やとすらいの街

にぽっくめいきんぐ

みんなニコニコしていた

 ネットに出回っている大量のマンガデータを、俺はひたすら集めていた。


 会社のパソコンに、監視ソフトが仕掛けられているなんて知らなかったんだ。


 クビになり、しこたまに酒を飲んだ俺は、やってはいけないことをした。


 駅のホームから、帰宅ラッシュ時の電車に飛び込んだんだ。


 賠償金は、とんでもないことになるだろう。でも、俺はもういない。


 家族もいないのがせめてもの幸運だった。


 そして目が覚めたそこには、たくさんの人が生きていた。


 元の世界ではないことが、起きてすぐにわかった。


 人はみな、寝て起きて電車に乗って学校やら会社やらに向かう。


 満員電車はぎゅうぎゅうだ。池袋の西口を出ると怪しい客引きが居る。


 秋葉原にはエウリアンが、絵を買わないかと誘ってる。


 元の世界と全く変わらない人の営み。ただ一つ違うのは。


 この世界のみんな、「いらすとや」の絵柄のような見た目になっていた。

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