第4話

「とりあえずはそこの椅子に座ると良い。すぐにご飯を作ろうお腹が空いているだろう?」


 そう言いながら男は台所の下にある収納場所から二人分の料理として、丁度良い量のベーコンや卵を取り出していく。


 そして男それらの食材を台所の上に置いていき、次に竈の上へフライパンを置くと、竈の下に薪を入れ同時に手の指先から火が出てきて一瞬で薪へと火つき燃え上がる。


「はぁ...?」


 コウは信じれないものを見たような感じで腑抜けたような声が出てしまった。


 日本にいた頃では、まずありえない光景。


 手の指先から炎を出すという行為はテレビの手品などでは見たことあるが実際には男の手のひらには種も仕掛けも見当たらない。


「魔法を見たこと無いのかい?君の住んでいた場所には魔法使える者はいなかったのかな?」


 男はコウが驚いているのを見て笑いコウはそんな笑う男を見て、少しだけムッとした顔になってしまう。


 とはいえ魔法なんてものは空想上のものだったのでテレビで見たようなマジックか何かにしか見えない。


「おぉっと そんなムッとした顔をしないでくれ。可愛い顔が台無しだぞ」


 そんなことを言いながらフライパンの上に油を敷きベーコンと卵を乗っけて焼きながら机の上に皿を置く。


 パチパチと音を鳴らしながらいい匂いが鼻腔をくすぐり、すぐにお腹が空いているのにコウは気がついた。


 更に男は台所の下から細長いパンを出しナイフで切り分けると、机の上にある皿に乗せそして今焼いたばかりのベーコンと卵も隣に置く。


 焼いたベーコンの油が染み出ると同じ皿に乗っている隣のパンへベーコンの油が侵食していく。


「さぁ出来たぞ。鏡の前に立ってないで座ってご飯でも食べよう」


 男は椅子に座りながら言い、机に置いてあった水差しから2つのガラスで出来た模様のないコップへ水を注いでいく。


「わかった。食べながらでもまだまだ質問させてもらうぞ」


 コウも食事をすることに関しては賛成なため、とりあえずは椅子の上へと座るのであった...。


 湯気を出しながらできたての料理が目の前に置いてあり、香辛料などを使っていたような素振りはなかったのだが、匂いはかなり良く食欲を誘う。


 口の中からは唾液が多く分泌されており、早く食わせろと言わんばかりである。


「それで...何を聞きたいんだい?さっきの質問には全部答えたはずだが」


 コウが喋りやすいよう口の中に食べ物がない時、男は話しを切り出していく。


「俺の居た場所では魔法も死の森なんてのも無いし魂とかも不確かな存在だった。それがここではあるとか言われても理解が出来ない」


 水で口の中に残ったものを胃の中に押し流しながら、先程コウが男に質問した答えの内容自体が理解出来ないとコウは言う。


 先程は色々なことがあり、取り乱してしまっていたが今はだいぶ冷静になっており、コウは状況を整理すべく会話を進めていく。


「ふむ...ではコウはもしかしたら先程言っていた"日本"という場所から呼び出されたのかな?そこはどこだろう?まだ死の森も深層は未開拓の場所も多いし死の森の先にそういう地域もあるのかもしれないね」


 男は顎に手を置き考えながらコウに言い放つと、目の前の男に言われたことに対して考える。


 日本という場所を知らない...死の森...魔法...自分の体の変化それらは日本ではありえない。いや...むしろ地球ではありえないことだ。


 しばらくの間、食事の手を止めて考えていると1つの答えにたどり着く...。


「異世界...」


 そう呟いたコウに目の前の考えていた男はピクリと耳を動かし反応する。


「異世界か面白いことを言うね。確かに君の住んでいた場所は聞いたこともないし言語も訳のわからない事を言っていた。魔導書も訳のわからないものだから可能性は十分にあるかもしれないね」


 男は普通ではありえない事を可能性があると言ったのだ。


 日本...いや地球から転移か転生かはわからないが、魔導書という謎の物の力でコウはこの世界へ引っ張られやってきたのだと。


 もしかしたらあの海の底でぼんやりと不思議な光のせいなのかもしれない。


「嘘だろ?じゃあもうここで生きていくしか無いのか?この訳のわからない世界で...」


 平和でのんびりとした日常生活が壊れてしまったことにコウは絶望していく。


 いきなり別の世界へ呼び出され、誰も知らないこの土地で生きていくということに...。


 もし帰れるのならば帰って元の生活に戻りたいのだが、前の世界で死んでいるのならば自分の元あった肉体は既に海の藻屑だろう。


「まぁまぁコウがこれから生きていくための支援は全力でするつもりだ。君は私の息子だからね」


 食事の終わった男は真面目な顔をしてコウを私の息子と言い、全力で支援をすると...。


 全ての元凶である男の息子というのは少し腹立つが現状、頼れるのはこの男しかいなかったので妥協するしか無い。


 というか自分が生きていくのに他の方法は無いだろう。


「コウの食事が終わったら色々な事を教えていこうか。例えば魔法やこの死の森という場所。あとはコウも将来的には街に行くだろうから一般的な知識だね」


 男は食事の終わった皿を下げ洗いながら今後の予定を話してくるのでコウはまだ皿の上に残っているパンやベーコンを食べながらながら今後の予定について考えていくのであった...。



ここまで見てくださってありがとうございますm(_ _)m

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