第23話 怪しげな集会
【リンカ視点】
あいつらと別れた後。
私はカコとともに広場まで来ていた。先ほど通ってきた露店街も混んでいたけど、ここがレベルが違う。下手したら迷子になるわね。
「カコ、あんたあんまりウロチョロするんじゃないわよ」
「むぅ、子どもじゃないんですから分かってますよ!」
「私から見たらあんたは子供よ」
頬を膨らませるカコを尻目に足を進める。そんな時であった。
「世界はもうすぐ破滅する!」
「⋯⋯!」
広場中に響き渡る男の声。驚きのあまり足が止まる。
誰よこんな広場で騒いでいるのは!
苛立ちながら声がした方向に視線を向けた。
広場の中央にできた小さな集団。
台に立って声を張り上げる男。それを黒いフードを被った男女が熱のこもった目で見つめている。
「止まらない魔物による被害!偉い奴らは何とかすると言っているが実情はどうだ!?私達の生活は全く良くならない!!このままでは飢え死ぬしかない!」
「そんなの嫌だ!」
「そうよ!死にたくない!」
「どうしたらいいんだ!」
「救われる方法はただ1つ!我らが教祖、ジュノム・テンゲラーを信じるのだ!そうすれば我々は神の力によって救われ、楽園のような生活をすることができる!」
「うおおおおお!!」
⋯⋯茶番ね。
真っ先に出た感想はそれだった。
実にあほらしい宗教だ。
そんな精神論を信じてパンが食べられるのならその考えに誰もがすがるだろう。信じるだろう。
だが、実際はどうか?神は人を救うか。答えはノーだ。
神は人に試練を与えるとしても、施しなんて与えない。偉い奴も神も同じだ。そんなもの信じる時間があるなら少しでも働いた方がいい。少なくとも私はそう思う。
しかし庶民はそうとは考えないらしい。
「そ、そうだ!貴族共は威張ってばかりで俺達を助けてくれない!」
演説に感化されたのか、遠くで見ていた男が叫ぶ。すると。
「こんなに頑張っても生活はよくならない!」
「エリートは俺達を殺す気か!」
「俺達を誰か救ってくれ!」
次々と上がる声、声、声。
溜まったものを吐き出すように不満を叫び続ける人々。そんな彼らに演説男は優しい口調で語り掛ける。
「皆さんの苦しみ、とてもよく分かります。辛かったですよね?苦しかったですよね?ですがもう大丈夫です?我らの教祖が、教団が貴方達を救います。必ずです」
「あ、ああああああ!ありがとうございます!ありがとうございます!」
狂信的。異常としかいえない光景であった。
得体のしれない気持ち悪さ。早くここから立ち去りたかった。
「カコ、行くわよ⋯⋯カコ?」
返答はない。辺りを見回してもいない。もしかしてはぐれた⋯⋯?
「もうっ!離れんなって言ったのに!」
見つけたら説教してやる!
そう決めて捜索を始めようとした時であった。
「は、離せよ!」
「ダメですっ!お財布返して下さい!」
「お、お兄ちゃん、返そうよぉ」
少し離れたところから聞き覚えのある声。駆け寄るとそこには少年にのしかかったカコがいた。近くでおろおろしている少女はどうやらこいつの妹らしい。
「⋯⋯何してんのよあんた?いじめ?」
「あ、リンちゃん!聞いてください!この子があたしの財布を盗んだんです!」
「⋯⋯はぁ?」
カコの訴えに、少年は顔を背けるだけであった。
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