第19話

 通称死の森そこに1人青い髪の少年コウがのんびりとまるで散歩をするように歩いていた。


 この森は昼間でも薄っすらと暗く木々の隙間から時々光が溢れでるような場所だ。


 かなり幻想的な風景であり、似たような光景は日本にある屋久島が近しいだろうか。


 場所自体かなり危険な場所で高ランクの冒険者も近寄らないのだがコウは自身の外套のおかげで魔物に襲われず歩けている。


 最悪襲われても対処できるような力はあるが襲われないならそれに越したことはないのだ。


「はぁ何もないな。同じ風景が続くし暇だな」


 最初は見たことない植物や新しい場所などでワクワクしながら歩いていたのだがずっと似たような物を見続けていると流石のコウも飽きてくる。


 自身の知らない植物についてはあまり触らないようにしている。理由は毒などがあった場合は自分で対処できないと考えたからだ。


 とはいえ実際コウの体は高性能に作られており、毒などあまり効かないのだがハイドからは伝えられてない。


 大体夕方を過ぎ夜に変わりつつある頃だろうかしばらく歩いていると大きな湖に辿り着きコウは少し休憩すると考える。


「ここがハイドの言っていた湖か結構歩いたんだな」


 ハイドから湖の場所に着いたら1/3は森を抜けていると伝えられていた。

 

 湖の周りには見た事ない魔物がそれなりに水を飲みに来ており、かなり近付けば気付かれるだろうが離れている為コウに気付くものはいない。


 水の中を見てみるとかなり透き通っていて透明度が高く綺麗な水だという事も分かる。


 湖の中心には太い木が一本だけ生えた小島があり、魔物も中心まで泳いでわざわざ行ってない様だ。


「休憩でもしようと思ったけど水場だから魔物がそれなりにいるな」


 コウも休憩をしようと考えたがここは水場のためこの場で休憩や寝たりしたら魔物に襲われる可能性が高いと思い踏み止まる。


 またランタンの使用も考えたが手持ちに魔石が無いのを思い出しため息をつく。


 暫く休憩する場所を考えていると目の前の小島がコウの目に入る。


 あそこの島まで行けたら襲われる可能性はかなり低くなるだろう。


 コウは水辺に近づき手を冷たい水の中に入れ、魔力を流し込むと湖の小島まで少しずつ凍っていく。


 ある程度凍ったら道に足を出し乗れるかどうかを確認しコウは問題なく歩けると判断する。


「よしこれで小島までいけるな。やっと休憩できそうだ」


 小島に辿り着くと他の魔物が入ってこないように凍った道を水に戻していった。


「はぁ〜長かったなぁご飯でも食べるか」


 一本だけ生えている太い木に背を掛け収納の指輪から出来立ての料理を出す。


 収納の指輪に入れたものは入れた状態で保存されるため出来立ての料理や冷たい飲み物がいつでも食べたり飲んだりできる。


「収納の指輪はかなり便利だ。ハイドに感謝だな」


 そんな事を言いながら目の前に出した焼いた串肉やパンそして冷たい水を飲み食いしていると何処からかコツンコツンと何かを突く音が聞こえてきた。


 音がする方向は木の上からであり食事の途中なのだが、もし危険な魔物ならば襲われる前に潰しておくかと考える。


「よっ...と」


 食事を中断しある程度登れそうな場所から木へ登り音のする方向へこっそりと近づいていくとそこには3mほどの大きさで出来た鳥の巣の様なものがあり、中央には金色の卵がコツコツと音を鳴らし揺れていた。


 金色の卵は鶏の卵よりは一回り大きいぐらいのサイズであり、卵は殆どヒビが入って時折、黄色の嘴の先端が見える。


 どうやら魔物の雛が孵る寸前であったようだ。


 巣の中にはこの金色の卵以外には無く既に孵った後の割れた卵の破片が散らばっており、他の雛の姿や親鳥の姿も無い。


 もしかしたら孵化が遅れたため見捨てられたのだろうか。


 少し見ていると卵の殻が半分に割れ、濡れた金色の羽毛の雛が孵った。


 大きさとしては大体、鶏の雛と同じぐらいだろうか。


「おぉ...初めて孵化の瞬間を見たな」


 キュー!キュー!と鳴いており、周囲を見渡してから声に反応したのかこちらを見てくる。


「保護...した方がいいよな...?どうするんだろうか生まれたばかりの鳥とかは温めた方がいいんだっけか?飼ったことないからわからんぞ」


 コウは急いで近寄り魔法で水を出し自分の体温より少し高いぐらいの温度にし雛を包む。


 雛を保護していると鳴きながらジッとこちらを見つめてくる。


「あぁー餌か...果物をそのままも無理だろうし擦ったものなら大丈夫か?」


 収納の指輪から色々な果実と綺麗なナイフを出し木の器に擦っていく。


「なるべく食べやすいようにしないとな」


 ある程度擦ったものを指ですくい雛の口元へ持っていき食べさせる。


 どうやら口に合ったらしくそれなりの量を食べると眠るように目をつぶってしまう。


 どれくらいの時間が流れただろうかしばらくの間、雛が鳴いたら餌をやるを繰り返し辺りはすっかり真っ暗になっていた。


 雛から少し離れて様子を見ていると二本足で立ちこちらに近づいてくる。


「おぉ...もう歩けるのか。というか鳥ってこんな早く歩けるのか?魔物だからか?まぁいいか」


 魔物の成長はそれなりに早くゴブリンならば大体3〜5日で大人に近い姿になる。


 全ての魔物の成長が早いわけではないがこの雛もそれなりに早いのだろう。


「とりあえず餌をいっぱい置いていくから頑張って生きろよ?じゃあな」


 そういいながら巣の中心に木でできた皿を置き、そこにそれなりの量の餌を置く。


 コウは木から降りて最初に休憩していた場所にいると上から先程の雛の鳴き声が聞こえてくる。


「はぁ...様子を見に行くか」


 木を再度登り巣の様子を伺うと雛が急いでこちらに向かってくる。


 雛はコウの靴の上に登りそこで満足そうに寛ぐ。


「あ〜...これって刷り込みってやつか。しまったなぁ」


 頭をぽりぽりと掻きながらこの雛をどうするかを考える。


 そして靴の上で幸せそうに目を瞑りすやすやと眠る雛を見てため息をつく。


「はぁ...手を出した俺が悪いか...。よし!お前も一緒にくるか?」


 旅は道連れ世は情け。雛に一緒にくるかと声を掛けると目を開きまるで言葉を理解しているような感じで鳴き返事をする。


 靴の上に乗っている雛を肩に乗せ巣に置いていた餌などを回収してから木を降りていく。


 こうしてコウにとって人間ではないが初めての仲間ができた瞬間であった...。



ここまで見てくださってありがとうございますm(_ _)m

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