第16話 収納魔法

 刺青のショックから復活して、鑑定魔法を使いまくっていた。


 毛皮を鞣すミョウバン石もちゃんと仕分けられるようになったので、大量に拾ってきてたそれっぽい石を鑑定したんだが、殆んどが全然関係ない石で、本当のミョウバン石は数個有っただけだった。

 ミョウバン石だと思ってたのは、殆んどが石英で偶に大理石。

 全然違うじゃん!と思ったけど、素人目なんてそんなもんです。

 ただ白い結晶っぽい石を選んだだけだもんね。

 都合よく有る方がおかしいって事ですね。


「ま、まぁ、きちんと判別できるようになったから良しとしよう。」


 残った石の殆んどは不要なのだが、このまま置いておいてもしょうがない。

 河原に戻すにしても、運ぶのは大変である。


「収納魔法‥‥やってみるか。」

 収納してしまえば運ぶのは楽だろうと思いついたのだが、まだ使ってなかったので緊張する。せっかく覚えた魔法なんだから直ぐ使いそうなものだが、鑑定が面白くてしょうがなかっただけで、決して忘れてた訳じゃない。


 河原に戻す石の前で、石を一つ手に取って「…収納…」呟いてみる。

 手にあった石が消えた。


「おお!」

 感動した!


 もう一つ石を拾って、今度は意識だけしてみる。

(…収納…)

 手から消える。

 呪文の様な物も、声に出す必要もない。

 ただ収納すると意識するだけで収納できて、収納したものは、意識すると何が収納されているのかが認識できる。


 今度は出してみる。

 手の平に収納してた石が現れる。

 何番目に収納した石なのか?どれを出すのか?認識次第みたいだが、きちんと把握して無いとゴチャゴチャになりそうだな。


 色々検証してみよう。

 まず、収納するには手で直接触れなくても1m以内くらいなら収納できる様だ。

 出すのも同じ。


 石の山を纏めて収納するのも可能。

 それと発見だったのが、鑑定魔法と連動させられる事に気付いた。

 纏めて収納した石を仕分けられるのだ。

 

 手を触れないでも収納できるから、周囲から特定の物だけ収納する事も出来るし、まとめて収納してから仕分けして、余分なものは排出するも良し。


 植物などは、植わってる状態では収納出来ないが、引っこ抜いた状態なら収納できる。

 木の実なども生ってる状態じゃ無理。もいだ状態なら大丈夫。


 生き物は無理みたいだな。サワガニは無理だった。でも貝?みたいのは入った。

 昆虫は微妙‥‥成虫は無理だったが幼虫は入った‥‥大きさにも依るか?

 ミミズとかも入ったから、小さい生物は入るんだろうね。

 まあ、昆虫関係は、あんまり入れたいものじゃ無い。


 大きい物はどれだけの物が入るのか?

 試しに‥‥川の大岩は、止めておこう。自然を壊すのもどうかと思うしね。

 倒木、長さ10mくらいで、太さも50㎝くらいの倒木は?‥‥入ったね。


 認識できる状態で、重量や容量みたいなのは分からないんだよな?容量重量無制限?それってスゴクない?

 それじゃメインディッシュ!ハイエース入るかな?‥‥(…収納…)

 すげぇ!入ったよ!車1台サラッと入ったよ!どうなってんだか分からないけどスゲェ!苦しんで死にかけた甲斐が在ったよ!!


 ラノベとかで、当たり前に収納魔法使ってるのを読んでて、そんなもんなのかぁ?なんて思ってたけど、チートとか何も無くて異世界に来た者としては、鑑定と収納が在ればナントカなる気がするよ!って、それがチートなんだっけ?

 こんな事が自分に起きるなんて思って無かったケドね。


 後は風神様が描いてくれた魔法ネットで、日本でのキャンプ生活くらいは維持できるから頑張れる。

 無知なまま、この山の中に放り出されたら野垂れ死に間違い無し!

 日本の山だって、キャンプに行って道に迷ったら遭難するのに‥‥



 他に試したい内容は、経過時間かな。

 沸かしたお湯を入った鍋を収納。‥‥‥‥‥出してみる。

 熱いぞ!もう1時間は経ってるのに熱いぞ!

