第25話 女子会【h】

【ソフィ視点】

『もしよろしければこのお礼にエステなど如何ですか?勿論お代はいただきません!』

 

 きっかけはクレアさんのこの言葉でした。


 話を聞くとクレアさんはマッサージ店を営んでいらっしゃるようです。トロピアスはマッサージでも有名な街。私達はお言葉に甘えることにしました。


 本当は一番の功労者であったヴォルクさんにもマッサージを受けてもらいたかったのですが⋯⋯。


『みんなで⋯⋯?い、いや!俺はちょっと体動かしたいからいいよ!また時間になったら戻ってくる!』


 と言って、足早に出ていかれてしまいました。ゆっくり話ができると思っていたので残念です⋯⋯。


 そういう訳で今は、施術着に着替えている最中です。


「ソフィお姉さん、これどうやって着るんですか?」


 カコちゃんが桃色の施術着とにらめっこしています。ですが聞かれた私もエステは初めての経験。よく分からないのが本当のところです。


「何してんのよ全く⋯⋯着せてあげるからじっとしてなさい」


 そんな私達を見かねたのか、リンカさんはカコちゃんから施術着を受け取ると、手際よく着せていきます。 


「ちょっとソフィ。何ぼーっとしてんのよ。あんたもこれ見ながら着なさいよ?」

 

「は、はい!」


「あ、ちょっとそうじゃないわよ⋯⋯後でやったげるから待ってなさい」


  ⋯⋯口の悪さで勘違いされやすいですが、リンカさんは優しい方です。なんだかんだカコちゃんの面倒も見てくれますし、私のことも気にかけてくれます。


「⋯⋯よし、こんなもんかしら?」


「わぁ!リンちゃん凄いです!ありがとうございます!大好きです!」


「⋯⋯っ、何よこれぐらいできて当然よ」


 カコちゃんのストレートな感情表現に、リンカさんは顔を赤くします。恥じらうその姿は失礼かもしれませんが、とても愛らしく感じられました。


「何あんたも笑ってんのよ!⋯⋯次はあんたよ。じっとしてなさい」


「はい、よろしくお願いします」


「⋯⋯あんたの肌、綺麗ね」


「あ、ありがとうございます。リンカさんも綺麗ですよ」


「も?自分が綺麗って自覚はあるのね?」


「へっ!?あ、そ、そういうつもりじゃ」


「冗談よ。さっき笑った仕返し」


 慌てふためく私を見て、いたずらっ子のように笑うリンカさん。


 ⋯⋯思えばこんなにゆっくりと会話できたのは初めてかも。今日を境にもっと仲良くなれればいいな。


「むー!2人でなかよくなんてズルいです!あたしも仲間に入れて下さいよぉ!」


「んー、どうしようかしら?」


「ええっ!じゃ、じゃあソフィお姉さん!ソフィお姉さんならあたしを仲間外れにするなんて外道なマネしないですよね!?」


「ふふふっ」


「笑ってないで答えて下さいよぉ!!」


 更衣室で行われた小さな小さな女子会。


 マッサージ中もゆっくりお話しできたらいいな。


 そんなことを思いながら、私達は部屋を後にしました。






 

 


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