第60話
「ん~っと...王都に着いたな」
コウは膝に乗せていたフェニを肩に乗せ馬車から降りると背伸びをして凝り固まった身体をほぐす。
朝からローランを出ており、今回も前回と同様にコウは馬車で来ているのだが、ルーカスの馬車よりも座り心地が悪かったので快適な旅とは言えなかった。
まぁ普通の馬車はこんなものであり、ルーカスやルーカスの一番弟子の馬車は特注で作られているため振動軽減するためにサスペンションが付いてたりしていたので振動が少なかった。
とはいえオーク達と戦った後なので殆どは寝て過ごしていたりしたのだが...。
ちなみに余談だが、この間クルツ村へ行く際に乗った馬車はそれなりにお金を掛けたものである。
「さて...王都に着いたはいいがまたこの列に並ぶのか...早く高ランクになりたい...」
高ランクになれば特権として特別専用口から入れるようになっており、条件としてはBランク以上の冒険者が対象となっている。
そしてまだコウはDランクであり、対象ではないため入ることが出来ないので渋々コウは長蛇の列へと並んでいくのであった...。
■
時が経ち時間は既に昼頃...コウはようやく王都の中に入ることができた。
そのままコウは多くの人で溢れかえっている大通りを通り抜けイザベルの屋敷まで目指すと途中で屋台など気になるものもあったが、もしかしたらイザベルの屋敷まで行けば食べるものぐらい出してくれると思い寄り道せず真っ直ぐ向かう。
「やっと着いたな」
コウの目の前には大きな屋敷があり、門の前には前回会ったことのある男勝りの女性門番が立っているのが見えた。
どうやら男勝りの女性門番はコウに気づき話しかけてくる。
「おや?君は確かこの間、団長に招かれた客人じゃないか」
「あぁ覚えてくれていたのか。イザベルから相談があると言われて来たんだが...」
「団長が相談なんて珍しいな...まぁそういうことなら団長の部屋に案内するよ」
一応コウはイザベルの顔見知りということもあってすんなり屋敷の中へと通された。
大きな鉄の格子で出来た門が開き男勝りの女性門番の後ろをついていくといつもの如く物珍しそうな目で見られるがそこまで気にすることもなくコウは屋敷へと到着する。
屋敷に入り広いホールを通り抜け前回お茶会をした部屋の前に着くと男勝りの女性門番がコンコンとドアを叩く。
「どうぞ」
「団長失礼します!団長が呼ばれた方を部屋に案内いたしました!」
ドアを開けるとそこには椅子に座り書類を整理しているイザベルがおり、近くには給仕としてエリスがお茶を汲みなどをしていた。
「書類をすぐに片付けますので椅子に座って待っててもらってもよろしいでしょうか?」
部屋の中に入ると書類とにらめっこをしているイザベルから待つように言われたのでコウは椅子に座ると机の上にお菓子と紅茶を用意されるのでつまみながらのんびりと待つ。
「ふ~...お待たせしました。まず最初にコウさんすみません...また呼び戻してしまって」
トントンと書類を纏めイザベルはコウに再び王都へと出向いて貰ったことに謝罪をする。
「いや問題ないどうせ暇だったしな。ところで相談ってのは?」
「えーっとですね。唐突なのですがコウさんは闘技大会にご興味はありますか?」
コウはお菓子をつまみイザベルから本題を聞き出すと闘技大会という言葉が出てきて首をかしげる。
「闘技大会?」
「えぇそうです。この王都で明日から開催される予定のものでして小さな大会なのですがコウさんにはそれに参加していただきたいのです」
どうやらイザベルはコウに闘技大会へ参加してほしいらしくわざわざ呼んだらしい。
「いやまぁいいんだけどなんで俺なんだ?イザベルとかエリスが参加すればいいじゃないか」
コウは自分が参加せずともイザベルやエリスが参加すればそれで良いのではないかと聞くとイザベルは首を横に振る。
「その事情がありまして...もし参加してくださるなら条件としてコウさんを冒険者ギルドにCランクとして推薦しますけどどうでしょうか?」
大手のクランは冒険者ギルドに多く貢献しているため色々とできることがありその1つが推薦である。
推薦されるとその冒険者は依頼をこなし続けなくても昇格試験を受けれるようになるというものだ。
どうやらコウが参加するだけで白薔薇騎士団からCランクの冒険者として推薦してもらえるらしく高ランクの冒険者になりたいコウとしては願ったり叶ったりの条件だった。
「それは嬉しいけど...その事情は話せないのか?」
コウはとしては嬉しい条件なのだがそこまでする事情が気になり聞くとイザベルは少しだけコウに話すかどうか悩む素振りを見せるがすぐに事情を説明しだす。
内容としてはどうやらイザベルの婚約者が闘技大会に出てくるらしく婚約者が優勝するとイザベルは白薔薇騎士団を脱退し婚約者の妻として生きていくことになるらしい。
イザベルは阻止するべく闘技大会へエリスを参加させようとしたのだがどうやら白薔薇騎士団の者は大会に参加できないように小細工されており、参加したくても出来なかったのだ。
そこでまだ無名でありまたそこそこに実力を持っていてイザベルとの交流のあるコウへと白羽の矢が立った。
「なるほど...事情は理解した。でも強い人達が出る大会なんだろ?俺が勝てるはわからないぞ」
「そこは頑張ってください!あの人とは一緒になりたくないんですっ!」
どうやらイザベルの婚約者はイザベルと相性が悪いらしい。
まぁコウとしては参加するだけで大手のクランからCランクの推薦をしてくれるので参加しない理由もないためイザベルのお願いを聞くのであった...。
ここまで見てくださってありがとうございますm(_ _)m
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