 次は、もう1度、沸かした鍋を入れて、明日出してみよう。

 1週間くらいまで試してみて、時間停止だか時間遅延が在るなら生モノも大丈夫だろうと思う。1時間経っても熱い鍋が熱いままだったから大丈夫な気がするけど、試した方が良いよな。



 収納魔法の検証はここまでにして、今夜は皆にご馳走を振舞いたい。

 俺が居ない間もこの拠点を守ってくれたからね。


 まず狼たちだが、いつものカリカリではなく、半生の肉っぽいドックフードにしてみようか?缶詰の方が良いか?‥‥いや、そんな数の缶詰を開けるだけで気が遠くなるわ!いくら今の缶詰が缶切り要らなくてもね。

 他にデザート?として、全員に豚耳でも配ろうか?気に入ってくれるとイイネ。


 風神雷神様は、缶詰だな。1缶400g‥‥5缶ずつで良いね。2㎏もあれば足りるだろう?デザートは柔らかく煮込まれた味付き豚骨が美味そうな気がする。

 1袋6本入りか?各1袋ずつって事で。


 どれも食べた事のないモノだから喜んでくれると思うんだよ。

 おっと!小太郎の分も忘れちゃ駄目だよね。



 その夜の飯の時。

「風神様、雷神様、そして小太郎。無事に魔法が覚えることが出来ました。

 どうもありがとうございました。今夜はちょっと良い物を用意してみたので、召し上がって見て下さい。」


 口上を述べてから彼らのステンレスボールに缶詰を開けて入れる。

 最初に缶を開けた瞬間!‥‥全員の空気が変わった!


『なんだ?この匂いは!?今まで嗅いだことのない匂いだが、絶対に美味い匂いだぞ!?こんな美味そうなモノを食わして貰えるのか?今までの食事も考えられない美味さだったが、まだ上があるのか?』


 今まではどんな時も大人しく待っていた狼たちがク~ンク~ンク~ンク~ン‥‥おねだりしている。こ、これは?パンドラの匣だったか?開けてはイケなかったか?


「静まれ~ぃ!!」

 雷神様が一喝したら静まったが‥‥皆、よだれダラダラで目が諦めていない。

 てか、雷神様が一番よだれダラダラなんですが‥‥


 これは、全員に缶詰を開けないと納まり付かないかも知れないな。

 日頃の貢ぎ物は彼らが獲って来るんだし、缶詰を追加購入しよう。


 食事の順序は大事だが、内容に格差を付けるべきじゃ無いかも知れない。

 理性でどうにか抑えられるもんじゃ無いしね。野生動物に理性求めるなってね~。だから豚骨も追加購入したよ。


 風神様雷神様と小太郎の前にステンレスボールを並べる。

 そして、別のお皿に豚骨を出す。

 その途端!狼たちから、声にならない声が発せられる。

 これは、風神様すらよだれを必死に抑えているのが痛いほど分かる。


「いつもだったら俺も一緒に食いますが、今日のトコロは先に召し上がって下さい。イタダキマス!」


 イタダキマスの合図と同時に風神様雷神様どころか小太郎すらも物凄い勢いで食い付いた!5缶2㎏じゃ足りない勢いで食っていく。

 途中で豚骨に食い付いた風神様が、‥‥震えている。


「こ、こんな美味しさがあるなんて‥‥」

「フウ、我は今日ほどお前に感謝した事は無い。コタロを保護して貰ったとは言え、人間などと思っていたが‥‥お前のお陰でコウ様と縁を繋げて、こんな神のお供えを頂ける日が来るとは‥‥フウのお陰だ。」

「ライ♪‥‥」


 あ~‥‥そういうのは後でやって欲しいですね!

 小太郎は一心不乱に食っている‥‥ブレないねコイツは。


 次に狼たちの飯だが、缶詰持って回るのは余りにも重いので、順にお皿持って並ぶように言ったら、瞬間的に列が出来た!

 1缶ずつ開けてやって、一緒に豚骨を2本ずつ入れてやる。

 必死に缶を開けて出す。缶を開けて出す缶を開けて出す・・・

 袋を開けて出す袋を開けて出す袋を開けて出す袋を開けて出す・・・

 ゆ、指がぁ~指がつる~


 空き缶はライム君に進呈です。

 皆、中身あげてるんだから、あ~‥‥って残念な顔しないの!

 後で、缶詰を魔法で収納して廻れば重くない事に気付いたが、お皿持って来てもらった方が楽なので、これからもこの方法で行こうと思った。


 この缶詰のご褒美は彼らのやる気に大いに火をつけて、この森の守りが強固になったことはコウは知らない‥‥



















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