第9話 魔法

 俺にはドックフードの美味さは分らん。

 食ったら美味いのかも知れないが‥‥噂では人間が食って美味いドックフードが犬たちも美味いらしい‥‥


 小太郎一家曰く、奥深い味がしてとても美味いとの事です。


 う~ん、こいつらの食い方を見てると、とても味わってるとは思えないんだが?

 だってちゃんと噛んで無いでしょ?味分かるの?

 謎だ。。。


 ドックフードを買った後に色々やってみたんだが、燃料は買えた!

 こういう危険物はネットで買えるものじゃないらしい。

 しかし、ディーゼルだからか?軽油は買えた。

 それってきっと異世界仕様だよね?最初、何も出てこなくてアレッ?って思ったんだが、キーを回して燃料タンクの残量を確認したら、満タンになっていた。


 それと、自分だけで魔力流して起動できるか?って事だが、ワンコにイかされるのはプライドに関わるので、一生懸命練習した。

 風神様にイかされた時には人間辞めようかと思ったが、ギリギリ留まった。

 あの攻撃はヤバすぎる!(攻撃じゃ無いから)


 無事に魔力が流せた時には‥‥泣いた。

 若干呆れられたが、魔法の無い世界から来たんだからしょうがないじゃん!

 子供の様に開き直ったが、雷神様が揶揄うのでケンカになったが、子供のケンカと温かい目で見られてた‥‥雷神様だって子供じゃん!ぶーぶー!


 魔力が流せるようになると、欲が出る。

 魔法使えないかな?小太郎教えてよ!


「それじゃ僕がご主人様の魔法の先生をやりま~っす!!」


 ‥‥なんか失敗した気がする。

 偉そうな小太郎先生の元、「火」「水」「土」「風」の基本魔法と「光」の魔法を教えてもらった。

 つか、小太郎さん?こんなに魔法使えたんだ?

 今までよく使わなったな?


「あっちじゃ魔素が少ないから~。」


「はい?どういうことだ?」


「私が説明しますね。」

 風神様が説明してくれるらしい。


「コウ様の居た世界では魔法の素が少ないようです。これが無いと、どんなに魔力を持っていようと上手く魔法が使えないのです。」


「んじゃ、小太郎が帰れなかったのも?」


「はい。魔素が少ない分、普段より膨大な魔力が必要となります。これが誤算でコタロは帰れなかったのです。」


「そうかぁ、良かったのか悪かったのかは分らないが、今こうして生活が少し前進したのを考えると、悪くない気がするな。」


「そう仰って頂けるなら何よりです。」


 小太郎と出会えて幸せを感じてた。この世界に飛んだのは想定外だが、悲しい結末じゃなくハッピーエンドならそれで良いと思う。



 小太郎をワシャワシャしてたら、かなり犬臭い事に気づいた。


「小太郎、風呂入るか?」


「あっ!シャンプーする!あれ好きだよ!」


 小太郎はシャンプーリンスは嫌がらなかった。

 お湯を溜めてやると、中でウトウトするくらい風呂好きである。

 匂いが落ちるから嫌がりそうなんだが、その後のふわふわ感が大好きなのでOKなんだそうだ。


 風呂には毛皮を鞣した時のデカいタライを使おう。

 BBQ用に持ってきたタライだが、予想以上に使える。

 もう少し大きいのがあれば‥‥探してみるか。


 あった!タライじゃなくて風呂だが、何とかなるだろう。

 ‥‥これが重かった。

 実は、俺も入りたかったので薪用風呂釜も併せて購入。ハイエースから出すのに滅茶苦茶重かった。

 欲張って一番デカいの買ったからね!車の中、イッパイだったよ。

 ハイエースの床には、小太郎用とは別の小振りな毛皮を敷いて有る。

 魔法陣が傷付いちゃいけないと思って敷いたのだが、こう言う重量物を買った時には本当に敷いて置いて良かった!


 車の横に作った小太郎小屋を風呂場に改造。

 って言っても、床板を外した部分に風呂桶と風呂釜置いて、床板のある部分はそのまま洗い場にしただけですが。


 川から水を汲んでくるのは重労働なので、支流を作って川の水を近くまで引き込んだ。

 労働としてはメチャメチャ大変で、ひーひー言いながら穴というか支流を掘ってたんだが、雷神様がやってきて、


「お主は何をやりたいんだ?」


 と、聞いてくれたので事細かに説明した。


「言いたい事の半分も分らんが、これで良いのか?」


 瞬間に土が掘られ、両脇に堤防のように積み上げられ、川から水が支流に流れ出した。

「うおー!魔法すげえ!!」

「雷神様、ありがとうございます!」


 この時初めて雷神様を尊敬した。

 これに味を占めて、ああしたいこうしたいと希望を言ってみたのだが、他は大して役に立たなかった。

「ちっ」


「何か言ったか?」


「いえいえ、何も言って無いですよ。」


 因みに風呂の排水はトイレの浄化槽?(スライムプール。ここはライム君は出入り禁止!)に流すようにした。

 シャンプーやリンスを使うから自然に悪いかな?と思ってライム君に聞いたら、全然大丈夫~!って反応だったので、プールのスライムたちに任せる事にした。

 さすがに川には流せないよね。



 薪は毎日集めてはハイエースに乗せている。

 結構な量を集めているので、風呂小屋の脇に薪小屋を作った。

 これでハイエースのキャリアもすっきりとした。

 家も作って、家で暮らすようにしたいと思う今日この頃。


 先ずは風呂を堪能しようか。

 薪を焚いて風呂を沸かす。昔ながらのバランス釜だな。

 ある程度沸かしたら、薪を引いて熾火を残しておくと保温状態になるらしいが、加減が難しい。

 色々と慣れが必要だね。


「小太郎。風呂入ろう!」


「うん!」


 喜んで駆け寄る小太郎を眺めて、風神様雷神様は何が始まるんだ?という顔をしている。


 まぁ、そんな彼らは無視して風呂だ!風呂!

 最初は小太郎を洗ってやる。

 犬用リンスINシャンプーでワシャワシャと全身を洗って流す。

 小太郎を風呂に浸からせて温まってから出てきてブルブルをさせる。今までと違って、その辺に擦り付けるなよ!と言っておいたが、本当に分かってるやら?


 残り湯で風呂場を洗う。

 毛だらけなので全体を流してから新たに水を溜めて湯を沸かす。

 薪の火力は結構強いので、ほんの10分~20分でお湯が沸く。


 次は俺だと思ったら、風神様がやってきて目を輝かせている。

「コタロの変わり具合を見ました。私もご利益に預かりたいと思うのですが‥‥」


「分かりました。今準備しますので少々お待ち下さい。」


 小太郎は何処に??周囲を探したら、ふわふわになって、草むらでゴロゴロしている。

 周囲にホタル?光る何かが飛び交っているが、なんだ?ありゃ?

 後で聞いてみよう。


「お湯が沸きましたので、風神様どうぞ。」

 風神様は恐る恐る入って来た。

 お湯を掛けて全身くまなく洗うので、大人しくしていて下さい。


 不安そうな顔をしながらも期待に満ち溢れた表情っていうんですか?楽しみにしてる感じは伝わってくる。


 さて、風神様を洗いますか!

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