。但し条件がある」
別にコウとしては襲ってきた眼の前の2人組を見逃す義理はないのだが、また同じ様な刺客が来ても正直面倒くさいので逃がすことを条件にコウは2つ条件を付け足していく。
「1つ目は俺にこれ以上刺客を放たないように注意喚起してくれ。2つその靴の魔道具を置いていくことだ」
「おい!2つ目のそれは!」
「黙ってろ!命には換えられない。その条件を飲もう...ただ俺らの注意喚起が効果あるかはわからないぞ」
最初に斬りかかってきた男がコウの2つ目の条件が気に入らなかったのか文句をつけようとするともう1人の男が大きな声で黙らせコウの条件を飲む。
やはりコウの見立て通り靴の魔道具はそれなりに価値のあるもののようだ。
「よし交渉成立だな。まず最初に靴を脱がさせてもらうぞ」
コウはそう言うと少しだけ足の部分の氷を溶かし2人の男の靴を脱がし収納の指輪の中へと仕舞っていく。
この靴の魔道具を売ればきっと高い値段になるだろう。
あとは魔物よけのランタンを回収して逃してもいいのだが、まだ夜のため目の前の2人組を夜素足の状態で逃しても死ぬ可能性が高く1つ目の条件ができなくなっては意味がないと思い、拘束した状態で夜が明けることを待つことにした。
■
そして時は経ち夜明け直前。夜と朝の境が見え朝日が大地から少しだけ顔を覗かせていた。
朝までコウの魔法で拘束されていた2人組は流石に疲れているらしく顔に疲労の様子が窺える。
「そろそろ朝だから拘束を解除するか」
コウは魔物よけのランタンを回収して少し離れた位置で氷を溶かすと2人組は何も言わずにゆっくりとコウの向かう逆の方向へと向かって歩いていった。
「よし。じゃあローランに向かってまた走るか」
先程の2人組が見えなくなるとコウとフェニは再びローランへと向かう道を走り出す。
暫く走ると太陽が走る道を照らし草原には朝露が降りており、キラキラと光が反射し輝いている。
既にクルツ村とローランの分かれ道は通っているため、そのうちにもローランの門が見えてくるだろう。
目の前の大きな丘を少し越えるとようやくローランが見えコウはやっと帰ってこれたなと思い走るペースを上げる。
門の前に着くと朝のためかそこまで街の中に入る人はおらず、どちらかといえば街から外に出ていく人が多いだろうか。
大体、外に出てくるのは商人か依頼を受けた冒険者が多いのでそこまで街の中に入るのは時間がかからないだろう。
「おっ コウじゃないか?久しぶりだな!」
「あら本当久しぶりね」
街に入るために受付していると声を掛けられたので後ろを振り返るとそこにはジャンとサラが立っていた。
「久しぶりだな。2人は依頼か?」
「今日の依頼はワイルドボアを狩ってくる依頼を受けたから向かう途中さ」
どうやら2人はワイルドボアの依頼を受けていたらしい。
まぁワイルドボアならそこまでも強くはないし余裕で倒せるだろう。
「そういえばコウは何処にいってたんだ?」
「俺か?俺はCランクの試験で聖都シュレアに行ってたぞ」
「まじか!もうCランクの試験って早いな!」
それはそうだ、コウの年齢でCランク試験を受けれるものは少ないしもし受けれたとしても落ちるものが多い。
「もしかして...依頼は無事に...?」
「あぁ問題なく依頼は終わったな」
「まじか!Cランクなんてすげぇな!まだ俺らはDランクだぜ?コウなら最速でBランク行けるかもな!」
ジャンは自分のことのように喜びコウを祝ってくれており、サラは口を大きく開き驚いていた。
そうこう話しているうちに受付は無事に終わり門兵からローランへと入っても大丈夫という声を掛けられる。
「じゃあ俺はそろそろ報告に行くから依頼、気をつけてな」
コウはジャンとサラに別れの挨拶を済ませ門をくぐっていくと久々のローランの町並みが目に入った。
「久々のローランだな。取り敢えず冒険者ギルドに行くか」
冒険者ギルドに行ってささっと報告し小鳥の止まり木という宿に泊まってゆっくりするとコウは考えており、今日はもう依頼などを受ける気はないのだ。
少し街を歩くと朝のためか、まだお店などは準備中で人通りは少なくコウは早足で冒険者ギルドに向かって歩き出すのであった。
ここまで見てくださってありがとうございますm(_ _)m
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます