第10話 風呂

 小太郎の洗い具合を見て、風神様も洗う事に‥‥

 ワンコと言えども女って。。。フェンリルでしたね。すいません。


 小太郎の時と違って、気を使って服は脱がない。

「さあ、準備出来ましたのでドウゾ!」


 振り返って、

「ぶふっ!!」

 噴き出した。


 そこには一糸纏わぬボンッキュッボン!の女性が!

「えっ!あの、その、もしかして風神様?」


「はい、風呂というものは一糸纏わぬ姿で入るものと聞いております。でしたら、コウ様と同じ人型の方が勝手が宜しいかと?」


「あ、いや、その~、とっても嬉しいんですが‥‥」


「問題ありましたでしょうか?」


「出来たら小太郎と同じフェンリルの姿の方が、理性が‥‥あ!いや、命が惜しい?かな?(人型の風神様とイタシテたら、ぜってー雷神様に殺られる‥‥)」


 風神様はちょっと考えていたようだが、ニッコリと微笑んでくれて


「‥‥分かりました。」

 ポワンッて感じでフェンリル型に戻った。


(やべぇ‥‥全裸の美女の微笑みで勃っちゃったぞ‥‥収まれ~静まれ~)

 フェンリルに戻った風神様を見て、ゆっくりと静まる。

 大きく深呼吸をして、頬をパンパンと叩き、気合を入れる。


「それでは全身洗って行きますが、痒い所とか仰ってください。それと、股間やお尻も洗いますので、そこは止めろと言ってくれれば避けて洗います。」


「はい。問題ないです。」


「では、まず全身濡らして洗って行きますね。」


 風呂は熱めに沸かして、お湯をどんどん使えるようにする。

 手桶で掬って水でうめて使うのだが、サイズがデカいのでお湯の消費が半端ない!

 お風呂用ブラシで濡らしながら溶かすだけで、3分の1位お湯を使った。


 中々気持ち良いみたいで、時々甘い声を出すもんだから、勃ちそうになる。

 全裸の美女が脳裏にチラチラと浮かぶ所が、俺って結構溜まってたんだなぁ~と益体も無い考えに入っていく。


 気持ちを切り替えようと思い、釜の薪の追加と風呂の水を追加すると言うと、

「分かりました。水は出しておくので大丈夫ですよ。」


「はい?」

 風神様が右手を上げると、ポワンッと光って風呂が満杯になった!

 それも水じゃなくて、お湯が追加されている。

 おお~?と不思議に思っていると、


「水ではなく、ちゃんとお湯を足したので大丈夫ですよ?」


「ま、魔法でお湯も出せるんですか!?」


「ええ、水魔法と火魔法の複合ですね。私は風が基本なので、そんなに得意ではないのですが。」


「いえ、ありがとうございます。すぐ薪も追加してきますね。」


 すげー!そうか!魔法って合わせ技で変化させられるんだな。

 釜に大量の薪を追加して、補充用の水も準備した。

 薪が燃え出したら、一気に温度が上がるから一番気を遣うところだろう。


「すいません。お待たせしました。寒くないですか?」


「ええ、大丈夫ですよ。」


 戻ったら風神様が冷えてしまってたので、全身に熱めのお湯を掛けて、今度はシャンプーで洗って行く。

 手作業で指先を使いワシャワシャと洗って行くのだが、フェンリル型でも下半身はちょっと気を使った。


 だから、あっ!とか、んっ!とか、気になる声を出されると、不味いから!無心にお風呂ブラシでガシガシ洗って、後は流すだけ。

 手桶で流しながら泡を流し毛並みを梳いて、両手両足の中も肉球を開いて洗ってマッサージをする。

 これもかなり気持ち良いらしい。


 終了してブルブルしてもらう。

 何度かブルブルしたら、顔と手足とお腹周りはタオルで拭き取って、全身にブラシを掛ける。


「終了です。」


「ふぅ~、ありがとうございます。普段届かない所も洗って頂いて、とっっっても気持ち良かったです。」


「はい。気に入ってもらえて良かったです。」


 風神様は近づいて来て、耳元でコッソリと、

「今度は人型でお相手しても宜しいですよ?」


 顔が一気に熱くなる。

 あうあうと言葉が出ないうちに、風神様は行ってしまった。

 なんだ、分かってて揶揄ったんじゃん!

 そう思うと、最初から人型で洗ってあげれば良かったな!

 にへへと気持ち悪い笑いを浮かべていると、


「コウ殿、次は儂を洗ってもらえるか?」


 オ~ノ~!厳しい現実(雷神様)がやって来た。

 よーし!洗ってやろう!


 説明もそこそこに、熱いお湯を掛けながら、全身ガシガシと洗ってやった。

 洗ってて気づいたが、お尻の片側にしこりがある。

 コレって‥‥


「ちょっと失礼!」


 尻尾を掴んで持ち上げて、肛門腺を絞ってやった!

 臭い液状の物が大量に出た!


「うおっ!」

 と、声を上げた後、何すんだ!とばかりに睨んでたが、下半身のしこりが消えたのに気付いて、ふぅ~っと落ち着いた顔してた。

 結構辛かったんじゃないかな?調子悪かったのが治って何よりです。


 臭い液状の物も直ぐにお湯で流したので匂いは残って無いが、相当臭かったぞ?

 本人は穏やかな顔して洗われてるけどね。


 他にも、縺れて毛玉になったトコをハサミでザクザク切ったり、手足の伸び過ぎたムダ毛を刈ったりした。

 風神様はそんなの無かったのに、やはりフェンリルと言えど女性だからお手入れしてるのでしょう!‥‥深くは考えないでおこう。


「雷神様、終了です。」


「おお!えらいスッキリしたぞ!特に尻周りが随分と軽くなった。礼を言うぞ。」


「良かったです。またいつでも洗いますよ。」


「ところで‥‥あの尻を絞るのは‥‥フウにもやったのか?」


 おっと!雷神様、ヤキモチですか?

「いえいえ、風神様にはやってないですよ。しこりなども在りませんでしたね。」


「そうか‥‥何か礼をしよう‥‥‥」


 そのまま雷神様は出て行った。


 ふ~~、やっと終わった。

 一家3人?洗うんで1日終わっちゃうね。

 因みに、犬用リンスINシャンプーは、2本使い切りでした。

 そうそう入る訳じゃないからしょうがないね。

 最後にようやく、俺が入るかぁ。


 再度、風呂場を洗ってお湯を入れ替えて沸かしなおす。

 釜に薪を入れてると、キレイな夕日に変わって行く。

 風呂から出たら、直ぐに飯にしないと暗くなっちゃうね。


 窓が大きく取ってあるので、夕日を見ながら風呂に入れる事に気が付いた。

 川の向こうの森にデカい太陽が傾いていく。


「おお!偶然とは言え、良い方角に上手く作ったな!スライドの窓にして正解だったね。」


 ついつい長風呂になってしまうのであった。

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