第82話
「ディード神父。ライラを知らないか?挨拶してから別れようと思ったんだが」
「あぁ...ライラさんなら昨日の夜、私とともにシュレア大聖堂に呼ばれましてね...」
ライラが孤児院の中に見当たらないのでディード神父に居場所を聞くとどうやら昨日の夜、外に出ていったのはシュレア大聖堂に呼ばれたためらしい。
ただ、あんな時間にわざわざ大聖堂から呼ばれることなんてあるのか?何故、神父だけが戻ってきているのか?などの疑念が胸の中に残る。
といっても他に確認できる術をコウは持ち合わせていないため納得せざるを得えない。
シュレア大聖堂に行って話を聞いたとしてもただの冒険者...しかも所詮Dランクなので内部情報などはきっと教えてくれないだろう。
「そうなのか...じゃあまたライラによろしくと言っておいてくれ」
「えぇ勿論です。ライラさんに伝えておきますとも」
コウは神父にお願いすると孤児院から出て予定通り聖都シュレアの観光をしようとフェニを肩に乗せ、街の中を歩き出す。
観光にも力を入れていると言われるだけあってか多くの観光品が置いてある店があり、のんびりとウィンドウショッピングを楽しむ。
「なんだこの聖都限定お守りとか...」
ひとつひとつ商品を見ていると効果があるのか無いのか全くわからない商品もあるようだ。
他にもステンドグラスで作られた小物や髪飾りなどもありプレゼントには最適だろう。
そしてお店の角の棚に置いてある2つの髪飾りに目が留まる。
1つは金色の十字架の髪飾りで、もう1つは銀色の十字架の髪飾りであった。
銀色の十字架の髪飾りはイザベルの銀色の髪に似合いそうで金色の十字架の髪飾りはライラの金色の髪に似合いそうだなと頭の中に浮かんだ。
「まぁ...気まぐれでお土産を買ってもいいだろ」
コウは対になっている十字架の髪飾りを手に取ると会計をする場所に持っていくと気だるそうな店主に「金貨2枚だな」と言われたのですぐに金貨2枚を会計の机の上に出し会計を済ませササッと買った髪飾りを収納の指輪の中へと仕舞っていく。
観光品が置いてある店の通りを抜けると今度は小腹を満たせるようなカフェなどの店が見えてきた。
きっとショッピングを楽しんだ後に小腹を空かせた者たちを集めるためにこの様な作りになっているんだろう。
「ちょっと休憩するか」
少しだけ休憩するためコウは小さなカフェへと入っていくと定員に席まで案内されメニューなどを置かれる。
周りの席を見てみると大半の客はシスターや観光客で賑わっており繁盛はしているようだ。
コウはメニューを見てどれにしようか悩むが、とりあえずおすすめと書いてあった物を注文しのんびりとフェニを撫でながら待つ。
暫くして運ばれてきたのはフルーツケーキとフルーツジュースのようなものであり、食べようとすると隣の席から「すみません」と声を掛けられたので食べる手を止めた。
話しかけてきたのは1人のシスターのようだがコウの記憶には目の前のシスターと出会った記憶がない。
「誰だ?というか何か用があるのか?」
「あなたはライラさんと一緒に居た方ですよね?」
ライラの名前が出たのでコウは目の前のシスターがライラの知り合いであることがわかった。
もしかしたらライラがシュレア大聖堂に何故、呼ばれたかを知っているかも知れない。
「そうだ。ところであんたは誰だ?」
「申し遅れました。私の名前はチェルシーと言います。ライラさんの後輩になります」
どうやらライラの後輩のようで、あのライラにこの様な礼儀正しそうな後輩が居たとは驚きである。
「ライラさんはいらっしゃらないのですか?少し用があって探しているのですが...」
どうやら隣にいるチェルシーもライラの事を探しており、昨日コウとライラが一緒にいるのを見ていたため、偶然出会ったコウに話しかけてきたらしい。
「ん?ライラは確か大聖堂に呼ばれたらしくてな...知らなかったのか?」
「えっ?ライラさんは"大聖堂にはいません"でしたよ?」
チェルシーの一言にコウは「は?」と返してしまい、もしこれが本当のことならば、あの孤児院に居た神父の言っていた昨晩、ライラと一緒に大聖堂へ呼ばれた話は嘘ということになるだろう。
だがしかしあの神父が何故、そのような嘘をついたのか?という疑問がコウの頭の中に残る。
「すまんが用事ができた」
「えっ?」
コウは運ばれてきたばかりのケーキと飲み物を堪能せずに急いで口へとケーキだけを放り込み食べるとサッと会計を済ませ、カフェの外に出て、コウは真っ先に孤児院に向かうことにした。
昨晩、本当に神父は何処へ行ったのか?そしてライラは今、何処にいるのかを確かめるために...。
ここまで見てくださってありがとうございますm(_ _)m
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