第7話 Birthday act 3
あぁ……とうとう幻聴ならぬ幻影まで見るようになるとか――自分で思っている以上に参ってるって事か……な。
A駅から出てすぐに声をかけられた人に、どうやら私は自分の願望を張り付けてしまったらしい。
我ながら、相当ヤバいやつだと自覚するには十分な案件だったと思う。
私は幻を振り払おうと、声をかえてきた人を無視して駐輪所の足を向けた。
「お~い! お嬢さん! 蒸し暑い中待ってたのに、リアクション無しは寂しいんですけど?」
お嬢さんとは一体誰の事ですか?
私は暑さと寂しさで幻を見ているような残念な女であって、お嬢さんなんて呼ばれるような、立派な女ではありませんよ。
「はぁ……人違いです――よ!?」
私は声をかけてきた人に、足を止めて後ろを横目で見ながらそう言った時、私の後ろにいる人が誰なのか知った。
「――間宮さん」
「誰だと思ってたんだよ、ったく」
こんなご都合主義的な展開があるだろうか。
ただでさえ、今日は愛菜達に誕生日を祝って貰って幸せな一日だったというのに、その上、間宮さんに祝って貰いたいなんて、贅沢極まりない事を考えている時に、本当に本人が現れるなんて事ってあるの!?
「だって、ドラマじゃないんだから、こんな偶然なんてないって思って」
「これは偶然じゃないよ」
「……え?」
「駐輪所に瑞樹の自転車が停まってたから、ここにいれば会えるかなって思って待ってたから、偶然じゃないんだ」
――待ってた?間宮さんが私を?
ご都合主義の妄想が現実になり、小躍りして喜びを表したくなったけど、不意に良からぬ考えが頭を巡り、咄嗟にグッと堪えた。
以前、摩耶が言っていた事を思い出したからだ。
好きだという気持ちを全面に出した方が、恋愛では負けを意味して、少し突き放す感じで追いかけて主導権を握れば勝利!……だっけ?
私は摩耶の名言を実行に移す事にした。
ゴクリと喉を鳴らして、クールな女の装い戦闘準備を整えた私は、自慢のダークブラウンの髪を手でサッと背中に払う仕草を見せて、女のスイッチをONにする。
「待ってたって、そんな約束してたっけ?」
うん。いい感じじゃない?
本当は今すぐにでも、間宮さんの厚い胸板に顔を埋めてグリグリしたいけど……。
「ははっ、まぁそうなんだけどさ。ちょっと久しぶりな感じするな――合宿からそんなに経ってないのにな」
苦笑いを浮かべる間宮さん。うん、いつもと違う私に驚いてるな?
「そ、そう? わ、私はそう感じないけど?」
――少し? 私は何年も会ってないくらいだったのに?
「それは寂しいな。ところで瑞樹ってもう晩飯食べたのか?」
「まだだけど――どうして?」
――え?ご、ご飯!?もしかして、ご飯に連れて行ってくれるの? ねぇ!
「そっか。俺もまだなんだけど、一緒にどうだ?」
「ど、どうして? 私達ってもう先生と生徒じゃないんだよね?」
――やった!やったぁ!間宮さんにご飯誘われたぁ!!
