第36話

 洞窟内は暗くジメジメしており、天井からは水滴が滴り落ちていた。


 また洞窟の奥からは男達が笑いながら話をしている声が反響し聞こえてくるので外の見張り2名がやられたことにはまだ気づいてないようだ。


(外で2人既にやられてるのに呑気なもんだな)


 気付かないのも仕方ない一瞬で2人が声を上げずやられてしまったからだ。


 洞窟内を進むと二手に分かれており、コウは迷わず左の方へ歩いていく。


 勿論盗賊のいる方であり、自身の魔法で分かっていたため迷わず歩くと足に何か引っかかりを感じた。


 引っかかりを感じた瞬間カラン!コロン!と連続した大きな音が洞窟内へ響き渡る。


 洞窟の奥からは大きな声で侵入者だ!などと叫び此方へ向かってくる様な足音が聞こえてくる。


「ちっ!トラップか!」


 コウもトラップに引っかかった瞬間に洞窟の外へと走り出す。


 バレてしまっては奇襲などは通用しないと思い正々堂々とぶちのめすため洞窟の外に出てコウはサンクチュアリを構え盗賊達を待つ。


「来たな...」


 5人程盗賊達が洞窟から出てきており、体を氷の槍で貫かれて死んだ見張り2人を見て驚き悲しみの表情をしている。


「てめぇか...?仲間を殺したのは...?」


 中央に立っている2mぐらいの大きなスキンヘッドの男が静かに怒りながらコウに問いかけされる。


「だとしたらどうする?」


 コウは挑発する様にスキンヘッドの男に問いかけを返す。


「ぶっ殺す!てめぇら!仲間の弔い合戦だ!目の前のクソガキを殺すぞ!」


 他の盗賊達を鼓舞しコウに全力の殺気や怒り憎しみを向けてくる。


 スキンヘッドの男以外の盗賊達は全員バラバラに散っていき、コウを囲む様に陣形をとってきた。


「てめぇは嬲り殺しだ...」


 どうやら目の前のスキンヘッドの男がコウの相手をする様だ。


 散らばっていった盗賊達は手に飛び道具などを持っており、スキンヘッドの男を援護するためにいるらしくニヤニヤと笑っている。


 スキンヘッドの男は大剣を片手で軽々持っており、コウに向かって縦に思いっきり振り下ろしてきたためコウもサンクチュアリで大剣を受け止めるとガキィン!と大きな音が周囲へ鳴り響き空気がビリビリと震える。


「受け止めただと?こんなガキが俺の大剣を?」


 コウが自身の大剣を受け止めたことに盗賊の頭目や周囲にいる盗賊が驚くがコウの身体は特別製のためなんて事もない。


 とはいえ驚くのも無理もない。目の前の自身より圧倒的に小さい子供が大剣を受け止めたのだから。


「おら!お前ら今だこいつを狙え!」


 周囲の盗賊も驚いていたためかスキンヘッドの男の言葉でハッとし慌ててコウに向けてナイフを投擲してくる。


 コウは受け止めていた大剣を弾き飛ばし飛んできたナイフを避け後ろへ下がっていく。


「すばしっこい奴だ!そのまま狙ってナイフを投げろ!」


 頭目は周囲の盗賊へナイフを投げるように指示出す。


「鬱陶しいな!先ずはお前らから片付ける!」


 コウはナイフを投げてくる周囲の盗賊達に向かって走り出すと盗賊の頭目が立ち塞がった。


「おっと!いかせねぇぜ!」


「邪魔だ!」


 コウはサンクチュアリを横薙ぎに振るうが盗賊の頭目は大剣でしっかりと受け止めまた大きな音が周囲に鳴り響く。


 大剣で受け止められると同時に再び後ろからコウに向かってナイフが飛んでくる。


「くそっ!」


 ナイフを避けようとすると目の前の盗賊の頭目が邪魔をしてくるため避けきれない。


 コウはナイフが当たる瞬間を覚悟するが飛んできたナイフが外套に当たるとまるでクッションに跳ね返されるように下の地面に落ちる。


「は?」


 盗賊の1人が間抜けな声を出し唖然とする。


 当然だろう布の様な見た目の外套がナイフを跳ね返したのだから。


 コウもまさか自身の魔力を込めた外套がここまで高性能だと思わず驚くが直ぐに気持ちを切り替えて目の前の敵に集中する。


(投擲物が効かないのはわかったがそれでもナイフを投げてくるのは鬱陶しいな)


 盗賊も外套にナイフを投げるのをやめ、顔や素肌が見える部分にナイフを正確に投げてくるため厄介だ。


 再びコウは盗賊の頭目の大剣を弾き飛ばし距離を取ると魔力を手に込める。


「流石に周りが鬱陶しいからお前と1対1にしてやる」


 自身の上空に手に浮かぶ小さな丸い水球を打ち上げる。


 するとある一定の高さに達すると小さな丸い水球が弾けドーム状の膜が広がっていきコウと盗賊の頭目だけを包んでいった。


 そして凍れと呟くとパキパキと音を立てながらドーム状の水の膜が凍っていく。


「氷牢結界とでも言うか...まぁこれで邪魔はされないな」


 周囲にいた盗賊達は自身の頭目が閉じ込められたため必死に氷の膜を攻撃するがビクともしない。


「邪魔されなかったら勝てるとでも思ってるのか?舐めやがって」


 盗賊の頭目も邪魔がなければ勝てる様な雰囲気を出すコウに苛つきを覚える。


「勝てるさ」


 コウはニヤリと笑いながら盗賊の頭目へ一言バッサリと言い放つ。


「面白れぇ!やってみろガキィ!」


 こうして盗賊の頭目とコウはお互いに武器を構え第二ラウンドの戦いが始まりを告げるのであった...。



ここまで見てくださってありがとうございますm(_ _)m

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