大集会は禁止のようだ

 やとすらいの街に来て、すこしずつ分かってきたのだが。


 不思議なことに、グループの人数が大規模にならないんだ。


 20人を越えようとすると、謎の力がはたらく。


 かならず誰かが、どこかに居なくなる。


 駅前で待ち合わせをしていたのに、田中が突然消えた。


 この20の壁は、いったい何なのだろう?


 そして、池袋とか新宿とか稚内とか、ふつうにある。


 なのにそれら全部が「やとすらい」と呼ばれているのだ。


 昨日は、昔お世話になった高松地方在住の社長に怒られた。


 今日は、昔お世話になったドライビングスクールの社長に怒られた。


 不思議なことに、どの社長も同じ表情で怒る。バリエーションが無い。


 よく見ると、公園にブルーシートを引いて騒いでいる花見客も同じ笑顔。


 表情のパターンが限られていた。いや、所定のパターンに分類されていた。


 しゃべる内容の多彩さと、表情の少なさのギャップに慣れるのに2か月かかった。


 慣れれば大したことない。もともとの表情が多すぎたのだ。


 喜怒哀楽、の4種類ぐらいに、感情は分類できてしまうことがわかった。


 まるで、すべての模様を、4色で塗り分けられるとかいう、あの実験のように。

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