「まぁそうなんだけどさ……瑞樹って今日誕生日なんだろ? 駐輪所に自転車が停まってたから、待ってれば会えるとか思ってたんだ。でも
間宮さん……私の誕生日を知っててくれたんだ。
その事実だけで、もうクールな大人の女を演じる事が馬鹿らしくなってきた。
「でも、確かにもう講師と生徒じゃないんだし、馴れ馴れしかったよな――悪い」
「っ!! 違うの! そんな事ない! ちょっと悔しかっただけだから!」
「悔しい? 何で悔しがるんだ?」
「そっ、それはもういいじゃん! それより何で私の誕生日知ってたの?」
「合宿で瑞樹のプロフ見ながら、来月誕生日って話したろ?」
あの時の……何てことない会話を覚えてくれてたんだ。
「そ、そっか。そうなんだ」
「で? どうする? 疲れてるのなら無理に誘うつもりはないけど?」
「ぜんっぜん! 疲れてなんかないよ! 朝起きた時より元気な位だよ!」
「ははっ! なんだそれ。んじゃ駅前のカフェにでも行くか」
「う、うん! あ、その前に親に連絡しておくね」
思いもよらない間宮さんとのお食事デート――のようなもの。
とんあサプライズに嬉しい気持ちはあったけど、それ以上に突然の事に気持ちが追い付いていない私は、軽く眩暈を感じながら震える手でスマホを取り出して、家に連絡をした。
駅前のカフェなんてもう見飽きてる程見てるのに、間宮さんと一緒だと何だかお城に見えてしまう私は、やっぱり相当病気らしい……。
店内に入って案内された窓際の席に着くと。早速メニューからそれぞれの料理と食後の珈琲を注文してから、私は一度落ち着こうと背凭れに体重を預けて深く息を吐いた。
「急に誘って悪かったな。親御さん大丈夫だったか?」
「え? あぁ大丈夫だよ。了解って返信が来ただけだったし」
「それならいいんだけど。それはそうと、デザートはいらなかったのか? 御馳走するんだから遠慮なんかしなくていいんだぞ?」
「ううん! スイーツはいいの。実は愛菜達にお誕生日祝って貰ってランチしたんだけど、その時にサプライズでバースデーケーキを用意してくれてて、大きなケーキ食べちゃってるから、また甘い物食べたら太っちゃうよ」
愛菜達が開いてくれた誕生日会の事を間宮さんに話して、その時にケーキを食べたからと説明すると、間宮さんはうんうんと柔らかく微笑んで頷いてくれた。
間宮さんはビックリする位に、聞き上手なんだと思う。
嫌な表情を全く見せずに、楽しそうに聞いてくれるから、思わず聞いて貰おうとしていた以上の事を、次々に話しちゃうんだよね。
「加藤さん達にお祝いしてもらったのか。良かったじゃん」
「うん! 私8月生まれだから、子供頃から友達に祝って貰った事が殆どなかったから、ホントに嬉しかった」
「でも体型を気にしないといけない様に見えないけどな」
「そんな事ないよ。受験勉強で碌に体動かしてないからね。それに太ったりしたら希に揶揄われちゃうから」
「希って?」
「あぁ、私の妹なんだ」
「へぇ、瑞樹って妹さんがいるのか。その希ちゃんって子も姉に似て美人だったりするんだろ?」
び、美人……軽い冗談で言ってるのは解ってるけど、間宮さんは大人なんだから、自分の言った言葉に責任持って欲しい。
そんな事をサラッと言われたら真に受けちゃうし、調子にのっちゃうんだからね!
頭の中でそうは言ってみても、本音は例え社交辞令だったとしても、間宮さんにそう言われると心底喜んでしまう自分に、苦笑いが漏れてしまう。
暫くして注文していたメニューが運ばれてきて、間宮さんと一緒に食事を始めたんだけど、まだ緊張していたみたいで味が殆ど分からなかった。
これでは楽しめないと思った私は、食後に珈琲の香りを肺いっぱいに吸い込んで、少しでも落ち着こうと努めた。
「合宿の後も、受験勉強は順調なのか?」
「う、うん。まぁまぁって感じかな」
何て色気のない会話なんだろう……私が受験生で間宮さんが元講師なんだから、仕方がないんだけどさ……。
「そういえば訊きたかったんだけど、瑞樹ってどこの大学狙ってるんだ?」
「あれ? 言ってなかったっけ? 第一志望はK大なんだ」
そう答えると、間宮さんが少し驚いたような顔になった……なんでだろ。
「何でK大なんだ?」
「K大で専攻したい学部があって、塚本教授って人の講義が受けたいんだ」
益々間宮さんの目が大きく見開いてる……だから、なんで?
