第3話 サポーター

「最後にサポーターについて説明する。説明はそこの彼に任せた方がいいだろう」

 ナビゲーターは王族風の男へ視線を移した。王族風の男は腕を組み、少し顎を上げる。

「サポーター? 今度はなんだ。ちゃんと説明してくれるんだろうな」

「これは大事なことだからきちんと説明するよ。簡単に言うと只の一般人がいきなり異世界に放り込まれて、ゲームになるとは考えていないってことさ」

「そりゃそうだろうが……」

「故に各プレイヤーにお助けキャラが付くことにしたんだ」

 定樹は怪訝な顔を王族風の男に向けた。

 期待して良いのか悪いのか迷う。何故か不安になってきた。


「土来定樹よ。キミのサポーター役は我々、悪魔集団『ゴエティア』が引き受けた。私はリーダーのバエル。よろしく頼むよ」

「悪魔集団『ゴエティア』!? ちょっと待て。――今悪魔とか言ったよな!?」

「『ソロモンの霊』とも呼ばれたことがあるのだがね。聞いたことが無いかな?」

「あっ!! もしかして!! 確か世界史の授業の時に先生が話していたぞ。古代イスラエルのソロモン王が使役したって伝説がある、七十二体の悪魔達か!」

「ご名答。七十二体、全てここに集まっているよ」

 バエルは小さく手を叩き両手を広げた。その動きにつられて定樹も視線を動かす。

 いつの間にか人ならざる存在に囲まれていた。

 巨大な鳥や、三メートル近い身長の巨人。巨大な蛇に、鋭い牙と角を持った四足歩行の怪物。

 俺に対して威嚇するような行動をしている者は居ない……かな。どちらかというと何かをアピールしているようなポーズを取っている気がする。

「我々は下請けのプロだ。大船……いや、ノアの方舟に乗ったつもりでいるといい」

「下請けって。ノアの箱舟を出すの悪魔らしくないような気がする」

「使役されたを良いようにだな」

 自信満々な顔をしてるけど大丈夫か。


「はあ……。それで何でまた手助けする側になった訳?」

「我々は日本人に受け入れられているような印象があってね。日本人達でやるらしいからサポーター役を申し出たんだ。そうしたらキミに決まったんだよ。クジ引きでね」

 定樹は頭の奥から自分が知っている知識を掘り起こす。

「まあ確かにゲームとかで元ネタとして使われているのを見たことはあるな。美少女化したのも見たことある」

「そうだろう? 七十二体、フルメンバーでサポートするから期待してくれたまえ」

「まあ……そういうことなら頼らせてもらおうかな……」

 バエルが手を差し出した。その手を定樹は恐る恐る握った。


「その言葉が聞きたかったんだ。よしそれでは具体的な説明に移ろう。プレイヤーに特殊能力を与えるというものなんだ。どんな特殊能力かはサポーター毎に違う」

「特殊能力!?」

「まあゲームバランスの事もあるから、あんまり強力なのはあげられないんだがな。我々の場合は、『特別な使い魔』を与えるというものだ。この特殊能力自体に名前を付けるなら、『ソロモンズファミリア』だ」

 バエルは掌を上に向けた。


「使い魔?」

 定樹の体が黒い霧に包まれ、定樹のすぐ近くの床に魔方陣が浮かぶ。魔方陣から黒い光の柱が伸びる。黒い霧と黒い柱はすぐに音も無く消えた。

「よし……。上手くいったな。これがキミの使い魔だ」

 バエルが指で指した魔方陣の上には、使い魔と呼ばれる存在がいた。

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