第76話
周りが草原の中、舗装された道を1台の馬車が車輪を回しガラガラと音を立てながら走っていた。
荷台の中は小さな小窓が付いており、そこから太陽の暖かな光が差し込む。
風も丁度良い暖かさであるため眠気を誘いライラが欠伸をするとコウも欠伸を移されたのか大きく口を開け欠伸をし、目からは少しだけ涙が出る。
王都から出発したが今のところトラブルなどは無く順調に旅は進んでいた。
「あー旅って暇なものだなぁ」
「そうですね〜暇ですね〜」
「キュ〜イ」
2人と1匹は完全に馬車の中でだらけきっており、外の景色を見てもまるで北海道の釧路湿原のようで変わりの無い景色が続く。
あまりにも暇なためコウは手に魔力を込めると約10cm程の丸い氷を作り出し、隣で丸まって寝ているフェニをモデルに氷の形を変化させる。
透き通った綺麗な氷がまるで飴細工の様に変化するのが面白いのかライラは興味津々に見ていた。
「よし、出来た」
「おぉ~可愛いですね~貰ってもよろしいでしょうか~?」
そしてコウは隣で寝ているフェニの姿をを氷で精巧に作り上げるとライラは両手に前に出し欲しそうにする。
見た目は完全にクリスタルなどで出来ているように見え氷のフェニからは少しだけ冷気が漏れていて見世物としては丁度いいだろう。
そのままコウは目の前に出しているライラの両手の上に乗せると「冷たいです~」と言いながら氷のフェニを交互に手の上で移し替えずっと冷たくならないようにしていた。
「そら氷出しな...」
もしかしたらライラは少々、おつむが弱いのかも知れない。
ただ作られた氷のフェニを落とさないように必死に持っているのを見てコウはくすりと笑ってしまう。
「もぉ~何で笑うんですか~!」
ライラもコウが笑ったのに気づいたのか器用に手の上で氷のフェニを移し替えながら不満そうな顔をする。
そんな平和で愉快な旅の時間が続いていると、いつの間にか日は暮れ空には大きな丸い月が雲の間から顔を覗かせていた。
既に馬車は止まっていて近くには小さな湖の様な場所となっており、湖の中心には空に浮かんでる月が水面に写り込んでいる。
「野宿なんて久しぶりだな」
コウが野宿したのは死の森から出た時ぐらいであり、ほんの少し前のことだが随分と時間が立ったように感じていた。
ただ今回は前回の野宿とは違いテントや温かい食事などを用意しているのでそこまで辛いような野宿ではないだろう。
普通の冒険者ならテントなどの荷物になりそうなものは持たず食事も保存食か最悪近くで魔物を狩り食べるのだが、コウは収納の指輪というかなりのアドバンテージを持っているので困ることはない。
勿論、収納の指輪の中は時間が止まっているという便利な代物なので料理は温かく保たれる。
コウは収納の指輪に入っている温かい食事を出すとついでに近くの切り株の上に皿も出し並べていく。
「その...私の分までよろしいのでしょうか?」
「ん?気にしなくてもいいぞ」
コウは御者の分の食事を取り分け渡すと御者は「ありがとうございます」と一言いい頭を下げ食事を受け取って御者台の上で食事を取る。
「私もおかわりです~」
ライラは既にコウから食事を出され取り分けられた瞬間に手を出しており、空になった皿をコウへと突き出し追加の食事を要求しだす。
「ライラは少し遠慮というものを知ったほうが良いかも知れないな」
「え~何でですか~?」
そうは言いつつもコウは目の前に出された皿へと追加の料理を取り分けていると炊き出しでもしているのではと思ってしまう。
そのままライラは座っていた場所に戻り、追加された料理を口に頬張り満足そうに食べており、フェニもコウの隣で屋台で買った串焼きを啄みながら食べていた。
コウも自身の分の料理を出し串焼きを口に頬張ると出来たての状態のためか噛めば噛むほど肉汁が溢れ満足感と幸福感に包まれる。
全員がコウの出した料理に満足し完食するとコウは使った皿などは収納の指輪の中へとしまい片付けていく。
コウはその後、収納の指輪の中からハイドから譲り受けたランタンを出す。
「なんですか~このランタンは~?」
「あぁこれは虫除けと魔物避けの魔道具だな」
収納の指輪の中から少しだけ隠し持っていたオークの魔石をランタンの下にある開口部へと入れるとランタンを中心に10mほどの薄い光の結界のようなものが張られる。
オークの魔石を入れたためランタンを付けると近くにいる魔物にはオーク並みの強さを持った魔物がいると錯覚させる効果がある筈なのに魔物であるはずのフェニには効果がないようだ。
効果がないということはつまりフェニ自体Cランクの魔物よりも強い可能性が出てくることになる。
そんな疑問はさておき、この辺りではそこまでオーク以上のランクの高い魔物はいないため、これで寝る準備は万端と言ったところだろう。
御者にテントは要るかどうか聞くと「大丈夫です」と言われたのでコウは2つほどテントを手際よく張ると1つをライラ用として使用してもらうことにする。
流石にコウはまだ少年のような見た目をしているのだが、男女が同じテントで寝るのはあまりよろしくはない。
ライラは一言お礼を言うとコウの張ったテントの中に入り、寝る準備をしていくのでコウも歯磨きや身体を拭くことなどを済まして次の日に備えるのであった...。
ここまで見てくださってありがとうございますm(_ _)m
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます