一年生編最終章
エピローグ1 親愛なるファントムへ
神奈川県の温泉街にある某廃ホテルに旧車會である
麗のメンバーにより解散を余儀なくされた彼らであったが、ある用件の為、止むを得ず密かに集会を行っていた。
暴走と言う社会への迷惑を顧みる事の無い、何時までも大人になれないモラトリアム人間達とは言え、社会人中心のメンバーで構成された彼らにとっては一回り近い年下の小娘達に敗北したのは大いに屈辱ではあったが、同時に自分達の限界と現実を痛烈に突き付けられるものであった。
これを機に解散する事は
三十人程で集まっている
「なぁ、膳夫のオッサンよぉ……突然リベリオン解散するって聞いたけどよぉ……如何いうこった? これから
身長180センチ半ばのワイルドツーブロックの髪型をした少年はじぶんよりも十歳以上年上の男の後頭部に靴底を乗せていた。
その後ろで、銀髪にルーズなくせっ毛のツイストパーマの小柄な男が目の前の出来事に対して無関心そうにスマートフォンを弄り続けていた。
「はっ……ハイ……阿蘇さん。ですが、これ以上俺達が走る訳には行かないものでして……」
震えながら言う膳夫に対し、阿蘇と呼ばれた少年は踏みつける足の力を込めながら怒鳴った。
「ああっ! テメーラが静岡のヤー公と揉めてタマ取られそうでブルっていた時、誰がソイツ等ぶっ潰して助けてやったと思ってるんだ!」
「もっ……申し訳ございません!」
余程恐れているのか? 膳夫は阿蘇と言う少年に踏みつけられながらも一切反論が出来なかった。
「まぁまぁ阿蘇君……オジサン達をこれ以上苛めたら可哀そうだし、その位で勘弁してあげない?」
ツーブロックでベージュ系ハイトーンカラーのスパイラルパーマをかけた身長175センチぐらいの男子は粗暴な暴力人間である阿蘇とは正反対に穏やかな声で言った。
「あ? 邪魔するなよ柏」
阿蘇は自分を止めた少年を柏と呼びながら睨みつけた。
「ヤレヤレ。粗暴で突っ走るのだけは中学の頃から変わってないね……理由は知らないけど、この人達にだって辞めたい大人の事情があるんでしょ?」
少なくても柏は自分達の身に寄り添ってくれるものだとほっとしたのも束の間、その穏やかな口調とは裏腹に悪魔の様な提案に膳夫達の血の気が引いた。
「要は
その言葉に柏は不機嫌そうな表情が一変し、口元を釣り上げた。
「ああ。ソイツは良いアイディアだな。幾ら払わせるか?」
「そうだね……腐っても大人なんだし、一千万が妥当じゃない?」
「一千万だとっ!」
柏の理不尽な提案に膳夫は思わず顔を上げた。
「いやぁ~貴方達ブルーカラーの収入が幾らか知りませんけど、一人頭三十万ちょいぐらいなら余裕で払えるでしょ?」
柏が申し訳なさそうに頭を頭を掻いていたが、誰の目から見てもわざとらしい仕草にしか見えなかった。
「ふざけるな!」
「今日と言う今日は勘弁ならねぇ!」
「ガキが! つけあがるんじゃねーぞ!」
「皆さん落ち着いてください! 話を聞いてください!」
「上等だ! 全員ぶち殺してやろうか!」
柏は演技臭く慌てた様子で宥めようとし、阿蘇は今にも手近な相手を殴りかかりかねない剣幕で怒鳴っていたが――
「お前等騒ぐなよ。今面白そうなモン見つけて機嫌が良いところだからよ」
スマートフォンを弄っていたツイストパーマの小柄な少年が口を開くと、その場に居た全員が水を打ったように静まり返り、直後にメールの着信音が何回か廃ホテルの駐車場内に響き渡った。
「お前ら全員にメールを送った。すぐに内容を確認しろ」
阿蘇や柏と膳夫は自分等のスマートフォンに届いたメールを開くと、次の様な内容が掛かれていた
件名:Fw:親愛なるファントムへ
久しぶりに連絡するね。まぁ、堅苦しい挨拶は抜きにして、前に逢った時は「最近退屈している」とか言っていたと思うけれど、まだ君を満足させるような面白い出来事は起きてないかな?
起きてないよね? だって、そんな事があったら君は俺に真っ先に教えてくれるだろうからさ。
そんな、退屈で退屈で仕方の無い君の為に良いニュースがあるよ。
君の所の傘下でミカジメ料を払っているガーディアン・オブ・ザ・リベリオンって旧車會が麗っていう女子中心のメンバーで構成された東京のチームに潰されたって事は耳に入っているとは思うけど、その麗って言うのが、どうやら君の想い人も入っているみたいなんだよね。
しかも二人だ。
只、僕の勘違いかも知れないし、君の目で確認してみると良いよ。
麗が喧嘩している動画のURL送っておくから確認してね。
https://www.niyaniyaXXXXX.XXXXX
願わくは、君を満足させる玩具であることを願うよ。
取石鹿文
追伸
想い人達以外にも面白いのが居るよ。君ぐらいの身長の男子だけど、この時点で格闘技歴2ヶ月位って噂だから驚いたね。
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