第85話

 空の真上にある丸い月がボロボロの教会を照らし、教会の周囲を囲んでいる木々は風が吹くたびに葉っぱ同士が擦れザワザワと音を鳴らしていた。


 目の前の教会の入り口を凝視していると真っ暗の中から赤い光がぼぅっと浮かび上がりそれは徐々に正体を表す。


 その正体は先程、神父に召喚されたリッチであり、コウの挑発に乗って教会の中からゆらりゆらりと体を揺らしながら出てくる。


 コウはリッチの行動を注意深く見ていると人ほどの頭の大きさの頭蓋が4個ほど生成され、リッチの周りを浮かびくるくる回っており、リッチがコウに指を指すとリッチの周りに浮かんでいた頭蓋がコウに向かって飛んで来て襲い掛かってきた。


 飛んでくる頭蓋の速度はそれなりに早くヒュンヒュンと風を切る音が聞こえるが夜のためか飛んでくる頭蓋は見えづらい。


「趣味が悪い攻撃だな!」


 コウは飛んできた頭蓋を1個だけサンクチュアリで真っ二つに切ると切れた頭蓋の目が光り大きな爆発を起こす。


 頭蓋の爆発の反動でコウは黒い煙の中から後ろに飛ばされ地面を転がると体勢をすぐに立て直した。


「ごほっごほっ!くそっ厄介すぎる!」


 コウの身体は多少の掠り傷がつく程度で済んだが頭蓋を切る度に爆発されては流石にたまったものではない。


 残りの浮かんでいる頭蓋は3つであり、カタカタと口を動かしまるで馬鹿にして笑っているようだ。


 再びコウに向かってリッチは指を指すと浮かんでいる頭蓋は飛んでいく。


「もうそれは切らねぇよ!」


 今度は水球を3つほどコウも作り出すと飛んでくる頭蓋に向かってぶつかり合うように撃ち出す。


 しかしリッチが指を動かすと頭蓋は飛んでくる軌道を変えコウの打ち出した水球を避けてコウの近くまで到着するとピタリと止まり頭蓋の目が光だし3つとも同時に爆発を起こした。


「危なかった...あれは操作もできるのか...厄介だな」


 コウは後ろに下がりギリギリ爆発を回避していたようで爆発が起きて出来た土埃が晴れるのを待っていると新たな頭蓋が土埃の中から突き抜け出てくる。


「また同じ技か!」


 流石のコウも3度目ともなれば対応の仕方も変わって次は自分自身を囲むように氷のドームを作り上げると頭蓋はぶつかり爆発を起こすが氷のドームには傷一つも付いていない。


 そしてリッチは自身の攻撃が防がれたのが気に食わなかったのか今度は黒い槍のようなものを作り出し氷のドームに向かって飛ばしてくる。


「これは多分ヤバいな!」


 氷のドームにぶつかるとパリィ―ン!とまるでガラスが壊れた音を立て砕け散った。


 あの頭蓋よりも速度は遅いが圧倒的に威力は高く危険だ。


「ずっと攻撃されるのも癪だ!」


 コウもずっとちまちまと攻撃されていても埒が明かないのでリッチの元へ走り出すとリッチは手を地面にかざし黒い空間のようなものが開く。


 黒い空間の中から数十体というスケルトンが這い出てきたのでこれがリッチの召喚魔法というものだろうか。


 スケルトン達は召喚してくれた主人...つまりはリッチの元へ行かせないようにこちらにガチャガチャと音を鳴らしながら向かってくる。


 1体1体はそこまで強くないが数が多く厄介であり、更にはリッチが頭蓋を再び作り出し後ろから攻撃してくるという陰湿っぷりだ。


 コウのサンクチュアリは神聖属性を持っており、切ったスケルトンが簡単に崩れていくが倒しても倒しても黒い空間の中から追加のスケルトンが補充されていく。


「厄介すぎるだろ!というかこのままじゃ街の中に...!氷壁っ!」


 すぐにコウは城壁の隙間を封じるように氷の壁を作り出しスケルトンが中へと入っていかないようにした。


 しかしコウの魔力が多いとはいえ無限ではなく有限だ...このまま戦っていても消耗するだけでいずれ魔力が尽きてしまうのも時間の問題だ。


 フェニも雷魔法を使用しスケルトン達をなんとか相手しているが数が多いのでフェニにも限界が来ている。


 リッチやスケルトンの猛攻を耐えつつ戦っているとリッチの後ろに人影がいるのにコウが気がつく。


 そしてまだリッチは自身の後ろの人影には気づいては居ない。


「助けに来ましたよ~コウさん~!」


 人影の正体はライラであり手首に付いていた枷は既に外れてライラの両手の手袋に装飾されている十字架は白く光り輝きながら光を放っているのが見え、リッチへと拳を突き出そうとしていた。


「よいしょ~!」


 リッチもライラの声に気づくがもう遅い...ライラはリッチに向かって後ろから拳を突き出すとリッチの骨で出来た身体の真ん中に大きな穴が空きリッチの頭蓋の赤く光る目が大きく光り怯む。


 きっとライラの一撃がかなり効いたのだろう。


 リッチの作り出した頭蓋は操作が切れふわふわとただその場で浮いており、コウには向かってこず地面にあった黒い空間は閉じていて追加のスケルトンは出てこない。


「ナイスだライラ!」


 チャンスだとばかりにコウは目の前のスケルトンを切り飛ばしながら前へと進むがリッチも怯みから立ち直っており、防御に回るためなのかコウの真似事のように自身の周囲の地面から骨が飛び出しドームを作り出す。


「甘く...見るなっ!」


 コウは地面を蹴り飛ぶとサンクチュアリの穴から水がジェット噴射のように吹き出し勢いをつけ、かなりの速度で骨で出来たドームへと縦に振り下ろした。


 すると骨で出来たドームは見事に真っ二つに別れ、中に居たリッチの頭蓋も2つに分かれていた。


 真っ二つになった頭蓋の目にある赤い光は小さくなっていき、リッチの身体や頭蓋は黒い煙のように消えて地面には大きな魔石が落ちてきて食い込む。


「終わった...流石に疲れた...」


「おわりましたぁ~...」


「キュイ~...」


 2人と1匹はリッチとの激しい戦いで疲れ各々が呟くと全員が地面へ腰を下ろしそしてゆっくりと身体を癒すのであった...。



ここまで見てくださってありがとうございますm(_ _)m

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