第26話

 ギルドの入り口前では大勢の人集りが出来ており、ザワザワと会話をしたり賭けを始めたりしていた。


 おいおい...子供を虐める気か?可哀想に...。

 あらぁ喧嘩かしら?

 あいつはダンじゃねぇか?あのCランク昇格予定の。

 さぁ!賭けの時間だよ〜!


 周囲からは様々な声が聞こえてくる。


 中心部にはコウと小汚い盗賊の様な見た目をした男が距離をとって立っていた。


(あいつCランク昇格予定のなのか...そこまで強そうに見え無いが)


 コウは素手で欠伸をしながら頭をぽりぽりと掻き周囲で話している目の前の男の情報を小耳に挟み集めていく。


「やめて下さい!冒険者同士の殺し合いは御法度です!そしてそこの君はまだ子供なんだから危険ですので逃げてください!」


 ギルドの入り口から先程、受付に居た受付嬢が出てきて焦った表情で2人に警告する。


「問題無い。俺はまだ冒険者じゃないから関係ないな。フェニ!そこの受付嬢の肩にでも乗ってろ!」


 確かにコウはまだ冒険者ではない為問題はない。


 そしてコウはフェニをギルドの入り口まで出てきた受付嬢の肩に乗るよう指示をする。


 するとコウの肩に乗っていたフェニは軽くバサバサと翼を動かして空を飛び受付嬢の肩に止まる。


「そうだぜぇ...サーラちゃんあいつは冒険者じゃねぇしこれは子供の躾けだからよぉ...まぁ死んじまったらしょうがねぇけどなぁ」


 ニヤニヤとした顔でまるで自分がコウを殺してしまっても問題なさそうに小汚い男は言う。


「へっへっへ...さぁ躾けの時間だ後悔するなよ?」


 小汚い男は腰にぶら下げていた手斧を出し構え出すがコウは武器を出さず素手で構えており、小汚い男を指でチョイチョイと挑発していた。


「早く来いよ」


「てめぇ...後悔すんなよ!」


 そんな挑発を受けてしまった小汚い男はストレスがピークに達したのか大きく振りかぶりながらこちらへ真っ直ぐ手斧を振りかぶってくるがコウの目からしたらハイドと比べてあまりにもスピードもキレも無く横に半歩少し移動するだけで避けれてしまう。


 初手を見切られ小汚い男は少し動揺するがすぐに横薙ぎに手斧を振るがまたコウは後ろへ半歩移動するだけで見切ってしまう。


「避けるのだけは上手いなクソガキィ!」


 更に手斧をブンブンと縦横無尽に縦や横に振り回すがコウには全く当たらず小汚い男は益々苛々していた。


(ん〜これでCランク昇格予定...?)


「てめぇ!早く当たりやがれ!」


 全く当たらないコウに苛立ち小汚い男は不満を打つけ大きく手斧を振りかぶる。


「馬鹿か?当たったら怪我するだろ。というかこれが限界か?だったら終わらせるぞ」


 と言った次にコウは小汚い男の懐へと一気に入り込み鳩尾部分へと拳を突き出す。


 鳩尾部分に拳が突き刺さった瞬間に小汚い男から呻き声が聞こえ、白目を剥き前のめりに倒れ込む。


 人体の急所に力強いコウのパンチがクリーンヒットしたのだから当たり前である。


「一撃...?嘘...」


 受付嬢がまるでありえない様な光景を目にしてポツリと呟くと大勢の人集りから歓声が上がり周囲は熱気に包まれる。


「よし、フェニ終わったぞ!」


 フェニに終わった事を伝えると受付嬢の肩から飛び立ちコウの肩へ止まる。


「それよりお前いつの間に飛べる様になったんだ?」


「ピィ!」


 飛べる様になった事をまるで自慢する様にフェニは鳴き胸を張ってる様にも見える。


「まぁいいことだな。まぁこれで冒険者として登録できるだろ」


 そう言いながらコウは観客の間を抜けてまたギルド内へと入っていく。


 受付の場所にはまだ受付嬢がいない為、待っていると急いで外から先程の受付嬢が戻ってきて何やら用紙と羽ペンを用意している。


「お...お待たせしました!先程は失礼しました!この度冒険者登録を担当させて頂きますサーラと申します!」


 どうやら先程の戦いを見てコウがそれなりの実力者という事を知り急いで対応しないといけないと焦っている様だ。


「あ、あぁ...少し深呼吸したらどうだ?」


 若干引きつつも受付嬢を落ち着かせる為にコウは提案すると受付嬢もハッと気づき深呼吸をする。


「はぁ...落ち着きました。ありがとうございます」


「いやいい。じゃあ冒険者登録を頼む」


 落ち着きを取り戻した受付嬢はコウの冒険者としての登録の準備をする。


「はい、改めてまして冒険者登録担当をさせて頂きますサーラと申します。では冒険者の概要を説明させて頂きます」


 サーラと名乗った目の前に立っている受付嬢は深くお辞儀をして丁寧な挨拶をされるのでついついコウも釣られて頭を下げてしまう。


「ではまず冒険者というのは基本的に何でも屋とあまり変わらないものとなり様々な依頼を受けます。例えば薬草の採取や魔物の討伐、護衛関連など様々です」


 見た目が子供寄りであるコウに聞き取りやすいようにゆっくりと話し、丁寧にそして冒険者がどういったものかわかりやすく説明されるのでこのサーラという受付嬢はずいぶんと優秀な人なのかもしれない。


「依頼されるものはSからEランクのものがあり S〜Aは大体が指名依頼となります」


「いきなり高いランクの依頼は受けれないのか?」


「えぇっと最初はEランクから始まりますので最初から高ランクの仕事は難易度が高く死ぬ可能性があり依頼を受けることが出来ませんのでご了承下さい」


 確かに実力のない新人の冒険者がいきなり高いランクの依頼を受けて死んでしまっては人材の無駄遣いだからだろう。


「ただし基本的に同ランクか同ランク+1までのランクの依頼でしたら受けることができる形になっています」


 とはいえ多少実力を持っている者はすぐにランクを上げれるように同ランクの+1までの依頼だったら受けることが出来るらしい。


「以上が冒険者としての説明になります。何かご不明な点はございましたでしょうか?」


 サーラから一気に説明されたがコウは丁寧にそしてわかりやすく説明されたので問題ないと返事をすると机の上に準備してあった用紙と羽ペンを出される。


「ではこちらの用紙に名前と年齢をお願いします。代筆はご利用になりますか?」


 サーラに代筆は必要かと聞かれるがコウは既に文字を書くことぐらいならばマスターしているため首を横に振り用紙に書き込んでいく。


「書けたぞ。これでいいか?」


「はいありがとうございます。では登録しますので少々お待ち下さい」


 書き込んだ用紙を持ち後ろにある部屋に持って行き5分ぐらいしたら今度は何かのプレートを手に持って受付に戻ってくる。


「お待たせしました。こちらがギルドカードになります」


 机の上に何も書かれていない銅色のプレートを出されそれをコウは手に取ると上にかざしながら確認する。


「では最後にそちらのプレートに魔力を流して頂いてもよろしいでしょうか?」


 サーラに言われた通り魔力を流すとコウの名前と年齢、そしてどこで発行された物なのか様々な詳しい情報が浮き上がってくる。


 流石、魔法の世界といったところだろうか。


「はい!これで冒険者登録完了となります!良い冒険者ライフを送ってくださいね!」


 こうしてコウは多少のトラブルはあったが無事に?今回の目的であった冒険者ギルドへの登録を完了したのであった。



ここまで見てくださってありがとうございますm(_ _)m

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