第65話
金属の様な硬いもの同士がぶつかり合う音が試合会場では響き、そのたび観客からの歓声が上がり会場内の盛り上がりがピークへ達していた。
盛り上がりの中をよく見るとこの世界は遊べることが少ないのでコウという新人冒険者の少年が勝つかツェリという獣人の女性が勝つのか会場では賭け事の様な事もされているようだ。
「にゃはは!こっちだにゃ!」
「くっ...!早いな!」
やはりツェリは獣人ということもあってかなり移動速度が速く死角からの攻撃がメインとなっており、今の攻撃もツェリは足元からコウの顎に向かって掌打を繰り出して脳震盪を狙っていたのだが、コウに仰け反られ回避される。
流石に高性能の身体として作られたコウでも獣人の素早い攻撃を対処するのは辛くツェリの死角からの攻撃に手間取っているようで今のような致命傷になりそうな攻撃だけはぎりぎり躱すことができていた。
今の掌打は流石にぎりぎりだったようでコウの額からも冷や汗が出て滴り落ちる。
「にゃっ!」
ツェリは持っているナイフをコウの足に向かって投げ機動力を奪おうとするがコウも自分の魔力を流した特別製の外套を翻すとキンキンッと音を立てながら弾き返しコウの足元に落ち刺さった。
「にゃんと!そんにゃ外套初めて見るにゃ!」
自身の投げたナイフがまさか見た目が普通な外套に弾き返されるとは思っていなかったのでツェリは動きを止めて驚いた。
「そこだ!」
そしてチャンスとばかり足を止めているツェリに向かって目の前に水球を生成し飛ばす。
「にゃはっ!そんな遅い魔法当たるはずないにゃ!」
しかしツェリからしたら水球の攻撃は遅く軽く回避されてしまった。
そしてコウは水球を多く自分の周りに浮かべ生成しツェリに当てようとあちらこちらにばら撒くが1個もツェリには当たらず地面をどんどん濡らしていく。
「にゃはははは!玉遊びなら余裕だにゃ!」
ツェリは自身のスピードに自身を持っており、コウの水球を全て避けきると余裕そうにからからと笑い出す。
「勿論当てれるとは思っていなかったぞ!水よ凍れ!」
コウは元々ツェリに当てようとしていたのではなく地面に水をばら撒きツェリの移動速度を封じようとしていたのであった。
その狙いは正しかったようで地面をツェリが蹴ろうとすると凍っていて上手く地面が蹴れずに滑って体勢を崩してしまう。
勿論その隙きをコウが見逃すはずもなくツェリに水球を狙い飛ばすと凍った地面のお陰で足が滑り上手く避けれずそのまま直撃してしまった。
「ちょっとま...!にゃああああああああああ!」
ツェリは水球を直撃を受けてしまい地面をゴロゴロと転がり目をぐるぐると回してしまう。
いくら獣人の身体が頑丈でも木を抉るほどの威力がある水球をもろに喰らってはひとたまりもないだろう。
しかし水球をもろに喰らったとしてもツェリの身体は多少傷が付いたぐらいで防具を着ているとはいえやはり獣人は頑丈であることが目に見えてわかる。
ツェリはまだ目を回しているだけであり、気絶はしてないのでコウは凍った地面をすぐに水へ戻すとツェリの元へ走り出し、首元にサンクチュアリを突き立てたてると同時にツェリも目を回していた状態から目を覚まして自身が詰んでいる状態である事を理解した。
「降参だにゃ!」
ツェリは両手を上にあげ降参のポーズをすると審判が大きな声で試合の勝者を決めると良い試合だっため歓声が湧き上がる。
そして観戦者の中にはコウに賭け勝った者は喜び、逆にツェリへ掛け負けた者は泣いていたり項垂れていたりしている者が見えた。
もしかしたら新人冒険者のコウが勝つと思っていなくツェリへ賭けている者が多かったのかもしれない。
「ほら、大丈夫か?」
「いてて...ありがとうにゃ...」
コウはサンクチュアリをブレスレットの状態に戻すと地面に寝転がっているツェリに向かって手を差し出し引っ張り起こすとぱっぱと防具や身体についた砂を払う。
「それにしてもコウは強いんだにゃー!そうにゃ!今度、獣人の国に遊びに来るといいにゃ!」
「えっと...いいのか?その...仲が悪いのに人間が獣人の国に遊びに行っても」
人間が獣人を嫌っているのならば獣人も人間の事をあまりよく思っていないはず...そんな事をコウは考えていた。
「何言ってるにゃ?獣人はそんなこと些細な事は気にしてないにゃ〜寧ろ強い人が来るのは獣人にとって嬉しいことにゃ!」
どうやらコウの考えていた事は杞憂だったようで獣人からしたら人間との関係はそこまで気にしてはいなかったようだ。
ツェリからの話を聞く限りでは獣人の国は弱肉強食の世界であり、強者が上に立つ世界なのかもしれない。
「じゃあまたいつか時間が出来たら獣人の国に遊びに行くさ」
「約束だにゃ!」
そしてツェリと獣人にいつか行くと約束し最後に握手をすると会場の観戦者から拍手が鳴り、こうして無事コウは3回戦2試合目ツェリとの試合を突破し続く4回戦...つまりは準決勝まで上り詰めたのであった...。
ここまで見てくださってありがとうございますm(_ _)m
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