「塚本教授? あの偏屈なおっさんの講義が受けたいのか?」
「あれ? 間宮さん塚本教授の事知ってるの?」
「知ってるというか、言ってなかったと思うけど、俺もK大で塚本教授の講義を受けてたんだよ」
「……へ?……え、えぇ!? 間宮さんってK大だったの!?」
「ははっ! 世間は狭いってね」
「ほんとそれ! ビックリしたよ!」
本当に驚いた。間宮さんが私の目指している大学出身だなんて! あれ?という事は、私がK大に合格出来たら間宮さんが私の先輩になるって事?
――間宮先輩……なんだろう……滅茶苦茶いい響きなんだけど! にへへへ……。
それからはK大中心の話で会話が途切れる事なく盛り上がり、気が付けば時計の針が23時を回っていて周りを見渡すと他の客がいなく、私達だけになっていた。
「おっと! もうこんな時間か。そろそろ帰らないとヤバいだろ」
「……う、うん」
確かにもう帰らないといけない……基本的に門限は煩く言われないけど、今の私は受験生なんだし……でも。
「ん? どうしたんだ?」
「――――」
「瑞樹?」
「――――たくない」
「え?」
「――帰りたくない……なんて……あはは」
「何言ってんだ。そんな事出来るわけないだろ?」
「だよね――でも……だって、今度いつ会えるか分からないだもん」
恥ずかしい!顔から火が出そうだ。
はしたない事言ってるのは……分かってる……んだけど。
やっと会えたのに……こうして誕生日を祝ってくれたのに……またいつ会えるのか分からないなんて……耐えられそうに――ない。
恥ずかしいし、困らせてしまっている事は分かっていて、言いたい事を言った後に逃げる様に視線をテーブルの下に落とした。
「俺からの誕生日のお祝いは、まだ終わったわけじゃないぞ」
え?っと顔を上げた時、間宮さんは薄いケースから多分名刺だと思うんだけど、カード状の紙を一枚取り出して、裏側に何やら書き込んでいる。
何を書いているのか気になったけど、それ以上に誕生日のお祝いはまだ終わっていないと言う間宮さんの言葉の意味が気になり、私は悶々と思考を巡らせた。
「瑞樹」
「え?」
悶々としていると、不意に名前を呼ばれて意識を目の前に戻したら、いつの間にかテーブルの上にラッピングされた長細い小ぶりな箱が置いてあった。
「誕生日おめでとう」
「……え?」
プレゼント――誕生日プレゼント!?
こ、これって誕生日プレゼントでいいんだよね!?
実は、間宮さんの物とかってオチじゃないよね!?
これ、貰っていいんだよね!?
そうは思っても、私は何故か喜びより困惑が割り込んできて、置かれた箱と間宮さんを交互に見ているしか出来なかった。
「瑞樹」
「は、はい!」
多分、箱に手を付けない私の行動が、間宮さんの想像していたリアクションと違ったんだろうな……だって苦笑いしてるんだもん。
「一応俺からの誕生日プレゼントなんだけど、迷惑だったか?」
迷惑!?そ、そうか……私がグズグズしてたから、間宮さんにはそう見えちゃったんだね……。
「ち、違うの……迷惑なわけないよ! まさか間宮さんにお祝いして貰えるだけでも驚いてるのに、その上プレゼントまで貰えるなんて考えた事もなかったから……。ご、ごめんなさい」
「何で謝ってんだよ。まぁ、それなら受け取ってくれるんだな?」
「も、勿論! やっぱり返せって言われても、絶対に返さないから!」
「ははっ! なんだよそれ」
私は照れ臭いのと申し訳ない気持ちを誤魔化す為に、冗談を言って笑った。
何て言うのかな……心臓がバクバクと鳴って苦しいのに、嫌な気分じゃない不思議な感じがする。
少し気持ちが落ち着いたところで、目の前にある箱にそっと触れた。
「ありがとう。ねぇ、開けていい?」
「どうぞ」
ラッピングを丁寧に解いていくと、綺麗なケースが出てきた。
そのケースを慎重に開けて、中身を見た私は手の動きが止めた。
「え? これって……」
ケースの中身は以前腕時計のショップで一目惚れした、間宮さんが愛用しているブランドのレディースモデルだった。
そのショーケースに入っていた時計の値札の額が蘇り、私は咄嗟にケースを間宮さんの前に戻した。
「だ、駄目だよ! いくらなんでも、こんな高価な物貰えない!」
「あれ? 返せって言われても、絶対に返さないんじゃなかったっけ?」
確かに言ったけど、これは貰えない!嬉しいけど貰えないの!
