第35話 湖を越える
竜たちを越える方法……う~~~んと考えていて、あっ!っと思った。
「なぁ、小太郎?」
「はい。主、なんでしょう?」
「湖を回り込んで見たじゃん?」
「はい。じゃん?」
「そこから湖沿いにアーケロン(亀竜)だけ退けて降りれば良いんじゃね?」
「はい。それが一番順当ですね。」
「え? お前分かってた?」
「はい。最初にお伝えしてましたが湖を越えるのに拘ってましたから。」
「え・・・・・・あ、そうか。」
「口を挟んで申し訳ありませんが主様がずっと湖を越えると仰ってたので、その事に何かあると雅は考えていました。」
「あ…あ~、勘違いしてたわ。湖を越えるのが近道じゃなくて、回り込むのが近道だな。回り込めばそれぞれの縄張りにも近道だな。」
うっわ~!やっちまったな。自分の拘りだけ押し付けて何も考えて無かった。
一番やっちゃイケない事だったわ。
「ごめん。湖で優雅に釣りが出来ないかな?とそればかり考えててちゃんと現実の状況を考えて無かったわ。」
「主は湖で釣りをする思ってましたので、越える事を考えてると考えが至りませんでした。申し訳ありません。」
やべぇ、最近ポンコツだった小太郎がめちゃ出来る従者で諫められてる感じがする。
「いや。俺が悪かったわ。色々考えてて、湖で釣りをするのと下流へ降りてこの世界の人間に会う事を一緒に考えてた。降りて行くだけでこんなに大変だとは思わなかったよ。」
「それは此処が神の国だから下界へ降りるのは大変ですよ。」
「ん?なんだって?」
「主様?気付いていらっしゃいませんでした?」
「は?どういう事?」
「小太郎様の言うように、此処は神の国なのですよ?」
頭が真っ白になった。
小太郎と雅の言う事によると、此処は俺の考えてた異世界とかでは無く……
正真正銘、神の国だった。
風神様、雷神様はもちろん。
犬神様、稲荷様、八幡様、天満様、三峯、自凝島、天照、伊勢、武蔵一宮氷川、などなどなど神の社はキリが無い。
八百万の神々の庭の入口だって?
その後は記憶が無い……
気付いたら、雅の膝枕だった。
幼さの残るキレイな顔を見て、俺って天に召されたんだぁ。と、実感した。
湖を越えるのは考え直した。
もっとちゃんと分かってから、理解してから漕ぎ出してみようか。
・・・・・・ちゃんと修行してみよう。
一旦帰って、風神様、雷神様に真面目に質してみた。
結果、此処は神の国の入口。
人の世との接点の場所になる。
神々は古い慣習に囚われていて、新しいことが出来ない。
人の世は刻々と変わりつつあるのに、受け入れる術を持たない。
小太郎に人の世を見て来いと送り出したのが真相。
その中で俺を見定めたのは故意か偶然か?
ただ、この場所に導かれるのは神々も認めた。更に風神様から魔法と言われていたが、これは神力。
ネットショップ?神力による人の世からの対価交換。
これは如何なる神でも成し得なかった。何故か?
人の世を理解出来ていないから。理解できない物を利用するのは難しい。
だから出来る奴を呼んだと。
ん~‥‥‥言ってる事は解る。言いたい事も分かる。
まだ説明は続く。
期待したのは人の世の概念。
衣食住から豊かな生活への変革や、考え方、現代への進化。
「神様って何故か着物やキトンやヒマティオンを着てるだろ?進歩してねぇんだよ。俺らだって人型の時は着物だぜ?アポロンだってゼウスだってヘラだって実はカッコいい服着てぇんだよ。ヘファイストスやヘルメスはともかく、アテナやアルテミスとかアマテラスやツクヨミなんて半端じゃねぇ期待してるからな。」
情報過多で頭が痛いわ。
神の国って…日本だけじゃねぇのか?ゼウス出て来たぞ?
同列にアテナやアマテラスって……
何だよその有名な神々は?
此処の上、って、俺が住み着いた川の滝の上?
そこから高天ヶ原に入るって?まんま神界じゃねぇか。
そこからオリュンポスに行ける?
もういいよ。
分かったのは、俺は人間界では死んだって事。
人間界の知識活かして神々の生活向上を図れと。
俺はただ気ままにキャンプ生活したかっただけなんだよなぁ。
いくらでも出来るって?
うん。連れてきてくれてアリガトな。小太郎。
世話を焼いてくれてアリガトな。雅。
上に行く方法も下に降りる良く分かったよ。
今日の予定?
ヘファイストスとアーケロン釣ってすっぽん鍋だ。
行くぞ。雅。小太郎。
勝手気侭にキャンピング生活。 三六三 @smkytt
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