第83話

「さて...どうするかな」


 コウは孤児院の前に来たが虚言を言った神父が素直に本当の事を教えてくれるだろうか?


 いやきっとあの神父は教えてはくれないだろう...わざわざ今回のように虚言を言う必要がないからだ。 


 だとしたらどうするか?コウは頭の中で考えると1つだけ確かめる方法を思いつく。


 それは神父が今日も何処かに行くかも知れないので尾行するように後ろから着いていけばいいだけなのだ。


 ただしそれには問題があり、今日も昨夜と同じ様に孤児院から出掛けるとは限らない。


 しかし現状この方法でしかライラの行方を探す方法はないだろう。


 まぁ、今は昼であるためコウは夜になるまで何処かで時間を潰すしか無いのだが...。


 とりあえずコウは仕切り直すべく宿を探すことにした。


 もしかしたら明日の夜に神父は出掛けるかも知れないし数日は探偵のような生活が続くだろう。


 コウは孤児院の近くを探索すると少しだけボロいが時間を潰すには丁度いい宿を見つけたので中に入ると受付には恰幅の良い男が座って暇そうにしている。


 やはり宿の外見がボロいためか別の見た目の良い宿に客を取られているのだろう。


「いらっしゃい。泊まりかい?」


「あぁ泊まりだ。いくらだ?」


「1日夕食付きで銀貨2枚だよ」


 これが一般的な料金の宿である。


 コウがいつも泊まる宿では金貨を払っていたがそれらは高級な宿であるためだ。


 収納の指輪の中から銀貨を2枚だけ取り出すと机の上に置き店主から部屋の番号と鍵を貰い部屋へ向かい部屋の扉を開けると、部屋の内装はそれなりに小綺麗にされており、寝泊まりする分には十分の部類の部屋であった。


「少しだけ目でも瞑るか」


 コウは簡素なベッドの上へ腰を置き横になると目を瞑ると太陽の香りがふわりと身を包み眠気を誘う。


◾️

「もう夜か...」


 いつの間にか寝ていたようで外を見ると夜の帷に包まれていた。


 既に観光品などを売っているお店や食事する場所などは店仕舞いをしており、目の前の通りには酒に酔い潰れた者がちらほらと見える程度だ。


「さて...フェニ起きろ。そろそろ待ち伏せしに行かないと」


 コウは枕の上で寝ているフェニを起こすと肩に乗せ宿から出る準備をする。


 部屋を出て階段を降りていくと受付には誰もおらず机の上には1つの呼び鈴が置いてあり、用があるならそれを使って呼べという事なのだろう。


 といってもコウは用がないためスルーしてそのまま宿の外へ出て孤児院のまで静かな街を歩いていく。


 孤児院に到着すると探偵のように木の影に隠れ神父が孤児院から出てくるのを待つ。


(今日は出てくるんだろうか...)


 どれくらいの時間コウはそんなことを思いながらジッと待っていただろうか...孤児院の扉がキィっと小さな音を立て1人の人物が出てきた。


 雲に月が隠れていて顔が見えなかったが雲が移動し、隙間から月明かりに顔が照らされその人物はディード神父というのがわかる。


(よし、出てきたな)


 神父は周りを見渡しかなり警戒しているようだ。


 両手で抱えているのは孤児院の男の子であり、ぐっすりと眠っているのが見える。


(何故こんな時間に子供を...?)


 こんな夜中に孤児院の子供を抱えて何処かへ行くなんて普通ならあり得ないことであろうか。


 そんな子供を抱え神父は街の中心部から逆の方向へと歩き出し聖都シュレアを囲っている城壁へと辿り着く。


 城壁には人1人分の通れるような隙間があり神父はそのまま通り聖都シュレアの外へと出て行ってしまった。


 コウもそのまま神父を追いかけるように隙間を通ると目の前にはボロボロで今にも崩れてしまいそうな教会が建っているのが見える。


 教会の扉は空いており、そのまま神父は中に入っていったようだ。


「なんでこんなところにこんな教会が?」


 それはそうだここは街の外であり、普通はこんな建物自体が街の外にあるのはおかしいだろう。


 しかも教会の周りは薄暗い木や背の高い草などで生い茂り囲われていて他からは見えずらいようになっている。


 このまま教会の中に入ろうと思ったが、あの警戒心の高そうな神父のことなので何かしらの罠などが仕掛けてあるに違いないと思い、いつも使う探知として便利な薄い霧を足元から出す。


 薄い霧は教会の中に吸い込まれるように入っていき隅々と教会内を調べるが特にワイヤートラップなや落とし穴などの罠は感知できなかった。


 しかし教会の奥には2人の人の反応があり、少し離れた部屋には1人の人の反応が確認できた。


 2人の反応はまず間違いなく神父と寝ている子供であろうか...しかしもう1人の人物は誰だろうか?


「とりあえず1人の方に行ってみるか」


 コウはとりあえず教会の中には罠がないことをわかったので空いている扉からこっそりと入ると教会という場所には相応しくない血の匂いがふわりと漂ってくる。


 そして教会内はぼんやりと蝋燭のような魔道具が壁に取り付けられており、光っていてかなり薄暗い。


 1人だけいる部屋の前に立ちドアに耳を当て静かにしていると「コウさん~助けてくれるって言ったじゃないですか~」と、どこかで聞いたことある声が聞こえてきたので扉をゆっくり開けるとそこには手首に光る枷を付けられ布で目隠しされたライラを見つけたのであった...。




ここまで見てくださってありがとうございますm(_ _)m

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る