第33話

 暫くすると洞窟の入口から何人もの足音が聞こえてくる。


 どうやらギルドへ助けを求めに行った男の応援がようやく到着したのだろう。


 まぁ応援と言うには少し遅い。もう既に全て終わっているのだから。


「あら...?助けに来たけどもう既に終わっているようね...」


 ピンク色の髪をした長髪の女が先頭を切って歩いており、後ろには何人もの冒険者がぞろぞろとついて来ていた。


「そこの少年と男は無事なようね。これを倒したのはそこの男で間違いないかしら?」

 

 そう言われると隣に座っている男は首を横に振りその言葉を否定する。


「いんや俺じゃねぇ。隣の坊主が全部やっちまった白薔薇騎士団の1番隊隊長さんよ」


「私の事を知っているようね。そんなことよりそこの少年が倒したのは事実?」


「事実だ。俺は何もしてねぇ...それより早く倒れている俺の仲間を助けてやってくれ」


 助けに来た他の人が担架のような物でまだ目の覚めていない男2人を洞窟内から運び出していく。


「そこの少年。ギルドに戻ったら話を聞かせてもらうわよ」


「あ~...わかった」


 コウはなんだか面倒くさい展開になってきたなと思い渋々承諾する。


「では後でギルドで会いましょう」


 そう言うと女は洞窟の外へと出でいってしまった。


 とはいえギルドで会おうと言われても何を話すのだろうか?正直面倒ごとになるような気がしないでもない。


「...白薔薇騎士団ってなんだ?」


 コウは隣の男に聞くと男は丁寧に色々と説明してくれた。


 白薔薇騎士団とは女性だけで構成されたクランであり、先程居た女はそこのクランの隊長をやっているらしい。


 またそのクランは大規模で女性冒険者の中では崇拝している者もいるとかなんとか。


 ある程度情報を得られたのでコウはゴブリンの死骸を全て収納の指輪の中へと入れていく。


 別に今、解体してもいいがコウは面倒くさいし汚れるのが嫌なため全部持って帰ってギルドに全て丸投げしようと考えていた。


 ギルド自体も解体を受け付けており、解体したら少し素材から手間賃を取られるが解体が苦手な者が頼れるようになっている。


 一緒に居た男もタンカーで無事に街へと運ばれたのでコウはのんびりと街へ帰るのであった...。


 コウはゴブリンの巣から街へ戻りギルドに来ていた。


 来ていたというよりも呼び出されたというのが正しいだろうか。


 正直コウはギルドで解体だけ済ましたかったのだが...。


「やっと来たわね。ギルドの裏の部屋に行くわよ」


 どうやら先程会って話をしたピンク髪の女がカウンターの近くで待っており、さっさと話を済ませたいようだ。


「はぁ...特に話すことなんてないんだがなぁ...」


 少しボヤくように言うが華麗にスルーされそのまま裏の部屋に連れて行かれる。


 部屋の中に入り扉を閉め、お互い椅子に座ると目の前のピンク髪の女が鋭い目つきをこちらに向ける。


「私の名前はエリス。貴方の事は調べさせてもらったわ。最近冒険者になったばかりの新人らしいじゃないの。でもそんな貴方が何故あの"ゴブリンキング"へ成りかけの"ゴブリンロード"を倒せたのかしら?」


 目の前のピンク髪の女はエリスというらしい。


 そしてエリスに何故倒せたかと言われてもコウは反応に困った。


 倒せたものは倒せただけなのだ、ただあの巨大なゴブリンが弱くコウが強かったそれだけなのだ。


「だから魔法で動きを封じて普通に首を吹き飛ばしただけだそれ以外無い」


 巨大なゴブリンの倒し方を説明してもエリスは納得したような表情を見せない。


 すると部屋の扉からノックの音がコンコンと聞こえてくると同時にガチャリと扉が開く。


「失礼します。あっコウさんギルドマスターがお呼びですので少しよろしいでしょうか?」


 扉を開けこちらに話しかけてきたのはサーラのようでどうやらギルドマスターからコウを連れてくるようにと頼まれたらしい。


「というわけでエリスさん。こちらのコウさんはギルドマスターに呼ばれましたので連れて行かさせて頂きます」


 エリスはまだ話は終わっていないと言うような目でこちらを見てくるが優先度で言えばギルドマスターのが高い。


「また今度話をするわよ!」


 コウはエリスに後ろからまた今度話をすると言われうんざりしながらサーラに連れられギルドの2階へと続く階段を登るとギルドマスターの部屋があり、サーラが扉をノックすると中から渋いおっさんの声でどうぞと聞こえてくる。


「ギルドマスター、コウさんをお連れしました。それでは失礼します」


 扉を開け中に入るとそこには椅子にどっしりと座ったまるで熊のような男が待ち受けていた。

 

「おう来たか。俺はギルドマスターのジールという宜しくな期待の新人!」


 ギルドマスターの名前はジールというらしい。


 今まで会ってきた人達の中では1番強そうな風格を持っている。


「お前さんがコウだな。ふ~む...」


「あ、あぁ宜しく頼むジールさん」


 まるで獲物を見極めるかのような目でこちらを見てくるためコウも少し後り、敬語になってしまう。


 ジールは暫くすると納得した表情をするが何に納得したのかはわからない。


「なるほどな。コウお前それなりに強いなゴブリンキングの成りかけを倒せる筈だ」


「よく人の強さなんてわかるな」


「まぁな。俺は元Aランクの冒険者だったしそれぐらいわかるさ」


 コウはかなりの高評価を得ていた。


 それもその筈だゴブリンキングを倒しCランクパーティという大切な人材を救ったのだから。


「とりあえずだお前さんは今はEランクだろう?飛び級にはできねぇが今度Dランクへの試験を受けさせてやる。どうだ?」


「やけに早い昇格試験だな。いいのか?」


「いいに決まっとるわ!実力者が下で燻っていても仕方あるまい。したかった話はそれだけだ後は宿に帰ってゆっくりしとけ」


 こうしてコウはギルドマスターから昇格試験などの話を聞いた後ギルドでゴブリンの解体を丸投げし宿へ帰りフェニと共にゆっくりするのであった...。




ここまで見てくださってありがとうございますm(_ _)m

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