第16話
深い眠りから目覚め昨日のことをすぐに思い出す。
肉を切り裂き骨を砕く感触そして自分の足元に殺した相手の頭が転がってくるのが浮かんできてベッドから起き上がる気力が湧かない。
「嫌な寝覚めだ」
コウは昨日自分の部屋に帰った後は食欲も湧かなく、夜ご飯も食べずにいつの間にか寝てしまったようだ。
ベッドの上で横になっているとグーっと呑気な音が鳴る。
昨日吐いた後は夜ご飯も食べず寝てしまったため自分のお腹は空腹だと我儘な主張してきた。
少し溜息をこぼしながら自分の部屋を出ていつもの食事をする場所に向かうとハイドが台所に立ち朝ごはんを作っているのが見える。
「おはよう。よく眠れたかな?」
慣れた手付きで料理をしながら話しかけてきた。
「おかげでぐっすりだよ。昨日のことは夢であってほしかったけどな」
気分を紛らわせるため冗談交じり答え席に座り机の上に置いてあるハイドが温めてくれたであろうホットミルクを飲む。
空っぽの胃に優しい温かいミルクがじわりと浸透してくのがわかる。
ホットミルクを飲み終えたら皿に盛られた目玉焼きにベーコンと柔らかそうなパンをハイドが持ってきて机の上に並べていく。
「昨日は悪いことをしたね...でもあれはコウのためでもあるし理解はしてほしいんだ」
昨日のことはハイドの優しさでもあり、厳しさでもあった。
今後コウがこの今住んでいる場所から離れ1人で生きていく際に必要なことであり、また冒険者として生きていたら早めにぶち当たる最初の壁でもあったのだ。
ハイドとしてはコウがこの壁に当たるのを予測していたために自分が一緒に居られるうちに経験をさせておきたかったとのことだろう。
「自分のためになることぐらいわかってる。でも心の準備ができてなかったんだよ。次は大丈夫だ」
コウは次は大丈夫だと言ったが実際にはハイドに対して意地を張っただけであり、内心はまたあの嫌な感触や血の匂いを嗅ぎたくはないと思っていた。
しかし冒険者になるということは必ず通る道であり、覚悟を決めないといけないとコウはホットミルクを飲んでいた最中考える。
ハイドもコウが強がって意地を張っているのに感づいているのかハイドの顔に少し笑みが溢れてしまう。
コウはハイドの顔から笑みが溢れたの一瞬だが見てしまい少し腹が立ったがスルーしてハイドが作ってくれた朝食を食べ始めるのであった。
■
朝食も食べ終わり自分の部屋でゆっくりしているとドアから軽くノックの音が2回ほど聞こえてくる。
「入っても大丈夫かい?」
コウはベッドの上で横になっていた状態から体を起こしハイドに入っても大丈夫だと伝えた。
ドアが開きハイドが中に入ってくる。
ハイドの両手には紅茶のような飲み物とお菓子を持っており、近くの机の上に置き近くにある椅子へと座った。
「コウとお茶でもしようかと思ってね。あとはコウの今後について話していこうかなと」
ハイドが今後についてということはここを離れ1人で生きていくことについてだろう。
既にコウがこの異世界に来てから大体3ヶ月半ほどの時が流れだいぶこの場所での生活にも慣れてきた。
当初は早くこんな場所から離れて安全な場所で暮らしたいと考えていたが今となってはここは結界が張られており、暇ではあるが危険がなく平和なので居心地の良い場所と考えが変わっていた。
だがハイドから外の世界を体験しろと言われた後は確かにこの異世界に来たならばこの場所で一生を終えるよりかは色んな場所で色んな体験をしてみたいという考えも湧いてきた。
「コウはいつぐらいにここを旅立ち世界を見て回りたいのかい?」
ハイドに聞かれ少し考える。
明日?明後日?1週間後?それとも何ヶ月後だろうかぱっと答えが出ない。
コウは少し考え明日の昼にここを出る決意をする。
なぜこの場所を明日の昼に出ようと思ったのには2つの理由があった。
1つは純粋に早く世界を見て回りたいということ。
2つ目はこれ以上この場所に居たらコウはこの先ずっとハイドに甘えてこの場所にいることになるろ思ったからだ。
「明日の昼にでもここを出てみようかな」
そう答えるとハイドは明日の昼にここを出るとは思っていなかったらしく少し驚いたような顔をする。
「えらく急だね。コウのことだから1週間後とかにすると思ってたよ。明日の昼に出るんだったら色々と渡すものがあるんだ準備しなきゃね」
そんな事を言いながらハイドはコウの部屋にある羽ペンと髪を使い色々と渡す物をリストアップしていく。
コウは明日に渡されるものを楽しみにしたいために見ないよう視線を逸らす。
そしてコウは1つだけハイドにしてほしいことがあったためお願いをする。
「1つだけお願いがあるんだがいいか?」
初めてコウにお願いがあると言われハイドは満面の笑みでその願いを聞くのであった...。
ここまで見てくださってありがとうございますm(_ _)m
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