第77話
翌日、再び聖都シュレアに向かうため馬車は走り出していた。
今日も昨日と同じく天気は快晴であり、小窓から入ってくる風は心地よい。
聖都シュレアへ到着するのは明日の朝と御者から聞いており、もう少しでこの短い旅は終わるだろう。
ただコウは聖都シュレアに到着しライラを送った後、荷物を届けローランへ帰るためにまた同じ道のりを旅をするのだが...。
「そういえばライラはどこに実家があるんだ?」
コウは馬車から同じ様な景色しか見えず暇なため少しだけライラへ質問する。
ライラは道の真ん中で路銀もが尽き倒れていたのだからきっと遠くの街や村に実家があるのではないかとコウは予想していた。
「私の実家は〜クルツ村って言うんですよ〜」
クルツ村...何処かで聞いたことのある村だ...。
というかコウが盗賊のアジトから女子供を送り届け少しだけ魔物を狩り手助けした村である。
どうやら案外近くの出身であり、普通は路銀も尽きる程お金を使うはずない場所なのだが、何故あそこで力尽き倒れてしまったのだろうか...。
ライラは聖職者なので誰かに施したのかそれともクルツ村は少し貧しいので寄付したりでもしたのでは無いか想像ができる。
「なかなか良い村なんですよ〜?」
「へぇ...良い村なんだな」
まぁ確かに村の人達は良い人が多かった印象であり、良い村とライラの言っていることは間違ってはいないだろう。
ただクルツ村ではコウは英雄などと言われ噂を流されているので早めに話題を切ろうとする。
「そういえば〜クルツ村で英雄さんの話を聞きましたんですよ〜」
コウが話題を切ろうとしても願いは叶わずそのままライラは喋り続けていく。
まさに藪蛇であり、自身が質問したことに後悔を覚えつつある。
「私の村を助けてくださったみたいで〜私も会ってみたいですね〜英雄さんに〜」
「そんな人がいるんだな。俺も会ってみたいな」
その英雄と言われている者が目の前にいるとはライラは思ってもいないだろう。
「止まれっ!」
この話題が早く終わらないかと思っていると御者台の方から御者が大きな声を出すと馬が鳴き馬車がガタンと音を立て急に停止した。
急に停止したせいか反動でコウは前へ押し出され何かむにゅんとした柔らかいものが顔を包み込む。
なんだと思い顔を上げるとそこにはライラの顔が間近にあり、少しだけ照れている様子だ。
どうやらコウが顔を突っ込んだ場所はライラの豊かな場所ですぐにコウは謝る。
「すまん!」
「いえ〜大丈夫ですよ〜わざとではないので〜」
ライラもコウがわざとやっているわけではないことを理解しているのようではあるが流石に少し恥ずかしそうにしている。
「それにしてもなんで止まったんだ...」
コウは疑問に思いフェニを肩に乗せ外に出ると100m程先に皮膚が真っ赤な、まるで鬼の様な者が馬車を通る道を我が物顔で塞ぎながら死んだワイドボアの肉を貪っていた。
「なるほど...オーガか...」
道を塞いでいる者の正体は大鬼...通称オーガと呼ばれる魔物である。
Cランクより1つ階級が上のBランクの魔物であり、肉食で好んで人を食べてしまう。
皮膚は鉄のよりも圧倒的に硬く力も強い。
赤黒くなればなるほど長命であるとされており、皮膚の硬さや力も段違いに強くなる。
勿論、上位種なども確認されているがそれらは皮膚の色が普通の赤色では無く青色だったりするらしい。
普通この様な場所にオーガは生息しておらず森の深層やダンジョンの深い場所などいるのだが...。
このまま放置すればコウ達の乗ってきた馬車が襲われるか最悪、近くにある街や村などが襲われてしまい大きな被害が出てしまうだろう。
流石に放置はできないのでコウはオーガを処理することを決めオーガの元へ歩いていこうとすると肩に手を置かれ止められる。
「ここはお姉さんに任せてください〜」
肩に手を置いたのはライラであり、どうやらオーガと戦うようだ。
「いやいや!シスターが何言ってんだ!」
自信満々のライラはシスターであり、戦うような存在ではなく勝てるわけが無いので流石にコウは止める。
「いえ〜こう見えて私強いんですよ〜?」
唇に指を立てそんなことを言いながらライラはオーガの元へと歩いていくので止めるため肩を掴もうとするとひらりとかわされてしまう。
コウはライラを1人にできないため後ろについて行きなんとか止めようとするが意思は固いようでオーガから20m程の場所に到着してしまった。
オーガもコウとライラの存在に気づいたのか手に持っていたワイルドボアの死骸を道端に捨て新鮮な獲物が来たことに歓喜しているようだ。
そしてオーガはこちらに向かってくるのでコウはいつも通りサンクチュアリを構えライラは自身の手に黒い手袋のようなものをはめて迎え撃つのであった。
ここまで見てくださってありがとうございますm(_ _)m
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