第12話 山賊襲来
「これは⋯⋯!」
「ひどい⋯⋯」
声のした場所まで辿り着くと、そこには目を覆いたくなるような光景が広がっていた。
大破した馬車。積荷は乱暴に強奪されたのか、道に散らばっている。そして馬車の周りには抵抗したであろう数名が血を流して倒れていた。
「ソフィ!回復を頼む!」
「はいっ!」
ソフィにそう声をかけると、俺は近くで倒れる男性を抱き起す。額から出血があるが、呼吸はある。
「⋯⋯ううっ」
「大丈夫か!?何があった?」
「賊に⋯⋯やられた⋯⋯」
「こんな街中でか?」
「あいつらに⋯⋯街の中かどうかなんて関係ないよ⋯⋯奪えるものは全部奪う⋯⋯そんな奴らさ⋯⋯」
加えて平気で危害を加える奴ら。相当凶悪な賊であることは確かだ。
「待ってろ、今応急処置を」
「む、娘を⋯⋯」
「娘?」
「娘を助けてくれ⋯⋯あいつら、攫っていきやがった⋯⋯早くしないと売られる⋯⋯!」
「なんだと⋯⋯!」
人身売買までやっているのか!?思わず駆け出しそうになる。一刻も早く追いかけて救出しなくてはならない。
⋯⋯だが。今は人命救助の方が先だ。感情を抑え込みながら、男の額に包帯を巻いていく。
「終わりました!」
ソフィが駆け寄ってくる。
「ありがとう!もう1つ、頼まれてくれないか?」
「私にできることなら」
「無事だった人に起きたことを聞き込みを。あと可能ならこの賊についての情報を集めてほしい」
「分かりました!」
また風のように走り去っていった。自分のお姉さんが大変な中、他の人のために動ける。彼女は本当に強い女性である。
「⋯⋯さて」
これから考えないとな。
賊を壊滅させる方法を。
【リンカ視点】
その気に入らない男がやってきたのは数日前。
そいつは初対面で私の裸をガン見してきたのだ。とんだ蛮行。極刑ものである。
そして先ほどは、なんと幼いカコに手を出した。
変態でロリコン。男はこれだから嫌。女の気持ちなんて考えず、ただ性欲を満たそうとする野蛮な存在。
ああもう!!思い出しただけで腹が立ってきた!
読んでいた雑誌を投げ捨て、ベットから起き上がる。
「⋯⋯コーヒーでも飲もうかしら」
うんと砂糖を入れたやつ。糖分取らないとやってられないわ。
部屋を出て、古びた階段を下りる。あの女、ミステリアは兵舎だとぬかしているが、どう見ても事故物件だ。住んでいる人間の気がしれない。
「⋯⋯なら私も狂っている側の人間ね」
思わず口角が吊り上がる。前の自分が見たらなんて言うだろう。まぁ、どうでもいいが。
「やあっ!はあっ!」
⋯⋯?カコの声?あの子まだ中庭にいたのね。
ちょうどいい。ちょっとからかってあげようかしら。
「カコ、あんた何してんの―」
⋯⋯唖然とした。
空中で不規則な動きをする緑色の物体。カコはちょこちょこと動き回りながら、それを撃ち落とさんと弓を引く。
「あ!リンちゃん!やっほーですっ!」
「リンちゃん言うな。あんた何してんの?」
「これですか?ずばりっ!特訓です!」
「特訓~?」
こんなおかしなことが?特訓?
「こんなん効果あるのかしら?」
「むっ、リンちゃん信じてませんねっ!これは効果あるんです!絶対!」
「へぇ、根拠あんの?」
「お兄さんが教えてくれたことですから!」
「⋯⋯お兄さん?」
血管が浮き出るのを感じる。この騎士団もどきに男はアイツしかいない。
「お兄さんすごいんですよ!あたしの経験不足を補うためにしてくれたんです!」
「して⋯⋯!?」
あの野蛮人⋯⋯!
「だんだん焦らず狙撃できるように⋯⋯ってリンちゃん?聞いてます?」
殺す。
殺す殺す殺す殺す殺すっ!
絶対殺す!
「リ、リンちゃん⋯⋯顔、怖いですよ?」
「あらごめんなさい?ちょっと愉快になっちゃって」
「そ、そうですか?」
⋯⋯でも考えてみたら。
殺したら汚い血で服が汚れるかもしれない。
ならほかに⋯⋯そうだ。
「⋯⋯リンちゃん?」
「あんたに後でいいもの見せたげる⋯⋯無様に這いつくばるあいつの姿をね」
早く帰ってこないかしら。
そのまますぐに追い出してやるわ。
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