第28話

 どれだけ走っただろうか?


 空を見ると日は真上まで来ており、丁度昼頃だろうそんなことを思いながら走っていると途中で分かれ道に到着する。


 以前、コウが来た道は右からとなるが、実際死の森へ行くには左の道に行けば直ぐに到着とサーラから話を聞いていた。


「これが前もって聞いていた分かれ道か...左に行けばいいんだっけか」


 左の道はあまり死の森へ行く人がいないせいで道は全くと言っていいほど整備されておらず、雑草が生茂り、足場はガタガタとなっていた。


 そのまま整備されていない道へ進むと、少し丘になっており、そこを超えると懐かしいとは言えないが大きな森が広がっていた。


 森の境目にはゴブリンが3匹ほどウロウロしており、前回見たゴブリンよりも装備は充実しているらしく、手斧や錆びた剣を持っているのが見える。


「取り敢えず少しでも討伐して稼がないとな」


 依頼書には多く討伐するほど報酬は増えていくと書いてあった。


 実際ゴブリンの討伐をする者は少ない。


 理由としては討伐したところで素材としての旨味もなく、数が多ければ多いほど連携して襲ってくるため、面倒であるからだ。


 かと言って放置していたら繁殖のペースが早いため、地味に厄介であり、討伐しないわけにはいかないのだが...。


「よし...フェニはまだ戦闘に参加できないと思うからまた外套の中に入ってろ」


 フェニは先ほどと同じように外套の中に入り込む。


 隠密の外套のフードを被り、魔力を通し、ゆっくりと3匹のゴブリンとの距離を詰めていく。


 ある程度距離が近くなったらコウは水球を3つほど浮かべ一直線に3匹のゴブリンへと放った。


「ギィ!」


 1匹が水球の飛んでくるのに反応したが、時既に遅し。


 全てのゴブリンの胴体へ直撃すると、高威力のためか一瞬で絶命してしまう。


 ゴブリンの胴体はコウの魔法でバラバラになってしまったが、頭部は無事なようで、絶命したゴブリンに近づき1匹づつ討伐証明の耳をナイフで剥ぎ取っていく。


「とりあえず3匹と...」


 3匹分の討伐証明の耳を剥ぎ取り終わると、後ろから増援のゴブリンが6匹ほど現れた。


 どうやら仲間を殺されたことに怒り心頭なのか、ゴブリン達とは思えないほどの殺気を放ってくる。


「6匹か。少しでも討伐数が増えるのはいいことだ」


 コウは十字架ブレスレットに魔力を流し、サンクチュアリへと変化させると同時にゴブリン達は一斉に襲ってくる。


 ゴブリンはボロボロな盾と錆びた剣を構えた3匹が突撃してきており、その後ろには弓を構えた2匹のゴブリン。


 そして一番後ろのゴブリン1匹は棒きれを持ち魔法を詠唱しようとしているのが見える。


「かなり連携してくるゴブリンだな...でも所詮はゴブリンだな」


 ゴブリンの弓矢が放たれコウはそれを避け突撃してくるゴブリンに向かって走り出す。


 突撃してくるゴブリン3匹をサンクチュアリの横薙ぎ一閃で纏めて胴体から切り飛ばし、次に前を見ると、詠唱が完了したのか一番後ろのゴブリンが火の玉の魔法を飛ばしてくる。


 コウはすぐに水球を出し火の玉とぶつけ相殺すると、弓を構えていたゴブリンと魔法を詠唱していたゴブリンは前衛が一瞬でやられてしまったのと魔法が通じなかったことについて動揺しているのか動きがピタリと止まっている。


 コウは動きが止まっていることを見逃すわけもなく、距離を更に詰め、残りのゴブリン達をサンクチュアリで1匹づつ首を切り飛ばしていく。


 そして何箇所か森にある草むらからガサガサと音がすると、ゴブリンが死の森の奥へと逃げていくのが見えた。


「何匹か隠れていたのを逃したか...。まぁいいか取り敢えずさっさと耳を取らないとな。フェニ!もう大丈夫だ出てきてもいいぞ」


 外套の中からフェニはひょっこりと顔を出し外に出るとコウの周囲をパタパタと飛ぶ。


 いつの間にか血の匂いが周囲に充満しており、もしかしたら他の魔物が寄ってくるかもしれないため、コウは急いでゴブリンの頭部から耳を剥ぎ取っていく。


 全ての耳を剥ぎ取りゴブリンの死体はそのままに放置して別の場所から離れて見ていると、どこからともなくズリズリとスライム達が寄ってきた。


 基本的にスライムも魔物だがこちらからはあまり狩ることは推奨されていない。


 理由としては死骸を食べてくれる森の掃除屋でもあり、街から出るゴミや汚水を掃除してくれるので、ほほ無害と言ってもいい魔物である。


 また人も襲わないためスライムを狩るのはあまり推奨されていないのだ。


「うーん...ゴブリンは餌としてあんま美味しそうじゃないもんなぁ...あとはまだ他のゴブリンとかくると思ったんだが...まぁいいや」


 死の森の奥へと逃げていったゴブリン達が更に増援を連れて戻ってくるのにコウは期待したのだが、一向に戻ってくる気配はない。


 コウは立ち上がり背伸びをすると、フェニは少し離れた位置で遊んでいたが、街へ戻ろうと準備しているのに気が付き、外套の中へと入っていく。


「よし帰るか」


 コウはこれ以上ここに居ても意味ないと思い、元の道を走りながら途中でゴブリンが出ないかなと思いつつ、ギルドへ帰るのであった...。



ここまで見てくださってありがとうございますm(_ _)m

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