第48話

 天然の目覚ましであるフェニから顔をツンツンと突かれてコウは深い眠りから目を覚ます。


 窓のカーテンの間からは小さな光が漏れており、既に朝のようだ。


「あぁフェニか...おはよう」


 昨日コウは宿へ帰宅し、夕食を平らげ歯磨きなどをした後ベットでゆっくりしていたらいつの間にかそのまま寝てしまったようだ。


 目を擦りベットの上で暫くぼーっとした状態でいるとドアがノックされた。


「お客様ー朝食をお持ちしました!」


 どうやらもう朝食の時間のようで食事がコウの部屋の前へと運ばれてくる。


 そこまでお腹は空いているというわけではないが食べようと思えば食べれるためベットから降り、ドアを開け食事の準備をしてもらうことにした。


 とりあえずコウはフェニと一緒に食事をしながら今日の予定を考える。


「う~ん今日でこの宿も終わりかぁ...そろそろローランにも帰らないとな」


 2泊の予定だったため今日で宿を出ないといけない。


 延長しようと思えばできるのだが、王都に残ってもすることは観光ぐらいしかなくまた依頼もこなしていかないといけないためそこまで長居はできない。


「とりあえずローランに帰るか。フェニもそれでもいいか?」


「キュイ!」


 フェニも別にコウと一緒ならばどこでも良いような感じであり、ローランへ帰ることに賛成してくれる。


「よしとりあえず帰りの馬車を探すか」


 朝食をささっと済ませ宿から出てローランへ行く予定の馬車を探し出す。


 正門の前へ到着すると様々な馬車が待機しており、一つ一つの馬車へローランへ行くか聞いてみる。


「すまない、この馬車はローランへ行くか?」


「いんやローランには行かないよ。隣の行商の馬車がローランに行くって言ってたかなぁ...」


「そうか情報ありがとうな」


 幾つかの馬車にローランへ行くかと聞くがあまり無く、何個目かの馬車でやっとローランへ行く情報を得ることができた。


 別にコウは自身で走ってローランへ行くこともできるが馬車があるなら無駄に体力を消費しなくても済む。


「すまない、ローランへ行く予定のある馬車か?もしよかったら護衛もできるし連れて行ってくれないか?」


 隣の馬車で荷物を積んでいる男性に話しかけ乗せていってもらえるかどうかを交渉してみる。


「おめー見てぇなガキがどうやって俺を護衛すんだ?うちにはもう護衛は居るし子守の余裕はねぇよ」


 馬車は荷積みが終わったのかそのまま門へと去っていき、護衛の男2人はニヤニヤしながらこっちをみてバカにしているようだ。


 コウを見た目で判断しあっさりと断られコウはため息をつき、もう1人で行ったほうが早いなと思い門を出てローランへと向かう。


「それにしても感じの悪い奴らだったな。今まで会った行商の人が良い人ばっかりだったんだがなぁ」


 今まで会った行商人のルーカス。そしてルーカスの一番弟子を思い出し、中には碌でもないやつも居るんだと良い教訓にはなった。


「よしとりあえずは走っていかないと日が暮れる走るか」


「キュイ!」


 暫くコウとフェニは王都から離れた街道を走り進んで行くと周囲の景色変わり岩場地帯に入っていく。


 そして大きな岩場を通り抜けようとすると弓矢が足へ飛んできたため、コウは避けてその場で立ち止まる。


「よく避けたな坊っちゃん!わりぃがこの先は通行料が要るんだわ。持ってるものとそこの金の鳥の魔物を置いてきな」


 大きな岩場の影から盗賊が7人出てきて弓矢を射ってきたのはこいつらのようだ。


「なんなんだ...」


 盗賊達はわかりやすいようにニタニタと笑みを浮かべている。


 それもそうだコウの見た目はまだ子供だ。


 そんな子供が1人で外を歩き回り行動しているのだから盗賊にしてみれば鴨が葱を背負った状態にしか見えない。


 盗賊達は完全にコウを舐めきっているためコウはさっさと終わらせるべく魔法を使うことにした。


「面倒くさいな..."夕立"」


 コウは魔力を盗賊達の上に留まらせ、太陽の光が透けるぐらいの薄い水の膜を作り出すと人工的な雨を降らす。


「なんだありゃ?雨?なんで俺達のとこだけ...」


 盗賊達は先程までは晴れて雨雲すらなかったのに突然、自分達の真上には薄い水の膜が出来ており、そこから雨の様な物が降ってきたので理解できず疑問に思っているようだ。


「フェニ。とりあえずあいつらを痺れさせてくれ」


「キュイ!」


 フェニは以前ゴブリンで試した通りに濡れた場所に雷魔法を使うと盗賊達はフェニの放った雷魔法で感電し、全員が痺れてしまい倒れ一部では気絶して蟹のように泡を吹いている。


「やっぱこれは便利だな。とりあえず痺れから回復されるのは嫌だから"氷縛"」


 盗賊達は痺れた上、更に体中の一部を凍らされていく。


「な...なに...が?だ...だすげ...」


 一部の意識のまだある盗賊は痺れて呂律が回らない上に体が凍り寒くなっていくことに恐怖を覚え目の前にいるコウへと助けを求める。


「襲ってきたくせに何言ってるんだ...。そうだとりあえずお前らの拠点の場所を教えろ」


「わがっだ...!おでのズボンに地図が入っでる!だからだすげて!」


「そうかご苦労さん」


 コウは盗賊の男のズボンのポッケから地図を取り出すと十字架のブレスレットに魔力を流し元々の武器サンクチュアリへと戻すと盗賊の首を切り落とす。


 切は落とされた首からは血が噴水のように噴き出るので汚れないためにもその場から飛んでコウは離れる。


「なっ...!」


 まだ意識のある盗賊達はその行為を見て絶望した顔をする。


「"助ける"とは言ってないぞ?」


 コウはゆっくりと別の盗賊が凍っている場所に歩いていき、作業のように1人づつ首を切り落としていく。


 ギロチンのように一瞬で首を切断されるため痛みがあるかはわからないが拷問などをされるよりは幾らかマシだろうか。


「悪人ならまだ殺しても罪悪感はないな...でも人を殺すという感覚が慣れてきてしまっている気がする」


 自身が人を殺すという行為に慣れてきてしまっていることを嫌悪しながら大きな岩場の裏へ行くと朝コウを乗せるのを断った行商人が死んでおり、その護衛達もやられてしまっていた。


 馬車自体は残っており、盗賊たちはもう何人かを襲ってから拠点に帰ろうとしてたのだろうか。


 コウは馬車のに積んでいる荷物を収納の指輪の中に入れ先程盗賊から奪った地図を確認すると岩場を中心に地図が書かれており、拠点としている場所もそこまで遠くはなかった。


「とりあえず潰しておくか...これ以上被害者を出してもしょうがないだろう」


 こうしてコウは帰るのを後回しにして地図に書いてある盗賊の拠点へと向かうのであった...。



ここまで見てくださってありがとうございますm(_ _)m

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