第21話
あれからコウは1時間ほど歩き大きな草原の丘を超えると少し離れた場所に細い道のようなものが確認できた。
「おっ?もしかして道か?」
走って近寄ってみると横幅10mぐらいの道を見つけ、更には馬車が通った事のあるような痕跡もあり、コウはようやく人が通るような道を見つけたことに喜ぶ。
「よし...やっと道だ。うーんそうだなフェニはどっちに行きたい?」
判断をフェニに任せると最初は左右にえっちおっちらと歩き迷っていたが最終的に右のほうに少しだけ歩きすぐ止まり小さな羽をバサバサとする。
「間違ってても気にしないから大丈夫だぞ。どうせ俺もわかんないしな」
たとえ自分が目的とした場所につかなくてもいいとフェニに伝えた。
実際コウは何処かに着けば良いという考え程度なのだ。
フェニはコウの言葉を聞き右へ行く道をぴょんぴょん跳ねながら嬉しそうに進んでいく。
「何が嬉しいのか...」
そしてそのままコウはフェニと一緒に幅の広い道をゆったりと歩いて行ったのであった...。
◾️
どこに続くか分からない道を2時間ほど歩いただろうか。
周りの草原は変わらないのだが少しだけ道の横に大きな岩などがあることが増えてきた。
フェニも肩から降りのんびりとコウの横を歩いており、まるで田舎を散歩するような感じだ。
ふと後ろから小さなガラガラという音が響き渡りコウとフェニは後ろを振り返ると自分達が歩いてきた方向から馬車が来るのを確認できた。
「おっ...馬車か」
乗せてくれないかなと思いながらのんびり歩いていると横をガラガラと大きな音を立てながら過ぎ去っていく。
荷台には冒険者の様な見た目をした10代ぐらいの男女が2名乗っているのが見え、御者は恰幅の良いまるで商人のような格好をした男性だった。
荷台に乗っている女はこちらに気づいたようで相方の男に話しかけこちらに指を向け談笑しているのが見えた。
「残念。というかなんなんだあいつら人を見世物みたいに...まぁいいや」
もしかしたら止まって乗せてくれないかという淡い希望があったのだが、そのまま進む馬車を見て残念と思いながら歩く。
そして先程横切った馬車が豆粒ぐらいの大きさになるまで離れるが途中で停止するのが見え、よく見てみるとゴブリン8匹ほどに囲まれており、馬が前足を上げ仰け反っている。
荷台から10代ぐらいの男女が出てきてゴブリンと戦っているが人数差により戦況は不利な様だ。
「ん〜助けるか。もしかしたら馬車に乗って楽できるかもだし」
コウは走り急いで向かうと戦っていた男が背後にいるゴブリンに攻撃されたらしく背中に傷を負って倒れていており、ゴブリンがとどめを刺そうとする。
「水球!」
ゴブリンが男にとどめを刺そうとする瞬間にコウの放った魔法がギリギリ間に合いゴブリンは近くにある岩まで吹き飛ばされ動かなくなる。
「ふぅ...間に合ったな」
周囲にまだ7匹ゴブリンがおり、そのうちの3匹は女の方へ向かっている。
そして残りの4匹でコウを止め時間を稼ぐつもりのようだ。
「なるほどな。女を攫うのに時間をお前らで作ろうってやつか」
サンクチュアリに魔力を流し普段使う大きさにした瞬間にギィ!と大きな声を上げながら同じタイミングでゴブリン4匹が前から飛び掛かってくる。
「邪魔だ」
コウはサンクチュアリを横薙ぎに振るうと飛び掛かってきた4匹のゴブリンの胴と腰が空中で真っ二つに分かれ地面に落ちる。
次に女の方に向かっているゴブリンに向かって水球を3つ作り出し飛ばすと吸い込まれるようにゴブリンに当たって吹き飛んだ。
「とりあえずは終わりだな。おい大丈夫か?」
コウは蹲っている女や倒れている男そして商人に話しかける。
「大丈夫なわけないでしょ!ジャンが倒れてるのよ!」
わざわざ助けたのに騒ぎ立て目の前で涙をためながらコウに怒りをぶつけられるがコウは面倒くさそうに溜息をつく。
正直に言って善意で助けたのに何故こんな仕打ちを受けないといけないのだろうかとも思ってしまう。
「あーわかったわかった助ければいいんだろ助ければ」
これ以上騒がれるのもメンドだと思い、適当にあしらいながらコウは倒れている男に近づき収納の指輪からハイドに貰ったポーションを取り出し男の背中に振りかける。
すると傷があった場所の肉が盛り上がってみるみると塞がりまるで何もなかったように傷が無くなった。
正直肉が盛り上がるのはちょっとだけ気持ち悪かったのはここだけの話。
「初めて使ったけど綺麗に傷が塞がるもんだな。これが普通なのかはわからんなハイドから貰ったやつだし」
とはいえ初めて使ったポーションの効果が予想以上に良くそれなりに驚くがハイドから貰った物なので良い品質の物なのでは?と思う。
「ありがとうございます。私はルーカスと申します。あのままでしたら全員生きては帰れなかっでしょう。ところであのポーションはかなり品質の良い物では?どこで仕入れたのか教えて頂きたいのです。またその指輪はどこで手に入れたのでしょうか?」
恰幅の良い男性はルーカスと名乗り素直にお礼を言い頭を下げると同時に商人として商人魂に火がついたのかコウの使ったポーションの出所を聞いたり指輪の手に入れた経緯を弾丸トークで聞いてきた。
「いやポーションは知り合いから貰ったやつだが...というかやっぱりいいやつなのか...指輪も残念ながら貰い物だ」
「そうですか...知り合いの方ですか。ではその知り合いの方を紹介して頂くことはダメでしょうか?」
商人はどうやらハイドを紹介して欲しいようだが、ハイドは死の森の中で隠居しているだろうし居場所を拡散される可能性があるのはハイドの迷惑になると思いコウは首を横に振る。
「残念です...。おや?倒れていた男性が目を覚ましましたね」
背中をさすりながら男はゆっくりと起き上がった。
「うっ...いてて...さっき後ろからやられたような...あっ!そういえばサラは!?ゴブリンに捕まってないか!?」
さっきあったことを思い出し慌てて周囲を見渡し近くに相方の女がいることを確認し安心したようだ。
そして先程まで騒ぎ文句を言っていた女は倒れていた男に向かって走りタックルするように抱きつき安堵の涙を流す。
「よかったぁ...よかったよぉ...死んじゃったかと思ったよぉ...」
「馬鹿言うな。お前が無事でよかった。ゴブリンの苗床にされず本当に安心した」
目の前で甘々な空間を出されコウは溜息をつき肩に乗っているフェニもピィ〜と溜息をつくような鳴き声を出すのであった。
ここまで見てくださってありがとうございますm(_ _)m
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます