第22話

「なるほど君が俺達を助けてくれたんだな。ありがとう」


 男は頭を下げ助けてくれたことに感謝をする。


「おぉっと自己紹介がまだだったな。俺はジャンという。で...隣のムスッとしているのが俺の幼馴染みでもあるサラだ」


 男の名前はジャンと言い見た目は短髪茶髪でガッシリした身体をしており、腰にはある程度の長さの両手剣をぶら下げていた。


 そして横に立っている女はサラというらしく茶髪のボブでムスッとした顔でこちらを見てくる。


 体は華奢であり、こちらも腰にジャンの持っている両手剣よりは細い剣をぶら下げていた。


「もうちょっと早くに助けてくれればジャンは怪我しないで済んだのに...」


「そんなことを言うな助けて貰ったんだぞ」


 助けた貰った割にはまだサラは文句を言っており、ジャンは文句を言ったことに対し少し怒る。


「すまないな...あぁいうやつなんだ気を悪くしたら謝る」


 コウ自身は馬車に乗せてもらうついでにわざわざ助けたのに突っかかれ最初は気が悪かったが、今では特に何も思っておらず、ただいちいち突っ掛かれるだけは面倒だとは思っている。


「いや気にしてないからいちいち謝らなくていいぞ。そんなことよりこの馬車はどこに行くつもりだったんだ?」


「あぁこの馬車はローランという街に向かっていたんだよ。俺とサラは冒険者になるために、たまたま乗せて貰ったんだ」


 ローランという街の名前を聞きコウは何処かで聞いたことあるようなという感じで首を傾げ深い記憶から探る。


 確かハイドが旅立つ前に言っていた過ごしやすい街だとコウは思い出す。

 

「なるほどな。ルーカス、俺も馬車に乗せてくれ護衛はするからどうだ?」


「もちろん大丈夫ですよ。ゴブリンぐらいなら一瞬で倒してしまう方なら是非乗って下さい」


 ルーカスも馬車に乗せるだけで護衛してくれるならありがたいと考えコウを乗せることに了承する。


「そういえばローランにはあとどれくらいで着くんだ?」


 ルーカスに聞くと馬車の奥から白い紙を出して平たい岩の上に置き、魔力をルーカスが込めると白い紙に地図のようなものが浮き出でる。


「ここからローランまで大体ですが半日もしない内に着きますよ。夕方ぐらいでしょうか」


 人類の知恵の塊である馬車は偉大である。もし徒歩だったらどれだけ時間がかかっていたであろうか。


 夕方に着くならば宿を考えなければいけなく街の外で野宿はしてもいいのだが、なるべくここ数日は野宿ばかりなので流石にベッドなどで横になりたい。


「着くのは夕方か...宿を探さないとな。ギルドとかも寄って冒険者にならないといけないしなぁ」


 ローランに着いたとして宿を探す以外にもギルドでの冒険者として登録したりする必要がある。


 またこの世界で初めての街へ行くため街を探索したり食べ物を色々と食べたりしたい気持ちもあるのだ。


「もしよろしければ宿を紹介いたしましょうか?コウさんの手持ちに余裕があるのでしたら空き部屋を確保できますよ」


 先程出した地図を仕舞いながらルーカスはコウに話しかける。


 宿の確保をやってくれるのならばわざわざ探す手間も無くギルドでそのまま直行し冒険者になることができるだろう。


 手持ち自体も旅立つ前に選別としてそれなりに貰っているためかなり余裕があるがそれ自体が無くなるのはあまりよろしくはない。


 とは言え最悪コウは力があるのだから冒険者として活動さえ出来れば直ぐにでも稼ぐことができるだろう。


「ルーカスじゃあ頼んでもいいか?助かる」


「いえいえこれぐらい気にしないで下さい。私これでも顔は広いのですよ。これからお得意様になって頂ければ幸いです」


 ルーカスはコウが将来的に冒険者として成功する可能性が高いと見抜き早めに唾を付けておけばお得意様となるかもしれないと思い行動したのだ。


 コウとしても早い段階で顔の広い商人と繋がりを持てたのは大きい事である。


 普通、商人からこの様に売り込まれる事はまずはない。


 それこそ冒険者として結果を出し自身のランクを上げてからならば商人から売り込んでくる事はあるだろう。


 だがコウは商人からお得意様になって欲しいと売り込まれたのだ。


 商人が売り込んで来たのも2つほど理由がある。


 1つはコウの年齢でまずゴブリンを一瞬で纏めて倒せる者はごく一部であり、才能がある可能性が高い。


 2つ目は様々な魔道具を持っているということだ。


 収納の指輪やサンクチュアリ、そして商人の目からすると外套も良いものだと見抜いていた。


 そして収納の指輪が持っているのならばまだ魔道具を収納の指輪の中に入れているだろうと予想ができる。


 しかもこの様に貴重な魔道具を持っている子供はそうそうおらず貴族の子供でも持っていないだろう。


 それらを考えた上でルーカスは少しでも恩を売り自身を売り込んできたのだ。


 そんな色々とルーカスが思考を巡らせているがコウとしてはラッキーぐらいとしか考えていないのである。


「では馬車も準備出来ましたのでそろそろ出発させて頂いても宜しいでしょうか?」


 馬も先程よりかは落ち着きゆっくりと馬の上にルーカスは跨り何時でも主発できると話す。


 此方もゴブリンの討伐証明に必要な耳や魔石をジャンとサラが回収しており、何時でも出発できる準備は出来ていた。


「じゃあ街までよろしく頼む」


 コウ達も馬車の荷台に乗り込みルーカスに出発しても良いと返事するとガラガラと馬車は音を立てゆっくりと進み出すのであった...。



ここまで見てくださってありがとうございますm(_ _)m

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