「確かにそう言ったけど、これは駄目! こんなの貰えない!」
「ん~。これが高価って言うけど、これっていくらで売ってるんだ?」
あれ?間宮さんってまだ29歳だよね?ボケるの早過ぎない!?
「へ? 何で値段知らないの? この時計って58000円もするんだよ!? 消費税込みで余裕で6万超えちゃうんだよ!?」
「へ~! これの末端価格って、そんなにするんだな」
ボケた上に不思議トークとか、私の間宮像が壊れていくんだけど……。
「……ごめん。さっきから何言っているのか、解らないんだけど」
もうお年寄りを心配しているような感じになってしまっていると、間宮さんが何かに気が付いたように「あぁ!」と声を上げた。
この「あぁ!」って奇声とかじゃないよね?
「そうだよな。このブランドのメーカーとウチの会社って技術提携してるんだよ。だからウチの社員は、問屋を通さずにメーカーから直接安く買えるんだ」
メーカーと技術提携? 問屋を通さない? どいうこと?
「先方の役員と妙にウマが合ってさ! その役員に頼んだら殆ど原価に近い値段で売ってくるんだよ。具体的な値段はショックを受けるだろうから伏せるけど、大した金額じゃないから遠慮なんてしなくていいよ」
仕事どころかバイトすらした事がない私にとって、間宮さんの話はチンプンカンプンで情けなく感じたが、とにかくビックリ価格で買う事が出来るという事だけ理解して、少し肩の力が抜けた。
あと、ボケたんじゃなくて、ホントに良かった。
「そ、そうなんだ……でもこの時計を使ったら、間宮さんと――その」
モジモジと上目使いでそう話すと、最後まで聞く前に察したのか、間宮さんは慌てた様子で、両手をブンブンと交差させた。
「い、言っとくけど、俺とペアにしようと思ってそれを買ったんじゃないからな! な、何かこのモデルって若い連中に人気があって、高校生でもバイトして買ってるらしいじゃん。だからこれならどこで使っても、恥ずかしくないと思っただけだからな!」
必死にペアじゃないって否定する間宮さんは、まるで子供みたいで何だか可愛くて、そんな間宮さんが付けている腕時計に触れてみた。
「人気があるとか、人気がないとかどうでもいいよ……私は間宮さんと同じ時計をプレゼントしてくれた事が、凄く嬉しいんだよ」
私はそう言って、返した箱をもう一度自分の元に引き戻して、今付けている時計を外して真新しい腕時計を巻いて、間宮さんによく見えるようにポーズなんてとってみた。
「どうかな? 似合ってる?」
「あ、あぁ――よく似合ってるよ――本当に」
「えへへ! この時計本当に貰っていいの?」
「勿論だ! 瑞樹にプレゼントする為に買ったんだから、受け取って貰わないと困るよ」
「うん! じゃあ遠慮なく頂きます。本当にありがとう。ずっと大切にするね」
テーブルの上に乗せてある間宮さんの左腕に巻かれている時計を見て、もう一度自分の左腕に視線を落とすと、同じデザインの時計が同じリズムで時を刻む音が聴こえてる。
その音が同じ時計を巻いているんだと実感させてくれて、私は真新しい時計をそっと右手で包み込んだ。
「それと――これもよかったらどうぞ」
間宮さんはそう言って、さっきなにか書き込んでいた名刺を差し出してきた。
……なんだろう。
「これって名刺だよね?」
そう確認してから名刺を受け取ると、間宮さんが勤めている会社名を所属部署、それに間宮良介と印刷されていた。
ただ、さっき何かを書き込んでいたのは、裏面だったはずだから、表面を全部読んだ後に裏返すと、裏面には手書きも文字が書き込まれてた。
「え? これって……」
複数の数字と、複数のアルファベット。
