第62話
コウとバードッグが試合を開始して既に5分が経っていた...。
「おらぁっ!」
バードッグがコウよりも少し小さい斧をコウの横腹に向かって振るうと周囲の空気を巻き込みつつ、砂埃が共に舞い向かってくるがコウは身体をのけぞりバードッグの斧を避けた。
もしもあの斧がコウの横腹に当たれば確実にコウの胴体は真っ二つになり、腰と胴体は別れを告げるだろう。
まぁ対戦相手が死んでしまったら反則負けになってしまうのだが、バードッグは気にせず斧を振り回している。
「畜生っ!すばしっこいガキだ!」
どうやらバードッグはコウに斧を何度も何度も振っているのに掠りもしないのに苛立っているようだ。
勿論コウはただ避けている訳もなくバードッグの振りかぶりすぎた斧を避けた後にサンクチュアリを使わず手加減した蹴りや拳をバードッグの防具を付けていない部分へとダメージを与えていく。
それらが積み重なりバードッグは苛立ちを悪化させているのだが...。
「地味に攻撃してき舐めやがって!その手に持っている斧槍は飾りか!?」
コウは少し距離を取りバードッグに告げる。
「ふぅ...お前にこの武器を使ったらすぐに勝っちゃうだろ?だからなるべく使わないようにしているんだ」
「ふ...ふざけやがって!俺様がお前なんかのクソガキに負けるかよぉ!」
真っ直ぐ斧を持ち突進してくるバードッグだが、怒りで我を忘れているのか隙だらけでありコウは鼻で笑ってしまった。
「死に晒せやぁ!」
真っ直ぐ縦にバードッグは斧を振り下ろすと闘技場の地面が抉れる音がしたと同時に土埃が舞い視界が悪くなる。
「よぉしこれで...!」
「それで終わりか?」
「...あ?」
土埃が舞っているためバードッグはコウを仕留めたと思いニヤリと笑うが土埃の中から先程までの憎たらしかったコウの声が聞こえてくると眉を顰める。
土埃が収まるとそこには寸前で回避していたのか振り下ろされた斧の横にコウは立っていた。
「もう一度だぁ!」
バードッグはもう一度地面にめり込んだ斧を引っ張り出すとその場で大きく振り被る。
「もういい...寝てろ!」
コウは大きく斧を振り被っているバードッグの鳩尾の部分へと全力で拳を突き出すとバードッグの鳩尾部分に付いていた鉄の鎧は凹む。
勿論、鉄の鎧が凹むほどの威力であったためバードッグはよろめきながら後ろに下がり最終的には大きな音を立てながら倒れる。
「痛ってぇ...鉄なんて殴るもんじゃないな」
流石に鉄の鎧を殴ったコウは殴った拳をひらひらとし痛みを和らげようとしていると審判がすぐに駆けつけバードッグの顔を見ながら声をかけるバードッグは白目を剥き倒れているため反応がない。
「8試合目!勝者コウ!」
反応がないバードッグを審判は見てコウを勝利と判定すると観戦していた人達から歓声が上がりかなり盛り上がる。
それはそうだろうバードッグの体格よりかなり小さいコウが一撃で倒したのだから。
審判は白目を剥いているバードッグの為に医療班を呼んでおり医療班がすぐに駆けつけるとそのままタンカーにバードッグは乗せられ大人数で入場口まで運ばれていく。
コウも試合が終わったためそのまま闘技場に入ってきた入場口まで歩くと待合室で見た貴族の様な見た目の格好をした男が立っていた。
「凄いね君。拳で鉄の鎧を凹ませるなんてそこら辺の人じゃ出来ないよ?それにしても君は武器を使わなかったけど武器を振るう姿を見せたくなかったのかな?」
「いや別に俺の武器を使うほどの相手じゃなかったから使わなかったそれだけだ」
元々サンクチュアリをバードッグ程度に使うほどでは無いとコウは判断しただけで別に使いたくなかった訳ではない。
「9試合目!ログルス対シス・フォン・アードルフ!」
「おっと呼ばれたね...僕は行くとするよ。じゃあね」
審判から9試合目の対戦者を呼ぶと貴族の様な格好をした男はコウに別れを告げると入場口まで歩いていき中央に立つ。
「さて自室に戻るか...」
先程の男は試合会場まで行ってしまったためコウは自室に戻る。
フェニが待っていたと言わんばかりにこちらへ飛んでくるがコウは受け止めフェニの頭を撫でながら謝罪するが不満そうだ。
「しょうが無いだろフェニ。今回は1人でしか参加できないんだから」
そういうと不満そうにフェニはコウの手を嘴で突く。
「痛いって!じゃあお詫びとして今度この間、魚を食べた場所に行ってたくさん魚を取りに行こうか」
「キュイ!」
フェニは魚と聞いた瞬間に目の色を変えて賛成!と言わんばかりに声を上げ喜ぶ。
コウは現金なやつだなと思うが声には出さずフェニの毛繕いをし次の試合へ呼ばれるまで自室で待機するのであった...。
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