第47話

「それにしてもイザベルはいつから俺のことを知ってたんだ?まだ冒険者に成りたてなのに...」


 コウはイザベルのような高ランクの冒険者が最近登録したばかりの自身のことについて聞いてみる。


「あぁそれはですね。隣にいるエリスがゴブリンキングの成りかけを新人が倒したって騒いでいたので少し気になって調べてしまいました」


 やはりゴブリンキングの成りかけを倒した結果それなりにコウは有名になっていたらしく、最近の新人の中でも期待されているとイザベルから聞いてしまった。


「そんな事になっていたのか...少し恥ずかしいな」


 コウはそこまで目立つつもりはなかったため、これからは少し控えめに行動をしようと心に決める。


「たかがゴブリン如きであまり調子に乗らないことね」


 イザベルの隣に座っているエリスがコウを敵視しているようで、一々ちょっかいを掛けてくるため流石のコウも苦笑いしか出ない。


「やめなさいエリス!もう!本当に貴方はなんでこんなに喧嘩腰なのかしら...」


 エリスはイザベルに苦笑されながら窘められるが ふんっ顔を逸してまるで反省の色が見えない。


「本当にエリスがごめんなさい。エリスは嫉妬しているだけなのだから許してあげてね」


「ごほっ!ごほっ!だ...団長違います!」


 どうやら嫉妬しているのは図星だったようで、紅茶を口に含んだエリスが急に咽せ、イザベルに向かって顔を朱色に染めながら反論しているため、あまり説得力はない。


 ただコウからしたら完全にとばっちりなので何とも言えないのだが...。


「そういえばコウさんの肩にいるテイム済みの魔物はなんていう魔物なのかしら?金色でとても美しいですがあまり見たことないですね」


 イザベルはどうやら肩に止まっているフェニが気になるらしく聞いてくる。


「あぁ名前はフェニっていうんだが図書館で俺も調べても全然情報がなくてな...どんな魔物かわかってないんだ」


 コウが一応ローランの図書館で調べたが一切情報はなく、コウとしてもフェニがどんな魔物かは知りたかった。


 まぁフェニは死の森で見つけた魔物であり、死の森自体開拓が全く進んでいないため未知の魔物であることの可能性もあるのだ。


「う~ん私も見たことない魔物ですからねぇ...もしよろしければ調べて差し上げましょうか?」


 イザベルのような高ランクの冒険者に調べてもらえるならコウとしてはかなり有り難い提案だ。


 色々なツテを持っているだろうし、自分で調べるよりかはもっと詳しく調べてくれるだろう。


「いいのか?調べてくれるなら有り難いけど...」


「いえいえ私も気になりますので気にしないでください」


 フェニのことについて何か分かったりしたらまた手紙などを送ってくれるらしく、宛先は宿が変わる可能性もあるため、ローランの冒険者ギルドへ送るようにと伝えておく。


「んーっ...はぁ...そろそろ帰らせてもらおうかな?結構長居したな」


 コウはソファで身体をぐっと伸ばし、背中の筋を伸ばすと、そのまま立ち上がった。


「結構時間が経ってしまいましたね。楽しいお茶会でした。また機会があればしたいですね」


「こちらこそ楽しかったよ。また機会があればよろしくな」


 イザベルにまたお茶会をしようと言われたため、また甘いものをたくさん食べれるならラッキーだと思い適当に返事をしつつ約束する。


 そして手土産としてそこそこ美味しそうなお菓子を貰った後、イザベルと別れを済まし、コウは門番に連れられ屋敷から出ると、そのまま貴族街を抜けていつもの見慣れた庶民の通りへと出た。


 イザベルの屋敷からの帰りにコウは大通りを歩いているとふと気になる店を見つけそちらの方へ足が向いてしまう。


 どうやら魔法専門の店であり、魔道具や魔法書など様々な魔法に関するものが置いてあって色々と見ているだけでも面白い。


「なるほどなぁ...おっ!これとか便利そうだな」


 コウが手にしたのは時間を表示する時計のような魔道具であった。


 値段を見ると白金貨10枚と値札が付いており、流石にまだ手が出せないため残念に思う。


「流石に高いなぁ...頑張って依頼こなさないと買えないな。今回は諦めよう」


 コウは手の届かない時計を諦め外に出ると店で目移りしていたせいか既に夕方であり、早く宿へ戻ろうと考える。


 宿の食事は朝に朝食として食べたが案外美味しく量もあったため、コウは夕飯も少し期待しながら宿へと帰るのであった...。



ここまで見てくださってありがとうございますm(_ _)m

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