第84話
「ライラ...何してるんだ...」
情けない声でコウに助けを求めるライラを見てため息をつく。
「えっ?コウさん?そこにいるのですか~!?助けて下さい~!」
コウの声を聞いた瞬間に近くにコウがいるという事に気づき目隠しされている布が湿っていくのできっと助かったという安心感で泣いているのだろう。
ライラの姿を見ると多少はホコリなどで服が汚れているが特に怪我はないようで拘束されていただけだったようだ。
コウはすぐにライラの手首に付いている枷を外そうとするが小さな穴があり、鍵が必要ということに気づく。
「しょうが無いな...ライラ。動くなよ?」
「えっ?」
十字架のブレスレットに魔力を込めるとサンクチュアリが元の姿に戻り、枷から伸びている鎖に向かってサンクチュアリを突き出す。
すると鎖はバキッと音を鳴らしながら簡単に砕け、ライラの拘束は無事に解けるとライラは拘束されていた手が自由になったため目隠しを外しコウの胴体めがけて突撃し抱きついてくる。
「助かりました〜ありがとうございます〜!」
「鼻水がつくし大きな声を出すな!」
大きな声を出されると神父にバレてしまうのでこっそり助け出した意味がない。
ライラの行動を咎めるとすぐにライラは自分の手で口を抑えると「ごべんなざい~」と謝ってくる。
「というか自慢の手袋付けてるのになんで抜け出さなかったんだ?」
ライラの手袋は魔力を込めれば込めるほど力が強くなるという魔道具であり、それを使用すればすぐに鎖などを引き千切り簡単に抜け出せるはずだ。
今でも手袋をしているのに何故、抜け出さなかったか疑問にコウは思い聞く。
「この枷に何故か魔力を吸われて魔道具まで魔力がいかないんですよ〜」
どうやらライラの手首についている枷が問題のようで魔力を込めようとすると枷に魔力が吸われてしまうらしい。
「なるほど大体は理解した。で...何で捕まってたんだ?」
「それが~...」
ライラに捕まっていた事情を聞くとやはり碌なものではなかった。
昨日の夜、ライラは神父が子供を抱きかかえ外に出ていくのを気になり、後をついて行くと神父はこの古いボロボロの教会に来て子供たちを生贄に何かの儀式をしていたらしい。
それを止めようとしたら子供を盾にされ油断した隙きに枷を付けられてしまい捕まってしまったようだ。
流石のライラも魔力が使えないとなると普通の女性ほどの力しか無いので相手が50歳ぐらいの男だとしても勝てなかったのだろう。
コウとライラが2人で話しているとコウの後ろの扉がキィっと音を立てながら開く。
「おやおや...やはり鼠が入り込んでましたか...」
ドアが開いた先には神父が立っており、先程のライラの声で神父が気づいてしまったようだ。
「ほらみろ、ライラのせいでバレたんだぞ」
「えぇ~私のせいですか~...」
ライラは不満そうにするが事実であり、否定はできない。
「まぁいいや。取り敢えず降伏するなら今のうちだぞディード神父」
「降伏とは...何をおっしゃいますか?既に私の儀式は成功していますよ?」
目の前の神父は既に"儀式は成功している"と言った...つまり先程の子供はもう...。
そして神父の後ろの空間に亀裂が入りだすと黒い空間が広がり中からは大きな白骨化している手が空間を広げようとしていた。
その大きな白骨化した手は一目で碌な存在では無いということ理解できる。
「なんだあれ...」
「おぉ!さぁ私の召喚した"リッチ"よ!目の前の敵を排除しなさい!」
神父がコウ達を排除しろと言った瞬間に何処からかグチュ...っと肉のような柔らかい何かを貫いた音が部屋の中に響き渡った。
「な...何故――」
目の前の神父の腹部からは血だらけの白骨化した手が突き抜けており、音の正体が分かる。
神父は白目を剥き骨化した手からずるりと抜け、前のめりに倒れ神父の腹部からは泉から水が湧き出るように血が大量に出続け部屋に血の池を作り出す。
濃度の高い血の匂いが部屋の中を満たすと目の前の空間からゆっくりと黒い布のローブを纏った巨大な骸骨が正体を表した。
巨大な骸骨は空中に浮いており、目の奥は赤い光がぼんやりと不気味に光っている。
その正体はリッチという魔物であり、普通はこんな場所には存在しない魔物だ。
普段は奥深くのダンジョンやそれこそ死の森の深部の存在だろう。
ランクとしてはAランクの魔物と扱われており、普通の武器などではその存在を傷つけることすらできないとされている。
そして何故Aランクと言われているかと言うとリッチはスケルトンなどの死霊系の魔物を召喚できるのだ。
ここで大量にスケルトンなどの魔物を召喚されたら、先程コウ達が通ってきた城壁の隙間から召喚されたスケルトン達が入り込み確実に聖都シュレアはパニックに陥ってしまうだろう。
コウとライラの2人ならまだ楽に倒せるだろうがライラは魔力が枷のせいで使えなく枷の鍵は神父の服の何処かにある筈だがその肝心な神父はリッチの下で倒れている。
状況としてはかなり最悪だろうか。
「ふぅ...ライラ!一旦リッチを引き離すから後ろに下がってろ!」
「はい~!」
ライラは後ろに下がりコウは前のリッチに向かって歩き出す。
「来い...俺が相手だ」
リッチもコウが相手するということを理解したのかカタカタと頭蓋を震わしコウに向かって白骨化した巨大な手を振るう。
「馬鹿が!そんな遅い攻撃当たるわけ無いだろ!」
コウは寸前で避けリッチの下を潜るとドアを抜け外に出ていき、リッチも挑発されたのが気に食わなかったのかコウを追いかけるようにゆっくりと移動をしだした。
ここまで見てくださってありがとうございますm(_ _)m
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