ホームの端にて
おかしい、いやおかしいのは私なのか。
慣れない正門前の広場でぴかぴかのスカートをぎゅっと握る。今の時間に帰っている生徒は私と同じ一年生のはず。
初日なのにみんなスカートが私より短い。中学まではみんな長いスカートだった。高校生になると長いスカートはダサいのだろうか。
中学から使っているリュックの紐を強く握る。
大丈夫、生徒手帳には私と同じ見た目のイラストが描いてある。
・ ・ ・
駅のホーム。中央は同じ制服を着た人が溢れていて怖いので端っこまで移動する。地面に溜まっている桜をスニーカーの先端でつついて遊ぶ。そんなくだらない遊びに集中していたせいで後ろからの刺客に気が付かなかった。
「ねえ、電車好きなの?」
「ひゃああっ……え、誰ですか」
文字にするとカワイイけど実際は醜い悲鳴が飛び出す。急いで振り返ると近い距離に愛嬌のある顔があった。
「同じクラスだよね」
「え、うん……そうだけど」
同じクラスの人なのか。記憶に無いということはキラキラグループの住民なんだろな。
「えっと、電車ってなんで?」
「先頭の車両から前を見たいのかなって」
あーなるほど。全然違うけど。
「空いてるから、それだけかな」
「へーそうなんだ」
……。電車はまだ来ない。これは気まずいな。相手から話題を出して来たということは次は私が何かを出さないといけないのだろうか。クラスメイトを眺めてヒントを探す。
ダメだ何も思いつかない。
どうしよどうしよ。
ひとつのヒントが思いつく、こっそり立ち読みしたファッション雑誌に書いてあった相手をカワイイと褒める秘技を使おう。
精一杯の笑顔を作って口をなるべく大きく開ける。
「……スカート短くてかわいいね」
春休みに人とのコミュニケーションをサボっていたせいだ、人生でイチバン気持ちの悪い声で気持ちの悪いコトを言ってしまった。
「え、じゃあ短くしてみたら?」
さっきと変わらない笑顔で私のスカートを指差している。こいつマジか……。
結局、私がスカートをくるくると巻いてみるとキレイにならないのでやってもらった。騒ぐと余計に恥ずかしい。だから大人しく手ほどきを受ける。
「完成、いいじゃんいいじゃん」
私の棒みたいな足をしゃがんで眺めている。
「ちょっと、変じゃないかな……私って地味な感じだし」
「えーそんなことないけどなぁ。あとは……」
肩と腰に手を置かれて背筋を伸ばされる。
「前向かないと太陽もみんなの顔も見れないでしょ、あと堂々として見えるから」
改めてしっかりと顔を確認した。笑顔が私に向けられている。私も変だけどこいつもだいぶ変な人なのかもな。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます