第27話

 ちゅんちゅんと外で鳥が鳴く声ではなくいつものピィピィとフェニが鳴く声でコウは目覚めた。


 昨日は冒険者として登録してからすぐにギルドから出てまた屋台をフェニと食べ歩きそのまま宿へ帰宅した後、すぐに寝てしまったのだ。


 久々にふかふかのベッドのせいか太陽がそこそこな空の高さまで登っている為、朝食は食べ逃したであろう。


「んぁ...あぁ...フェニおはよう」


 耳元でピィピィと言っていたフェニに顔を向け寝起きの挨拶をする。


 どうやらフェニはお腹が空いたらしくその為かコウを起こした様で顔に羽を擦り付けてくる。


「悪い悪いご飯か」


 そう言いながらベッドの隣にある小さな机に皿といつもの果物を置くとフェニは果物に寄って行き突きながら食べ始める。


 コウも朝食を逃した為、収納の指輪からパンやハムなどを出しノンビリと出掛ける支度をしながら食べ始めた。


◾️

「よし、ギルドでも行って依頼でも見に行くか」


 コウは支度が終わり部屋のドアに手を掛けると布団の上でゆっくり食後に寝ていたフェニが気づきコウの肩へと飛んでくる。


 階段を降りるといつもの受付嬢が掃除をしていた。


「あら、おはようございます。今日はゆっくりですね。今からお出掛けですか?」


「あぁちょっと外に用事があるからな。えーっと...」


「あぁ自己紹介がまだでしたね。私の名前はミランダと申します」


 コウは受付嬢の名前を知らないので少し言葉が詰まると受付嬢はこちらの意思を汲み取りニコリと微笑みながら名前を教えてくれる。


「ミランダさんか...覚えた。じゃあちょっと行ってくる」


「はい、いってらっしゃいませ!」


 ミランダから見送りの挨拶をもらい外に出ると昨日の夕方よりも多くの人々が外を出歩いており、この街が思った以上に栄えているという事がわかる。


「昨日よりも人が多いな」


 暫く人混みをかき分けながら歩くとギルドの近くになるにつれて人は少なくなっていき、コウはようやく冒険者ギルドへと到着した。


 殆どの冒険者は朝受けた依頼を達成するために街の外へと出かけているのだろうかギルド内の酒場にいる人もごく少数であり、依頼を貼ってあるボードの前にも人が少ない。


 コウも依頼の貼ってあるボードを見るが残っているのはどれもシケた依頼ばかりだ。


「う~んやっぱ朝早く来ないといけないもんだなぁ…おっこれいいな。これにするか」


 手に取った依頼の紙にはゴブリンの討伐上限なしと書いてあり、コウは既にゴブリンぐらいなら何匹居ても瞬殺できる自信があるし、殺しの訓練としては丁度よい。


 受付の前に行くと昨日コウの冒険者登録をしてくれたサーラが椅子に座り事務処理をしていた。


「これを頼む」


 熱心に事務処理をしているサーラの前に行きコウは依頼書を出す。


「あっコウさんこんにちは。ちょっと待って下さいね~」


 昨日の出来事でどうやら名前を覚えられていたようだ。


 いやもしかしたら要注人物として覚えられているだけかもしれない。


 事務処理していた手を止めてサーラは依頼書に目を通していくと同時に表情がどんどん険しくなっていく。


「コウさんこれはあまりおすすめできません」


 机にコウの取った依頼書を置きキッパリと言われる。


「なんでだ?ただのゴブリン退治だろ?」


「えぇただのゴブリン討伐です。ただ…ゴブリンの討伐場所が問題です。死の森の近くでのゴブリン討伐と書いてあるのがいけないんです」


 依頼書をよく見てみるとゴブリンの討伐場所は死の森付近と書いてあり、どうやらそこを危険視しているようだ。


 コウにとっては死の森は前住んでいた場所なだけに何も問題はないし死の森の深い場所に入らなければコウにとって危険な魔物は存在しない。


「問題ない。死の森の近くでの討伐だろう?だったら死の森に入らなければいいはずだ。何かあればすぐ逃げる」


「しかし…わかりました。危険な場合はすぐに退避してください。森の中にも入らないでください。怪我でもしたら次からは簡単な依頼からこなしてもらいます」


 コウの主張としては森に入らなければ危険はないということである。


 またCランク候補を素手で倒したという実績もあるためそれなりに実力があるということをサーラは理解していた。


 そしてコウが依頼を受けるということには渋々納得するが色々と条件をつけてくる。


「わかったそれでいい」


 コウもサーラの色々と条件をつけられることに納得する。


「わかりました。ゴブリンの討伐証は耳になります。ではこちらの依頼書にサインをお願いします」


 サーラは机の上にある依頼書に判子を押しコウはその依頼書にサインを書く。


「十分に気をつけてくださいね!怪我だけはだめですよ!」


 サーラに念を押され見送られ冒険者ギルド外に出るとコウは背筋を伸ばし空を見る。


「初仕事か...頑張ろうなフェニ」


「ピィ!」


 肩に乗っているフェニに話しかけるとフェニもやる気十分な返事が帰ってきた。


 そしてコウは街の外へ出ようと正門へと向かうと途中で偶然にもジャンに出会う。


「おっコウか昨日ぶりだな!冒険者にはなれたのか?俺は無事冒険者として今、依頼を達成したとこだぜ」


 昨日別れたばかりのジャンとサラは無事に冒険者になれたようでジャンは初依頼を達成したとこらしい。


「あぁ無事なれたよ。今から受けた依頼をこなしに行くとこだ」


「よかったな!まぁ何の依頼を受けたかはわからねぇが頑張れよ!これからサラのやつを機嫌が悪くなる前に迎えに行かねぇといけねぇんだ」


 そういえばいつも横にいるサラが居ないことにコウは気がつく。


「そういえばあのやかましい奴は居ないな。別行動か?」


「サラは旅の疲れで少し宿で休憩してるんだ。まぁ今から迎えに行って明日からは一緒に依頼をこなしていくつもりだ。じゃあサラが待ってるからまたな!」


 ジャンと別れを済ましコウは正門へとまた歩き出す。


 そして正門についたコウは外に出る手続きを済まし街の外で体をほぐすために準備運動をする。


「よし少し急いで行かないとな。フェニは外套の中に入っとけ。全力で走るぞ」


 フェニは急いでコウの外套の中にある内ポケットへと入っていく。


 こうしてコウはある程度人が居なくなった場所になってから走り出し全力で死の森付近まで目指すのであった...。



ここまで見てくださってありがとうございますm(_ _)m

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