卒業制作

 卒業制作のために集まったメンバーが困惑している。リーダーのミカに話を聞くとアイツが来てないみたい。リーダーに頼られてしまったので連れてくると言って校舎を後にする。

 

 探さないとな。

 でもある程度いる場所は分かっている。最寄り駅の反対側の商店街に入っている喫茶店。中を覗き込むと綺麗な模様の机に肘をつけたアイツを見つける。

 

 店内に入るとアイスコーヒーを頼む。Mサイズのアイスコーヒーを受け取って目の前に座る。

「お嬢さん、卒業制作しないんですかー?」

 せっかくの整ったかわいい顔がムスッと歪んでいる。

「私の作りたいものはあの班じゃ出来ないから……」

 机に広げられていた提案書を見る。コイツは人に伝えるのが下手なんだよなぁ。

「ミカ困ってたよ、アンタが居ないって探して来てって」

「そんな子、知らない」

 ミカは人当たりが良くて専門学校のクラスでは女子のまとめ役になっている。

「まあ、ミカも頑張ってるんだし協力してよ」

「うるさいっ」

 たっぷりとミルクの入ってそうなコーヒーを飲んでいるのを見ながら私もアイスコーヒーを流し込む。

 こりゃ手こずるな。Lサイズを選んだ方が良かったと後悔する。

「ねえ、じゃあ私が一緒にアンタの提案書を説明してあげるから」

 少しだけ考えているようだ。

「そのミカって女に説明するの?」

「うん、ミカもそうだけど全員に」

 机に広げられたモノをしまい始めた。私も急いでアイスコーヒーを飲み干して席を立つ。

 ムスッとしていた理由は単純だったようで、昨日フォローしなかったことを怒っているだけだった。ホントにかわいいなコイツは。

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