第23話
ガラガラと大きな音を立て進む馬車、空は既に茜色に染まり始めていた。
「もうそろそろ街に着きますよ」
馬車で坂を登っている最中、商人の男ルーカスが後ろの荷台に向かって話しかけると小窓からコウ達の返事が返ってくる。
馬車が坂を登り切るとそこには石のブロックで作られている城壁で囲われた大きな街が見えてきた。
城門も見えてきてどうやら入口には種類があり、4つほどに別れているのが見える。
「結構街に入る人が並んでるんだな」
「そうですね~。ここら辺では1番栄えている場所ですので出稼ぎの方や夢を見てくる方々が多いのですよ」
夢を見て来る人の中には同じ馬車に乗っているジャンとサラも含まれるだろう。
「まぁ村を出て夢を見てるのは俺達も同じか」
ふと村に住んでいた時を懐かしむ様にジャンは目を細め思い呟く。
「じゃあ街の中に入るのはかなり時間が掛かるのかしら?」
宿を探す時間などサラ達はあるため街に入る時間を気にしており、ルーカスに尋ねる。
「いえいえ私は商人のですの商人専用入口から街へ入りますので時間は掛かりませんよ。コウさんやジャンさん達は護衛という名目上一緒に入れるのでご安心ください」
ルーカスに詳しく補足として説明され、どうやら街へ入るには一般入口、商人専用入口、貴族専用入口、特別専用入口があるらしい。
一般入口は低ランクの冒険者や一般の人。
商人入口は商人専用で早めの納品物や食材の品質が悪くならないためにあるらしい。
貴族入口は貴族が専用で通れる場所。
特別入口は高ランクの冒険者や緊急の伝令などが通れるようになっており、4つに分けられているようだ。
とはいえ1番並んでいるのはやはり一般入口だろうか。
逆に貴族入口や特別入口は並んでおらず、商人入口も少数しか並んでいなかった。
「あら運がいいじゃないの。良かったわねジャン宿を探す時間が取れるわよ」
「あぁ、路上で寝るか街外で寝るかになると思ってたから良かったな」
2人ともホッとした様子で街に早めに入れる事を喜んでいるが後に初めての街で迷いながら良い宿を探すのにこれから苦労するのは2人ともまだ知らない...。
◾️
「次の方どうぞ!」
門の前の門兵が大きな声で自分達の乗っている馬車を呼ぶ。
ルーカスも自分の番だと分かっているので慣れた手付きで馬に鞭を打ち馬車を門兵の前まで着かせる。
「はい!では荷物を確認させて頂きます!」
そう言うと後ろの荷台を門兵がすぐにチェックし始め違法なものがないかどうかを確認しだす。
「荷台に乗っている方は護衛の方でしょうか!護衛の方は入門証かギルドカードの提出をお願い致します!」
門兵はジャン達と同じ様な年齢のような若者で少し不慣れながら門兵としての仕事をしている。
ただ護衛のためすんなりと街へ入れると聞いていたが入門証やギルドカードというのが必要と聞いてコウは持っていないため戸惑う。
「入門証やギルドカードという物を持っていないんだがどうすればいいんだ?あとテイム済みの魔物もいるんだが...」
コウはすぐさま門兵に尋ねもしこれで無いといけない物であれば街へ入ることは叶わず諦めるしか無いし、更にはフェニもいるためフェニが街へ入れるかどうかも確認する。
「はい!入門証が無ければ此方でお作りします!」
どうやら入門証は無ければ作ってくれるらしくコウはホッと一息つく。
「ただ入門証を作る際は銀貨1枚頂きますのでご了承下さい!また従魔もいる場合は追加で銀貨4枚頂きます!また従魔がトラブルを起こした場合罰則があるのでご注意下さい!」
ただ追加で銀貨1枚払う必要があるらしくフェニも居るため合計銀貨5枚の出費となってしまった。
ジャンとサラは村から出た際に村の管理者から入門証を作ってもらっていたらしく先に門兵へ渡していた。
またフェニがトラブルを起こすとは思えないため罰則に関してはそこまで問題ではない。
「銀貨合計5枚か...これでいいか?」
コウは収納の指輪から銀貨5枚を出し門兵へと手渡す。
「では確かに銀貨5枚頂きましたので入門証と従魔の首飾りを発行させて頂きます!少々お待ち下さい!」
そう言いながら詰所まで若い門兵は走っていく。
コウもそこまで入門証とフェニの首飾りを発行するのにあまり時間は掛からないと思い馬車に持たれつつのんびりと待っているとジャン達が近くに来る。
「コウ。俺達は先に街へ入って宿を探すよ。ゴブリンの時は本当に助かった...ありがとう。またコウが助けて欲しい時が有ったらすぐに助けに行くからな!」
ジャンは先に街へ入るために挨拶をしにきたらしい。
コウが困った時や助けて欲しい時は力になると言い握手をする。
「まぁゴブリンの時は助かったわよ...ありがとう...ってお礼をジャンが言えって言ったから言ってるだけなんだからね!」
サラもゴブリンに関しては助けて貰ったため感謝を述べるが素直にお礼を言えていないがまぁよしとする。
「はいはい2人ともじゃあな。また機会があったらよろしくな」
コウはフェニの頭を撫でながら答えるとジャン達は街の中へ入っていき、人混みの中に消えていく。
「何も持っていないと思っていませんでした。ただ私はコウさんを宿へ案内しますのでお待ちしますよ」
そう言いながらルーカスは御者席で恰幅の良い身体を下ろしゆっくりとしていた。
ルーカスに無駄な時間を過ごしてしまわせているコウとしては正直申し訳ない気持ちになってしまう。
「悪いな...助かる」
「いえいえ、お気になさらず。宿は私の店の隣ですので大丈夫ですよ」
そしてコウは門兵が入門証と首飾りを発行し、渡しに来るまで時間つぶしとしてのんびりルーカスと話をしたりフェニを撫でたりしながら待つのであった。
ここまで見てくださってありがとうございますm(_ _)m
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