凄く馴染みのある文字が、何を現しているのか直ぐに分かった。
「これなら、今度いつ会うとか連絡がとれるだろ?」
やっぱりそうなんだ。
名刺の裏には、手書きで間宮さんの携帯番号とアドレス、そしてトークアプリのIDが書き込まれていたんだ。
「う、うん! これ登録していいんだよね? 連絡してもいいんだよね?」
「あぁ、いつでも連絡してくれていいよ」
連絡していいんだ。
迷惑じゃないんだ。
私はその事を自分の中で復唱すると、嬉しさで自然と口角が上がってしまった。
クールな女はどうしたんだってね。
でも、ずっと知りたかったんだ。でも断られるのが怖くて、訊けなかったんだ。
だから、自分の気持ちを隠そうとしても、隠せないのは仕方がないよね。
そう考えたら、今まで私の連絡先を知りたがっていた人達って、実は凄い事をしていたんだなって、素直に感心させられた。
連絡先を訊かれる度に、私は深く考えずにバッサリと断ってきたから知らなかった。
断わる事の気持ちは解っていても、断られる事は未経験の私にとっては、この行動がどれだけ大変な事なのかを、ようやく理解出来た。
すぐにスマホを立ち上げて、名刺の裏を凝視して間宮さんの個人情報を登録していく。その指を動きに何故か間宮さんは苦笑いを浮かべていたんだけど、なんでだろ。
全部登録を終えた私は、早速間宮さんの携帯番号に電話をかけた。
当然だけど、目の前にいる人に電話をしているんだから、テーブルに置いてある間宮さんのスマホが震えて、着信を知らせるイルミネーションが光っている。
多分ワンギリしていると思っているんだろう。間宮さんは震えているスマホに視線を向けたが、電話に出る素振りを見せずに、珈琲を一口飲んでいた。
「――てよ」
「え? なんだって?」
「――電話に出てよ」
「は? 何でだよ」
「もう! いいから出て!」
意味が分からないと言わんばかりに首を傾げる間宮さんに、私は少し苛立った声を上げると、慌ててスマホを手に持って、ようやく通話ボタンをタップしてくれたみたいだ。
「も、もしもし?」
――低くて耳に馴染む声なのは変わらないけど、その声がまるで耳元で囁いているように聞こえて、顔全体が一瞬で赤く染まっていくのが分かった。
「――ありがとう」
私は電話越しに、いっぱい気持ちを込めてお礼を言った。
電話で誰かと話すなんて珍し事じゃなく、日常的な事だ。
でも、好きな人と電話で話す事が、耳元で囁くように聞こえる声を聞く事が、こんなに幸せな気持ちにさせてくれるんだって、私は生まれて初めて知った。
だから、首を傾げている間宮さんに私の気持ちは解って貰えなくても、いい。
今は、ただの知り合いの声をして聞いてくれてても、いい。
だけど、いつか電話で私の声を聞いた時、私と同じ気持ちになってもらいたいって、強く、本当に強く思いながら、私は電話を切った。
店を出て駐輪所に向かい、自転車を押し出した時、お互いの時計が0時を知らせる電子音が鳴り、その瞬間瑞樹の誕生日を終えた事を告げた。
愛菜や結衣達が念願だった誕生日を開いてくれた。
希からはサプライズケーキを送られた。
――そして、想い人から優しい時間と、素敵なプレゼントまで貰ったうえに、ずっと知りたかった連絡先まで教えて貰った。
この18歳の誕生日は、私にとって忘れられない――いや、忘れたくない一日になった。
家まで送ってくれている間宮さんの横顔を見た後、少し霞んだ月を見上げると、もう一度自分にしか聞こえない声量で「ありがとう」と、今日1日関わってくれた人達に感謝の気持ちを、月に向かって呟いた。
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