第17話 カッパ
魔法を覚えたが、毎日の鍛錬は欠かさない。
今まで、もっとやっておけば良かったなぁ~!という後悔を何度も味わってるからこそ、怠けないで鍛える事が重要というのを身を持って知ってる。
継続は力なり!昔の人はイイコト言うね!
基本的鍛錬は変わらないが、小太郎との乱取りに変化が出てきた。
何故かと言うと、収納魔法を戦いに取り入れたから。
河原に捨てて来ようと思った石を、偶然だが戦ってる空間に出してしまった。
俺的にはあれっ?程度だったが、小太郎的には完全に不意を突かれたようで、一方的に押してたのが、グズグズに崩れた。
一度そういうのを出されると、次は何処で出してくるか?と疑心暗鬼になって上手く攻撃が続かなくなるらしい。
偶然に出したのが鼻先だったから、きっと痛かったんだね?
小太郎との乱取りの後は、川に行って水浴びするのだが、ここでも変化がある。
対岸の淵(カッパ淵と名付けた)でカッパが見てるようになった。
最初はこちらの姿を見ると水の中に消えていたのが、見てるんだよ‥‥
たぶん、彼?の縄張りの岩場なのかな?毎日同じ岩場で同じカッパが見てる。
段々と逃げなくなってこちらをジーっと見ている。
こちらが不審な動きをしたら直ぐに逃げれる体制なんだろう。
ある日、キュウリが収穫出来たので、川で洗って冷やしていた。
その時も、多分いつものカッパが顔を出したので、キュウリを2本出して1本をやるよ!というジェスチャーをして川上に投げた。
カッパがキュウリを拾ったのを確認して、俺はキュウリを齧った。
お前も食えとジェスチャーをして、再度キュウリを齧って見せた。
俺とキュウリを見比べて、匂いを嗅いだりして思いっきり警戒してたが、俺が3口目にキュウリを齧ったのを見て、意を決したようでキュウリを齧った。
俺は、初めてキュウリを齧った時のカッパの表情を忘れる事は無い。
眼を見開いて、こんな美味い物が!!という驚きの表情。
俺とキュウリを見比べてから、一心不乱にキュウリを齧るカッパ‥‥
カッパはキュウリが好物と言うのは本当の事のようだ。
キュウリを食って放心状態の彼を置いて、その日は家に戻った。
翌日から俺が川に行くと、必ず顔を出すようになった。
でも、小太郎が居ると怖いみたいで、慌てて水に消えるが、暫くして恐る恐る顔を出す。
小太郎が居ても顔を出す様になったので、キュウリを見せてから放ってやった。
カッパの喜びの表情ってのも良いもんだね。
「おーい!キュウリは美味いか?」って聞いてみた。
この時は彼が言葉を理解するとは微塵も思って無かった。
そしたら、彼は頷いた。
俺はスッゲー!と、嬉しくなった。
カッパと言葉が交わせるなんて!すげぇよ!異世界バンザイだよな!
(カッパは喋った訳では無いが‥‥‥)
小太郎たちと言葉を交わしてるのも忘れて、舞い上がった!
それからは必ず声を掛けるようにしてから、キュウリを放る。
「俺の作ったキュウリは美味いかぁ!?」
キュウリって言葉にコレ?って顔をして、笑顔で頷く。
カッパの笑顔だよ!おいおい!何かメチャメチャ嬉しいよ!
小太郎は、良かったね~って相手にしてくれない。
毎日、カッパ淵に行くのが楽しみになった。
そして毎日キュウリだけじゃ飽きるかな?と思ってトマトをやってみた。
でも、トマトの反応はイマイチだった。すっぱかったみたいだね。
「やっぱトマトじゃなくて、キュウリが良いのか?」
キュウリを見せる俺に、笑顔でウンウンと頷くカッパ!
こんなやり取りをしているが、俺とカッパの間には川が在る。
人間の俺が渡れる程には川は浅くも無いし緩やかでも無い。
川に落ちたら、多分流されて溺れてしまうと思う。
だからカッパにしたら安心なんだと思う。
野菜類は俺しか食べないので、川辺を開墾して畑を作り、細々と野菜を育てていたのだが、カッパが食べるからキュウリの苗を増やした。
魔法ネットでカッパが食べそうな苗をチョイスして、畑も大きく増やした。
野生の野菜を探して採ってくるのは大変だし、野生だけあって"えぐみ"も強い。
品種改良されて美味しくなってる現代の野菜は素晴らしいと思う。
その苗を魔法ネットで入手して植えてるのだが‥‥育ちが恐ろしく速い!!
まるで夜中にトト□が『ウゥ~~~ン!』と頑張ってくれてるようだ!
それと、不思議な事に虫食いが無い!農薬をガッツリ掛けてる訳でも無いのに虫が来ない‥‥そう言えば、蚊に食われたりもしないなぁ?でも、ミツバチは居るね。見た目も大きさも同じカンジで黄色と黒の縞模様。
キュウリやナスの花に蜜を吸いに来てるから、習性も同じ何だと思う。
ミツバチが来てくれるなら、筆で受粉に回らなくても大丈夫かな?少し間引いて置かないと、大きい実にならない筈だから、残す花だけ筆でコショコショしてから育ちの悪そうな花を剪定しておく。
そうやって俺が畑で作業してる間も、カッパ淵ではカッパが見てる。
手を振って見ると、不思議そうな顔をして手を出して見てくれた。
何のこっちゃ?って感じかな?手を振るって習慣は無いんだろうね。
今日収穫した野菜を籠に入れて川に降りる。
野菜を一旦籠から出して河原に並べて、偶にカッパと視線を交わしながら、野菜を洗って籠に戻して行く。
洗ってる最後で、瓜が1個流れて行ってしまった!
「あっ!」
っと思わず声を出したら、カッパがススーーッイと泳いで行って拾ってくれた。
そして、俺のところまで持って来てくれたのだ!
背は俺の胸くらいの高さで130~140㎝くらいかな?上目使いで俺に瓜を手渡してくれる。
「ありがとう。」
と、俺は笑顔でその瓜を受け取って、2ッに割って見せて、半分渡した。
瓜と俺を見比べて不思議そうな顔をする。
「食ってみ?」
瓜を齧って見せると、納得したように瓜を齧って嬉しそうな顔をする。
「美味いか?」
瓜を齧りながらウンウンと頷く。齧っている姿は小学生のようだ。
俺は瓜の皮を残したが、彼はまるっと食べてしまった。
近くで見ると、全身は鱗じゃなくて滑らかな皮膚のようだ。
頭にはお皿が在って、平たくなっていて、髪の毛はシルバーで輝いている。
丸い目が可愛らしく、クチバシはそんなに鋭くないが、横に大きい。
手足は大きく水かきが付いていて、爪がかなり鋭く強そうだ。
俺は籠に入ってる洗った野菜の中から、キュウリ2本と瓜1個を渡して、
「拾ってくれてありがとうな。これはお礼だ。」
顔をフルフルと横に振って要らないと言うが、野菜を押し付けたら受け取ってくれた。
「これからもヨロシク頼むな。」
そう言って、籠を背負い、畑の方に上っていく。
振り返ると、まだこちらを見ていたので手を振ったら、カッパも手を振ってくれたのだが、キュウリと瓜を持ってるのを忘れてたようで、落としてしまい流れてくキュウリたちを慌てて拾っていたので笑ってしまった。
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