第61話

 イザベルと話した次の日コウは大きな闘技場の様な建物の前に来ていた。


 周囲は既にお祭りの様な感じで屋台が並んでおり、多くの人で溢れかえっているのは何だか楽しい気持ちになってくる。


「おや?君も闘技大会に参加するのかい?」


「ん...まぁ力試しでだな」


「そうかい。じゃあ名前の記入と身分を証明できるような物を見せてくれ」


 コウはイザベルのお願いのため闘技大会の受付に来ており、目の前の受付にいる男性はイザベルの言っていた婚約者の回し者だろうか?


 受付にいる男性はコウのギルドカードを見るとそのままスルーされ参加用紙に名前を書くと受付は完了し無事に闘技大会への参加権を無事に手に入れることができた。


 ギルドカードを確認されてもコウはDランクの無名であり、クランに入っているわけでもない。


 白薔薇騎士団に入っているものならば全員女性なのでスルーされるのも当然ではある。


「はい闘技大会の受付完了ね。時間になったら組み合わせが発表されるから選手待合室に待っていてね」


 受付の男性から待合室の場所などを聞いた後コウは闘技場の関係者入り口から待合室向かう際に後ろからトントンと肩を叩かれ振り返るとそこには見知った顔のジャンが居た。


「コウだよな?こんなとこで会うのは奇遇だな!」


「久しぶりだな。もしかしてジャンも闘技大会に参加するのか?」


「まぁな!力試しだ力試し。ただコウがいるなら優勝は厳しそうだ...まぁ当たったらお手柔らかに頼むよ、じゃあな!」


 ジャンは苦笑いしながらコウに別れを告げ待合室とは別の方向に歩いていったのでコウはそのまま待合室まで歩いていく。


 待合室に到着するとざっと見ると30人以上の参加予定の人達がおり、空気がかなりピリピリした空間となって全員がお互いを牽制しあっていた。


 それにしても王都の人口で参加者は30名となるとそこまで大きい大会ではないのだろうか。


 コウは気にせず待合室に入り、中にある1つの椅子へと座ると1人のマルクよりもガタイがいいスキンヘッドの男がコウへと絡んでくる。


「おいおいなんでここにガキがいるんだぁ?この闘技大会に雑魚はいらねぇぞ?」


 ガタイのいい男はわざとらしい大きな声でコウを非難しだした。


(こんなやつもいるのか...無視だな無視。いちいち構ってたらキリがない)


 「ちっ...無視かよ!生意気なガキだ教育してやる」


 コウに無視されたことによりもガタイのいいスキンヘッドの男は更に苛立ちコウの胸ぐらを掴もうと動き出す。


 そしてコウの胸ぐらへと手を伸ばした瞬間にガタイのいい男の腕は別の人物に掴まれ止められた。


「あぁん?なんだテメェ...」


「あまり待合室で暴れると退場になってしまうよ?」


 伸ばしてきた腕を止めてくれたのはスラッとした見た目の良い貴族のような格好をした男であった。


「良かったなガキ助けてもらって。試合で当たったら遊んでやるよ」


 ガタイのいいスキンヘッドの男は掴まれた腕を振り払い別の場所へと去っていく。


 まぁコウとしては胸ぐらをつかまれた瞬間に指でもへし折ろうと考えていたがわざわざそんな事をせずとも済んだ。


「君は大丈夫かい?」


「あぁどこの誰だかは知らないけど大丈夫だ。ありがとう」


 どうやら男の事を知らないとコウに言われた瞬間少しだけだが、男の顔がひくつくがすぐに元のニコニコした表情に戻る。


「そうか君も気をつけてね。じゃあ僕は行くから」


 そう言い助けてくれた男も去っていくと再び待合室は静けさを取り戻す。


 暫く待っていると受付に居た男性が入ってきて試合の組み合わせを発表するというので試合に参加する予定の人は全員集まっており、中にはジャンの姿も見え試合の組み合わせを聞いていた。


 名前を呼ばれた者はすぐに部屋を出て試合会場へと歩いていく。


「1回戦8試合目!コウ対バードッグ!」


 ようやくコウも名前を呼ばれたため部屋を出る。


 選手には自室が用意されているらしく足を運ぶと自室で身体をほぐすとフェニにここで待機するように指示するとフェニは椅子の上に飛んでいき、そのまま座って寝てしまった。


 試合の数は全部で16試合あり、コウの試合になるまではまだまだ時間があるので少しだけ偵察のために自室を出て観戦できる場所まで移動する。


 そういえば友人であるダンも参加しているので試合でも見ようと思ったのが既に終わっており、無事に勝ち抜いているようだ。


 そのまま観戦して時間を潰していると7試合目に差し掛かりそろそろコウの言われた8試合目に近づいてきたためコウは試合会場へ入場する予定の場所まで移動し待機する。


 入場口から7試合目の様子を見ると老騎士の様な見た目の人が若手の騎士に手ほどきをしているような感じで戦っており、老騎士が勝つのは時間の問題だろうか。


「1回戦7試合目!勝者ダグエル!」


 暫く7試合目を見ていると無事決着が付いて歓声が上がり試合に勝ったのはやはりダグエルという老騎士だったようで若い騎士と握手を交わしているのが見えた。


 試合も終わったためコウのいる入場口までダグエルという老騎士が歩いて戻ってくると次の試合を待っていたコウに気づく。


「次の試合は君が出るのかね?」

 

「あぁ爺さんもお疲れ様。あんた強いな次の試合に戦うからよろしく頼む」


「ほっほっほ!まだ1試合目も終わってないのに次の試合の話かの!面白い!楽しみにしているぞ少年!」


 トーナメント形式のためコウがこの試合に勝てば次試合はダグエルという老騎士と戦うだろう。


 勿論、今からある試合も負けるわけがないと思ってのことで言った言葉だったのだがダグエルは目を丸くし笑い出すが戦えることを楽しみにしているようだ。


「1回戦8試合目コウ対バードッグ入場!」


「じゃあまた後でな」


 試合の審判から名前を呼ばれコウはダグエルに別れを告げた後、入場口から出ると太陽の光が明るく眩しくて手を目の上にかざす。


 そして目が太陽の光に慣れると中心部には先程コウが待合室で絡まれたガタイのスキンヘッドの良い男が立っておりニヤニヤしているのが見えた。


「ようガキ。お前と1試合目で俺は嬉しいぜぇ~」


 中心部にコウが到着するとバードッグはニヤニヤしながら話しかけてくるので無視をするとコメカミに血管が浮き出てくるのが見える。


 バードッグの手にはでかい斧を持っており、それを使って戦うようでコウも十字架のブレスレットへと魔力を流すと元のサンクチュアリへと形を変化させていく。


「では1回戦8試合目!試合開始!」


 審判は両サイドを見てコウとバードッグが武器を構えたのと同時に試合開始の合図が流れこうしてコウの闘技大会1試合目が開始するのであった...。





ここまで見てくださってありがとうございますm(_ _)m

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