第38話
「おめでとうございます!これでDランクですね!」
コウは小さな盗賊団を潰した後すぐにローランへと帰りギルドへ報告に来ており、サーラはコウの昇格試験が無事成功したことを自身のように喜んでくれている。
しかしコウにとっては盗賊で碌なことをしてこなかった奴らとはいえ自身と同じ人間を殺したということが胸に残りあまり喜べないでいた。
確かにゴブリンや他の魔物を殺してきたため、多少なりとも殺すという行為には慣れてきてたのだが人間はやはり違うようだ。
「あまり顔色が優れませんね。やはり人を殺したということは気分がよろしくないですよね」
コウが昇格についてあまり喜んでいなくいつもと様子が違うのにサーラは気づく。
「でもコウさんは正しい選択をしました。もしあのまま盗賊団を放置してたら多くの人が被害を受けていたと思いますよ」
新人のメンタルケアもギルド員の仕事なのだ。
新人は自身と同じ人を殺した時や仲間を失った時は特に精神的なものが不安定になるのでメンタルケアが必要になる。
今回コウはそこまで精神的に不安定な状態ではなかったがいつもと様子が違うためサーラはコウの選択が正しいものだと優しく伝える。
「そうか...そうだよな。もう大丈夫だありがとう」
「いえいえ気にしないでください。相談したいことがあったらいつでも頼ってくださいね!」
コウも自身が人を殺したということに納得しそしてサーラはえっへんと胸を張り手を腰に当てる。
「そういえばランクが上がったならどんな依頼を受けられるんだ?」
「あぁそれはですねー」
気持ちを切り替えるようにサーラへと質問をすると机の中をガサゴソと探り、机の中から数枚の依頼書を出し机の上に置く。
「こちらになりますね。例えばDランクだとコボルトやウルフなどの依頼を受けれますね。Cランクの依頼だとオークとかでしょうか?」
基本的にゴブリンは群れず個で動くタイプの魔物なので初心者冒険者に対してギルドはおすすめをしている。
1つランクが上がると次からは群れで動く魔物を推奨される。
理由としてはその頃には他の冒険者とパーティーを組むことも多く更にこの先群れで行動するタイプの魔物も増えていくためであるのだ。
まぁ前回のゴブリンは群れで行動していたのだがあれは例外ではあるのだが...。
「なるほどな。群れてるやつが多いんだな」
「そうですね~。群れでの戦闘を慣れさせるためってのもありますからねぇ~どうです?他の方々とパーティーを組まれるのは?」
コウにはフェニが居るのだが実質戦力にはならずまだソロでの行動しているので他の冒険者とパーティーを組むのを推奨される。
もしコウがパーティーを募集したら色々な場所から手が伸びてくるだろうか。
魔法が使え近接戦闘などもこなせ更には収納の指輪持ちであるためかなり重宝されるだろう。
「いや...まだいいや」
ただコウはまだ誰とも組む気がなく、1人でのんびりと活動したい気持ちのが大きいため少し歯切れが悪いがパーティーを組むのを拒否すると周りで聞き耳を立てていた冒険者達が肩を落とす。
まぁ仲が良い人や信頼できるような人がいないというのもある。
「そうですか...ギルド側からすればなるべく安全に依頼をこなしてほしいんですけどねぇ~」
「悪いな。まぁとりあえずは今日は宿に帰って休むとするよ」
こうしてコウはギルドを後にして宿に帰りゆっくりとするのであった...。
■
コウが少し戻ってくる前のギルドマスターの部屋では。
「で...あの坊主はどうだった?」
ギルドマスターのジールが目の前の金髪の男へと話しかける。
「いやぁ~あの子強いっすわ。無事に盗賊は狩ってましたよ」
どうやらこの金髪の男はコウが盗賊と戦っているのを見ていたらしくサーラの言っていたギルドから派遣した1名だろう。
「強いとは思っていたが想像以上のようだな」
「あの子は対応力の高さが恐ろしいほどありますわ。多分ですけどまだ本気出してないっすから自分は逆立ちしても勝てないっすね」
金髪の男はコウに勝てないと首を横に振りながら断言する。
「ほぉ~BランクともあろうものがまだDランクに昇格したての初心者冒険者に勝てないというか」
ジールは金髪の男の言葉を聞き笑うが実際コウの強さとしたらAランクには勝てないもののBランクには勝てるぐらいの力はあるのだ。
ならばこの金髪の男が勝てないと言っているのも事実ではあろう。
ただコウは自身の力がBランクに勝てると自覚してないのだが...。
「まぁお前さんが勝てないっていうんなら勝てないんだろうな。あの坊主が強いならズレていかないように正しい道を示さねばいかんな」
「そうっすね~。できれば自分のクランかパーティーに欲しいところっすけどね...」
こうしてギルド内部ではコウという新人に対して慎重にそして大切に扱っていく方針になっていくのであった...。
ここまで見てくださってありがとうございますm(_ _)m
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます