第24話

 門兵が入門証とフェニの首飾りを発行しに行き1時間ぐらい経った。


「お待たせしました!此方が入門証と魔物の首飾りになりますのでお渡しします!では改めましてローランへようこそ!」


 フェニへ首飾りを付けると首飾りのサイズがフェニにびったりのサイズへ変化する。


「ん...サイズはぴったりになるんだな」


 コウがルーカスの馬車に乗ると同時に馬車がガラガラと動き出し街の中へ入っていく。


 街中は人で溢れており、馬車もゆっくりと街中を走っていく。


 街の歩いている人達をのんびり馬車の中から眺めていると少数だが獣人やエルフやドワーフなどが歩いており、俺は異世界に本当に来たんだなと実感させられる。


「異種族の方は初めて見られますか?」


 ルーカスがコウの物珍しそうに外を見る様子を見て軽く声を掛けてくる。


「あぁ見たことないから新鮮だ。世界は広いな...」


 コウはこの世界に来て改めて世界が広く感じ胸が高鳴り目を輝かせる。


 これから前の世界ではありえなかったもっと多くの知らないことや経験ができるのだから。


「そうでしょうね。世界は広いです。私も商人として生きてきましたが知らない事がまだまだあります」


 ルーカスも過去、自分が生きてきた人生を振り返りながらしみじみと思いふける。


 馬車から街中を眺めて15分ぐらい経った頃だろうかルーカスからそろそろ店に着くと声を掛けられた。


「ここが私のお店。ルーの魔道具本店です」


 馬車がゆっくりとスピードをゆっくりと落とし止まったので馬車の小窓から外を覗くとそこには大きな店があり、店の中には色々な魔道具が置いてあるのが確認できる。


 お客の入りが良いのか店員が慌ただしく走り回っており、店として好調なのだろうか。


「そして私の店の右隣にありますのが小鳥の止まり木という宿になります」


 右隣を見ると宿の入り口の上には小鳥が止まり木に止まっている木で作られた彫刻がある。


「小鳥だってさ。フェニと同じだな」


「ピィ!」


「ではまず宿の方へ行きましょうか。私が一緒に行けば部屋は簡単に取れるはずですので」


 そう言いながらルーカスは馬から降り、コウも一緒に宿の方へ向かう。


「荷物はいいのか?」


 宿より荷物を先に店へ預けてから宿に行けばいいのではと思いルーカスに聞く。


「大丈夫ですよ。店の者がやりますのでご心配無く」


 先程乗っていた馬車の方を振り返ると店から2人程、店員が出てきて馬車の中にある荷物をせっせと店の中へ運んでいっているようだ。


「さぁ宿の中に入りましょうか」


 ルーカスが小鳥の止まり木のドアを開けるとそこは落ち着いた雰囲気の受付となっており1人の小綺麗な女性が立っていた。


「いらっしゃいませ。あらルーカス様ですね。どうかされましたか?」


「えぇ宿を探している方が居ましたので。部屋は空いていますでしょうか?」


 女性の見た目は肩に掛かるぐらいの髪の長さの金髪であり、エプロンをして年齢は20代ぐらいだろうか。


「部屋は1つだけ空いていますので大丈夫ですよ。泊まられる方...ええっと...後ろの方でしょうか?」


 ルーカスの後ろで立っており、店の中を物珍しそうに見ているコウをちら見しルーカスに尋ねた。


 少し不審になるのも分かる。


 コウの見た目はまだ少年のような見た目をしており、1人と肩に1匹の小鳥の魔物だけなのだ。


 またコウの後ろに保護者などの大人がいる訳でもなく子供が大金を持っているようにも見えない。


「はいそうですよ。泊まられる方は後ろの方になります」


 宿の受付の女性はルーカスの紹介ならば貴族の子供かもしれないと判断した。


 見た目もかなり整っているし複数の魔道具を身に付けているのも見える。


 まぁ実際は森から出たばかりの田舎者なのだが。


「ではお客様に宿の説明をさせて頂きますね。小鳥の止まり木では先払いとなっております。お出掛けの際は受付で鍵をお渡し下さい。食事は朝と夕の2食になり部屋にいる際は声を掛けさせて頂きます。以上となりますがご不明な点はありますでしょうか?」


 手慣れた感じで宿の説明をされる。


 普通の安い宿ならばここまで丁重に持て成してくれないだろう。


「あぁ問題ない大丈夫だ」


「ではサインをお願いします。代筆は必要でしょうか?」


 コウとしては特に気になる点はなく、そのまま了承すると、受付の女性はカウンターの裏から羽ペンと名簿リストのようなものを出し、続けてサインをお願いしてきた。


 また代筆は必要なのかどうなのかを聞かれたが、コウは既に文字などの読み書きはできるため、必要ないと首を横に振りながら答え、自分の名前を名簿にささっとサインを済ませていく。


「はい、ありがとうございます。では代金は金貨2枚になりますのでお願いいたします」


 受付の女性はカウンターに羽ペンと名簿を片付けカウンターの上に部屋鍵を出し先払いのためコウに代金を求める。


「ん、わかった金貨2枚な」


 コウは収納の指輪から金貨2枚を渡し部屋の鍵を貰うとすぐに収納の指輪の中へと仕舞っていく。


「ルーカスも宿を紹介してくれてありがとうな」


「いえいえ命を助けて頂いたので気にしないで下さい。あぁ此方をお渡ししておきます」


 コウはルーカスから謎の紋章が入った銀色の硬貨のようなものを渡された。


「今、お渡しした物は店の者に見せれば私がいる限りすぐに会えるようなものになります。もしまた何かあればそちらをご使用下さい」


 今、ルーカスがコウに渡したものはどうやらルーカスが一部の人にしか渡していない直接会えるようになるものらしい。


「ん...ありがとうまた何かあったら頼らせてもらうよ」


 ルーカスはコウの言葉を聞くと頭を下げ早足で宿から去って行く。


 きっと自分の店に運び込まれた荷物の整理などで忙しいのだろう。


「さて自分の部屋を確認してちょっとしたらギルドとやらを探すか」


 そしてコウは近くにある階段を上り、とりあえずは自分の部屋へ向かうのであった。




ここまで見てくださってありがとうございますm(_ _)m

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