第25話

「へぇ流石金貨2枚払っただけはあるな」


 コウは部屋の中を確認すると目の前にはそれなりの広さの部屋であり、1人では持て余しそうなくらいである。


 また街の中にある家の窓は基本、木の扉だけでガラスなどは付いていないがこの宿は窓に少し歪んだりしているガラスが付けられていた。


「ベッドも寝心地が良さそうだし当分はここで生活するか」


「ピィ!」


 ここで生活するのはフェニも賛成らしく羽を広げながら大きな声で鳴き、満足そうにアピールをしてくる。


「さて部屋の確認もしたことだしギルドとやらに行って冒険者登録をしないとな。いくぞフェニ」


 部屋を探索中のフェニを呼ぶと、すぐに駆け寄ってきてコウの肩に乗る。


 そしてコウも肩にフェニが乗ったのを確認してから宿の受付まで階段を降りて行くことにした。


「あら、お出掛けですか?」


 外に出ようとすると、出入り口の前で箒を持ちながら、せっせと掃除をしていた受付の女性に声を掛けられた。


「ん、少しだけ出掛ける感じだ。そう言えば宿泊期間を延ばすことはできるか?」


「えぇ大丈夫ですよ。何日ほど泊まられますか?」


 コウとしては部屋は綺麗だしベッドもそれなりにふかふかであり、サービスも良いため、今は長期で泊まりたいと思っている。


「ん〜とりあえず10日ほど追加で頼む。金貨は何枚だせばいい?」


 どうやら受付嬢は正直、数日だけの泊まりだと思っていたようで、いきなりコウから10日追加と言われると、受付嬢は少し焦ったような表情をする。


 それもその筈、10日も泊まる人物はおらず、稀に貴族が数日泊まったりすることはあるが、ここまで長期間は中々にかなり珍しい。


「えぇっと...10日ですか?本当に10日でよろしいのでしょうか?でしたら長期滞在とのことですので金貨15枚ですが大丈夫ですか?」


「ん?あぁ10日で頼む。金貨15枚だな」


 コウは収納の指輪から金貨15枚を出し5枚ずつカウンターに置く。


 傍から見たらかなりの金持ちであるが、ハイドのお陰で金銭感覚が麻痺しているというのもある。


「これでいいよな?じゃあちょっとだけ出掛けてくる」


「は...はい、確かに金貨15枚頂きました...行ってらっしゃいませお客様...」


 受付嬢は目の前で魔法の様に何もないところから金貨15枚という大金を出されたためか、目を丸くし軽い放心状態になりながらも自身に与えられた業務をしっかりと行っていた。


 それもそうだ小さい少年が魔法のように金貨を出してくる光景は滅多に見られないだろう。


 そして無事に支払いも終えたということで、放心状態の受付嬢をよそにコウは宿の外へ出て行くことにした。


「よし、フェニまずはギルドをのんびりと探すぞ」


「ピィ!」


1人と1匹は街をゆったり歩きながらギルドを探すのであった。


◾️

 空は茜色ではなくなりすっかり夜になっており、1人と1匹が歩いている道は酒場や屋台が冒険者などで賑わっていた。


「あったあったあれがギルドか。やっと見つかったな」


 剣と盾の飾り付けてある大きな看板に文字で冒険者ギルドと書かれている建物を見つける。


 まぁ見つけるまでに色々な屋台などをフェニと一緒に寄り道していたわけなのだが。


「よし入るか」


 木でできた扉を開けると中は広く左手には酒場があり、今日依頼をこなしてきたような冒険者達がそこで飲み食いしてるのが見える。


 右手はどうやら依頼などを受け付けたりする窓口らしく見た目の良い受付嬢達が仕事をしていたり冒険者に口説かれている者もいる。


 また正面には依頼なのか多くの紙がボードに貼ってあるが既にめぼしい依頼は無いく夜のためかあまり冒険者がいない。


「とりあえず受付に行けば登録できるんだよな?まぁ聞けばいいか」


 コウは右手にある誰も並んでいない受付に歩いて行き事務処理をしている金髪でポニーテールの受付嬢に話しかける。


「すまんが冒険者登録ってどうするんだ?」


 事務処理している受付嬢の手がピタリと止まり此方の顔をジッと見てくる。


「うーん冒険者登録はいいけど君みたいな可愛くて弱そうな子はやめた方がいいかな。あっ別に嫌味とかじゃなくて心配して言ってるんだよ?」


 心配している顔で辞めた方がいいと言われちょっとだけコウは複雑な気持ちになる。


「そうだそうだクソガキはやめとけ!そんな弱そうなガキを相手するよりサーラちゃん今から俺と飯でもいかねぇか?」


 突然横から割り込まれコウは唖然とする。


(なんだこいつは?急に割り込んできて不愉快だな)


 コウは目の前に割り込んできた今受付嬢を口説いている小汚い盗賊のような男に苛立ちを覚えるがグッと我慢する。


「おいおいダン。今はサーラちゃんを口説いてる場合じゃ...ない...ぞ...」


 更に後ろから魔法使いのような中年が現れて割り込んできた汚い男に話しかけているが此方を見てから急に化け物を見た様な顔をされる。


「ひぃっ!ダン!そこから離れろ!」


「あぁん?ドリー何言ってんだ?俺はサーラちゃんを飯に誘うので忙しいんだ」


 急に小汚い男は魔法使いに離れろと切羽詰まったような感じで言われ訳の分からない顔をする。


「そこの子供には手を出すな!絶対だ!」


 魔法使いはコウに指をさし、普段と全く違う様子の相方を見て小汚い男はコウが何かしたのかと考えたのだろう。


「おいクソガキ俺の相方ドリーに何をした?表出ろっ!」


「は?何もしてないだろ?とりあえずそこを退け登録できないだろ」


 コウは小汚い男に退けと言うと小汚い男の顳顬に血管が浮き出てきて自身よりも小さい子供に生意気にもため口を疲れたことで怒り心頭なようだ。


「うるせぇ!てめぇみてぇなクソガキが冒険者なんて務まるかよ!」


 小汚い男は大きな声を上げコウを受付まで行かせない様に遮ろうとするとコウはため息をつきギルドの入り口へ歩き出す。


「はぁ...表に出てやるからおっさんも出てこい。躾けしてやる」


「君!そういうのは本当に止めなさい!」


 入り口前でコウはニヤリと笑いながら小汚い男を指で挑発すると他の飲んでいる冒険者は笑い受付嬢は止めようと声を上げる。


「てめぇ...ぶち殺す...」


 しかし時すでに遅し。自身よりも小さく受付に来たということは冒険者ですらない子供に挑発された小汚い男は低い声でコウを殺すと言い2人は野次馬を巻き込みつつ、ギルドの外へ出るのであった。

ここまで見てくださってありがとうございますm(_ _)m

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