タイクツ委員長
退屈、退屈、退屈で仕方ない。
中学までは地元の友達が多い学校だったのに議員をやっている祖父の推薦で私には合わないお嬢様学校に進学してしまった。
机から足をちょいと出しただけで注意をされるような環境にストレスを感じながら授業を受けている。クラスメイトは予想だけどみんなイイところのお嬢様。誰も自分の親の功績や地位を自慢しないところが本物感を醸し出している。
私は中学ではちょい悪な女子グループで楽しくやっていたので全く合わない。高校を辞めてやるというまでには悪くない自分が憎い。
「髪の毛が乱れていますよ」
「えげっ、確認するね」
「些細なことですが恥をかいてはいけないと思いまして」
突然現れてさらりと注意、そしてニコリと笑う委員長。馬鹿にしているわけでは無くて善意が溢れ出ている。
この空間に違和感を持たず溶け込んでいる委員長は不気味だ。私と変らない年齢のはずなのに勉強と礼節を学んで淑女という称号を得ようとしている。
込み上げてきたアクビと気持ち悪さを必死に飲み込む。
・ ・ ・
居残りで補習を受けていた。やっと終わり校門を抜ける。
制服を着崩したい欲求はまだ我慢だ、地元の人に通報される可能性がある。電車を乗り継いでゲーセンにでも行ってしまおう。少し軽くなった足を大きく前に出す。
しかし、改札の横でどうしても見過ごせないモノを見てしまった。
えっと、なんで委員長が泣いているんだろう。
いつも落ち着いた表情を崩さない委員長が目を腫らして泣いている。しかも目が合ってしまった。
「あの、どうしたの?」
「……少し納得が出来ないことがありまして」
ひどいかもしれないけど、高校生らしく感情が表面に出ている委員長に私は何だか興奮してしまった。
「じゃあさ、私と一緒に遊びにでも行く?」
これは勿論、校則違反。だけど私の後ろを距離を離さず付いてくる委員長。
・ ・ ・
私と委員長の間に置かれるトレーにはふたつのハンバーグ。
遊ぶのにも栄養が必要だ。学校で出されるバランスの取れた健康食ではジャンクな遊びは出来ない。
「今日は私の奢り、じゃなかった私が食べれない分を委員長に食べてもらう」
レジで奢ると言ったらめちゃくちゃ抵抗された。だから委員長には私のお残しを食べてもらうということにする。
委員長は何かを探している。
「どうしたの?」
「あの、これはお箸とかフォークで食べるものなんですか?」
マジか……。この調子だと今日はゲーセンに行けなさそうだ。手でハンバーグを鷲掴みにすると口に押し込める。委員長はおどおどしながら真似をする。
「美味しいです……しょっぱいですけど」
「それがアウトローの味だよ」
委員長の唇についたソースをナプキンを使いわざと上品に拭いてあげる。
「おソースがついてますわよ」
「……からかわないでください!!」
怒った。私の知らない委員長の表情が追加されていく。久しぶりに止まらない程に笑いがこみあげてくる。
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