第66話
ツェリとの試合が終わりコウは自室へと戻って次の試合に備えていた。
次の試合は準決勝であり、毒を使った可能性のある男が対戦相手のため何か毒に対する対策は無いか考えるが何一つ思いつかない。
そんな事を考えているとコンコンとドアが軽くノックされるとドアの外からは「ルームサービスになります」と言う男性の声が聞こえてくる。
頼んだ覚えは無いと思いつつドアを開けるとそこには執事の様な格好をした男性が立っており、側には食事などを運ぶワゴンが近くには置いてあった。
ワゴンの上にはサンドイッチなどの軽食があり、男性はワゴンごとコウの部屋に入ると近くにあった机の上に軽食を並べていく。
コウも特に疑問は思わず、また準決勝へ進出したので大会側からのサービスだと思い好意として受け取り執事のような男性は机の上に軽食を並べ終わると「失礼します」と一言コウに伝え部屋から出ていってしまった。
「おーい、フェニも食べるか?」
椅子の上で不貞寝しているフェニへと軽食を食べるかどうか聞くが食べる気がないようだ。
仕方なくコウが少しだけサンドイッチを摘み食べると準決勝がもう少しで始まると言われたので机の上にある軽食を収納の指輪にしまい片付けて試合会場へコウは向かう。
コウが試合会場に到着し入場口まで行くと丁度試合が終わったようで審判が勝敗の判決を下していた。
1人はタンカーで運ばれコウの横を通り過ぎ勝った者は反対側の入場口へ歩いていく。
「準決勝戦!コウ対セロ入場です!」
コウは自身の名前を呼ばれたため入場口から出て行くと反対側からもセロという黒尽くめの男がこちらに向かって歩いていた。
見た目からして暗殺者...まさにその様な言葉が出る見た目だ。
中央でお互いに対峙するが何故か目の前の男には余裕があり、口元は黒い布で覆われて分からないが目元がにやにやと笑っているのが見える。
審判から配置につくように言われコウとセロはお互いに数歩後ろに下がりお互いに武器を構えた。
「では...準決勝戦コウ対セロ試合開始!」
審判の試合開始の合図と共に目の前のセロという黒尽くめの男はコウから距離を取り離れだしたのでコウも逃げるセロを追うように前へと走り出す。
会場もただ追いかけっこをしているのを見ているだけなので場は白けてしまい逃げているセロに向かってヤジを飛ばすものもいた。
「追いついたぞ!」
コウも一々逃げ回るセロに少しづつ追いつきサンクチュアリを縦に振るうがひらりと回避されてしまう。
「ははっ!俺は逃げるだけで勝てるからな!」
セロはコウの攻撃を回避することに専念し一切攻撃はしてこない。
寧ろ時間を稼ぐように...何かが起こるのを待っているようだ。
暫く逃げ続けるセロを追い続けるとセロに何故か少しづつ焦りが見えた。
「おかしい!お前は軽食を口にしたんじゃないのか!」
セロはコウの縦に横に振られ続けるサンクチュアリの猛攻を避けつつそんな事を口にする。
実はコウの部屋に運ばれた食事には遅効性の毒が入っていたのである。
そしてその食事を運んだのはセロ本人の仕業であり、ルームサービスなど実際にこの大会などには無くそれを装い姿、格好を変えて行ったのだが目の前のコウには毒の効果がなくセロは焦っていた。
コウとしては目の前のセロが焦っている理由はわからないがこちらが徐々に優勢になっていくことを感じる。
「ちっ!公の場では使うつもりはなかったしょうが無い!」
目の前のセロという男は手元から細い形状の針を出しこちらに投げてくる。
針の先端には謎の水滴が付いておりまさか逃げ続けるセロが攻撃を仕掛けてくるとは思わず油断しコウの頬を掠めてしまった。
「痛っ!」
コウは頬を掠めた部分を手で抑える。
「...当たったな?その針にはランドスネークの毒が付いている...あの赤龍すら数分は痺れさせる毒だ」
セロは自身の投げた針がコウの頬に掠め傷をつけたことによって目元がニヤリと笑いながそんな事をコウに聞こえる範囲の声で言ってきた。
また即効性の毒のためすぐに効果が現れ始めると言われたのですぐにコウは手のひらを見たり身体の具合を確認するが特に異常な無く疑問に思う。
セロもコウへ針が当たり傷を付けたはずなのに一切毒の効果が出ないコウの姿を見て唖然とし口をパクパクと動かす。
「すまないな。俺は毒が効かないみたいだ」
「そんな馬鹿なことがあってたまるか!」
毒が効かないコウへ動揺してしまうセロ...。
今まで毒を使用して勝ち残ってきたので毒が効かないというのは相手としては最悪の部類だろう。
動揺は隙きを生む...勿論コウはその隙きを見逃すわけもない。
次にどうしようと考えているセロの足元に向かって背中の後ろに生成してあった水球を飛ばすと反応が遅れセロは空中にジャンプし避けることには成功したがバランスを崩しながらの回避になってしまった。
「そこだ!」
コウはサンクチュアリをクルリと回転させて先端の逆の部分にある石突をセロの鳩尾部分に入れると肺から息が押し出されセロは地面に落ち悶え苦しむ。
地面で転がりながら鳩尾を押さえ苦しんでいるセロに追撃のごとく顎に向かって蹴りを飛ばすと脳が揺らされ脳震盪を起こしたのか動かなくなってしまう。
審判は動かなくなったセロに近づき確認すると白目を剥いているのでコウが勝利したことへと判断し「準決勝戦勝者コウ!」と会場に響き渡るような声で判決を下す。
所詮逃げ回っていた男を倒し会場からは「よくやった!」などといった声がチラホラと聞こえてくる。
こうしてコウは無事に準決勝戦を勝利しイザベルとの約束を果たすべく決勝戦へと進出するのであった...。
ここまで見てくださってありがとうございますm(_ _)m
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます