終章

 フラスダに到着後すぐに一行は解散した。ソロモンとヴィクトルにお礼を述べて馬車から離れていく同行者達。この瞬間に救出作戦は完了し、ソロモンの肩から荷が一つ降りた。


 馬車を返却する為にバーレクス議員の元に向かう。彼に直接話したいことがあるからというので、ロアロイトはまだ同行している。


 集会場に到着。少し迷ったが、チャイムは無いし鍵が掛かっているわけでもないのでそのまま入る。おじゃまします、といって荷物を置かせてもらったあの部屋へ進む。


 そこにはソファーの上で横になっているバーレクス議員の姿があった。


「酒盛りでもしていたのか? 酒瓶が散乱しているぞ」

「いや、ヤケ酒です」

 事情が分からないロアロイトは首を傾げた。


「なんだ……? ああ……帰ってきたのか……。どうだった……」


 重そうに体を持ち上げるバーレクス。間違いなく二日酔いだ。


「上手くいきましたよ。こちらは帝国貴族のロアロイト・ケステンブールさんです」

「ケステンブール家の方か。大物が来ていたんだな」


 挨拶もそこそこに、今回の一件を説明した。ロアロイトとバーレクスが政治的な話を始めると、ソロモンは黙って横で聞いていた。


 帝国がこの一件を国際問題にしないように動く、とロアロイトが確約したことでバーレクスは心底安心したようだ。


 ラグリッツ王国がここから先どうなるかは分からないが、帝国は積極的な介入はしないだろう。


 話が終わって預かってもらっていた荷物を回収した後、ソロモンはロアロイトと共に帝国への帰路についた。ケステンブール家が所有する船に乗せてくれたのだ。


 客として乗せてもらったので、サービスは一流。案内された部屋は、ビックリする程の豪華な内装の客室だった。有料ならソロモンは絶対に利用しないグレードである。


 ケステンブールに到着後は、報告の手紙を出してから馬車を借り切って城まで戻る。手紙がケステンブール家の当主の元へ運ばれている事を、ソロモンが知ることはなかった。


 城が建つ山に近づくにつれて、荷物を積んだ馬車と頻繁にすれ違う。交通量が増えている気がした。


 フラスダを出発して七日目、この世界のマイホームである城に帰ってきた。


「なあ見ろよヴィクトル。いつの間にあんなものが付いたんだろうな。いや、やった人に心当たりがあるし立派だから文句は無いんだけども」


 解放されている城門の横に、大きくて目立つ真新しい表札のようなプレート。


 そこには『ソロモン城』と記されていた。

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