第20話
夜が明け辺りが少し薄暗くなってきたが森の中は光が遮られる場所が多くまだ暗い。
木に寄りかかりながらコウは仮眠をしていたら耳元でいきなりキュイキュイと雛鳥の鳴き声が聞こえてくる。
眠たい目を擦り肩を見てみると雛が肩に乗っており、ご飯をくれと言うような感じでこちらを見つめていた。
「ん...あぁ...ご飯か今出すからちょっと待ってろよ」
そう言いながら木の皿に果物を置き擦り潰して食べやすくしようとすると雛がそのままの果物を突いて食べ始める。
「食べて大丈夫なのか?いやまぁ食べれるなら手間が省けるからいいんだが」
隣で果物を突いて食べている雛を見ながらコウも朝食の準備をする。
収納の指輪からパンとハムを出し雛と共に死の森という危険な場所で優雅な朝食を食べたのであった。
■
朝食も終わりまた死の森を抜ける準備も終わった。
「よし準備も出来たしそろそろ行くぞ〜雛...そういえばお前名前まだ決めてないな」
コウは雛を手の上に乗せ喋りかけると乗っている雛は首を傾げる。
「う〜ん名前かぁ...金色...鳥...何も浮かばないな」
これから一緒に仲良くやっていく相棒のため良い名前をつけてあげたいとコウは思っているのだが一向に思いつかない。
「一緒に長く生きてきたいしなぁ...あっ!フェニはどうだ?フェニックスから頭を取っただけだけど...ダメかフェニ?」
フェニと呼ぶと雛がキュイ!と鳴き手の上で軽くステップを踏みながら喜ぶ姿が見える。
「決まりだな。これからよろしく頼むぞフェニ」
名前も決まりフェニは満足そうに手のひらから移動しコウの肩に乗った。
コウも肩にフェニが乗ったのを確認したら水の側に寄り、昨日と同じように湖を凍らせ道を作って反対岸まで凍ったのを確認したら次に足で歩けるかどうかを確認し氷の上を歩き出す。
「あとの2/3を頑張るか。少し走るからフェニはしっかり掴まってろよ?」
肩に乗っているフェニは足に力を込めるがコウにしてみれば隠蔽の外套の上から力を込められているため痛みを感じず軽く掴まれている程度だろう。
こうして再び1人と1匹は死の森を抜けるために進んでいくのであった。
■
あれからコウは死の森をもう一晩フェニと過ごし無事にあと少しで死の森を抜ける場所まできた。
周りの景色も前ほど暗くも無く足場も歩きやすくなっており、気分も足取りも軽い。
「あ〜長かったな。でももう少しで森を抜けるしフェニ頑張るぞ」
頑張ると言ったもののフェニは肩に乗っているだけなのだがキュイ!と大きな声で返事をする。
暫く走り続けると遂に森から解放され目の前には足首ぐらいまで草が生えている草原が現れた。
まるで巨大な緑の絨毯のようであり、前にいた日本では見られないような光景で海外でも見られるとこは少ないだろう。
人工物が無いため風が吹くとかなり心地よい風が吹き抜けて太陽も丁度良い日差しのため眠気を誘う。
「ん〜やっと出られたな。久々に別の光景だから新鮮だな」
コウは背を伸ばし身体のコリや筋肉をほぐし次に目指す場所を考えてみる。
ここから少し離れた場所に街があり、遠くまで行くとアルトマード王国の王都があるとハイドから聞いていた。
王都も興味をかなりそそられるがここから更に遠くとなると少し面倒であり、出来れば馬車などで移動したい。
「とりあえず道を探さないとな道沿いに行けば馬車か何か通るだろうし何処かに着くだろ」
とりあえず道を探す事にコウは決め草原の中をのんびりと歩いていくと目の前に以前自分が殺した事のあるゴブリンが2匹ほど草原をウロウロしていた。
(無視してもいいんだがなぁ...ただ殺しから逃げてもなんも変わらないし...)
コウは目の前のゴブリンを自分の意思で殺意を持って殺すことを決意する。
手に汗を滲ませブレスレットに魔力を込めると使い慣れた武器サンクチュアリにへと変化した。
目の前のゴブリンは背後にいるコウに気づかず目の前でギィギィと話し合っておりいつでも殺せる状態だ。
フェニを近くの大きな石の上に待機させ、そしてコウは一気にゴブリンの背後に近づきサンクチュアリを横薙ぎに振り払う。
上半身と下半身が2つに分かれゴブリンも何がおきたのかわからず白目を剥き絶命する。
周囲に血の匂いが充満し、臓物が散らばっているのを見ると嫌悪感を覚えコウは顔を顰めた。
コウはゴブリンの討伐証明として上半身に近づき頭にある耳をそぎ落とし収納の指輪に入れる。
また心臓部の近くに魔石もあるのだがわざわざ胸を切り裂いて汚れるのが嫌だと思いコウはそのまま放置することにした。
そして近くの地面に水魔法で攻撃し穴を開けそこにゴブリンの死骸をいれて埋葬し一息つく。
「ふぅ...」
不意打ちとは言え初めての外で戦闘をしたコウは疲れたような表情をしてため息をつく。
別に肉体的には疲れてはいないが精神的にかなり疲れたのだろう。
気分を切り替えるために場所を移動して血の匂いがする場所ではなく新鮮で綺麗な空気を吸い込む。
「吐くことはなくなったな。慣れるのもなんとも言えないが...よし道を探すか」
前みたいに吐く事はなくなったが慣れすぎるのも良くないなと思いつつコウは街へ続く道を探すのであった。
ここまで見てくださってありがとうございますm(_ _)m
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