第124話 温泉後のテンプレと言えば勿論アレでしょう!
「赤銅……今度こそテメーを完膚なきまでに叩き潰してやるぜ!」
麗衣は亮磨先輩を鋭利な刃の様な眼光で睨みつけながら言った。
「ハッ! やれるもんならやってみやがれ! テメーの弱さを思い知らせてやるぜ!」
亮磨先輩も麗衣の視線に一切怯む様子を見せないどころか、見下すような口調で言った。
竜虎相搏つとはこの事か?
最早どちらかが敗れるまでこの二人の戦いを止める事は何者にも出来ない。
スッと麗衣が腰を落とし、低い体勢で構える。
亮磨先輩も呼応するように重心を落とし前傾姿勢になった。
「死ねや赤銅!」
麗衣が叫びながらスナップを効かせながら右手首を返して打つ!
「笑わせんな美夜受!」
亮磨先輩も負けじと強く右手首を返して打つ!
―カコン! カコン! カコン! ―
二人が手首を返し、ラケットで打った球が卓球台上で飛び交っていた。
◇
「あああっ! クッソー!!! また負けた!」
麗衣は卓球台に両手を打ち付けるとガックリと項垂れた。
「ふふっ。これで俺の三連勝だな。美夜受の分際で現代のイネ中卓球部と呼ばれたこの俺に卓球で勝とうなんて百万年はえーんだよ」
イネ中卓球部ってギャグ漫画だよな……。
確か作中に某有名ボクシング漫画のコメディのキャラクターが居て、卓球の練習中にサンドバッグ殴っているキャラが居たけれど、言い出した人はそれでボクサーの亮磨先輩を揶揄ったつもりなのだろうが、多分元ネタを知らない亮磨先輩は凄い事と勘違いしているのだろう。
このまま勘違いしている亮磨先輩を観察するのも面白そうなので黙っている事にした。
という訳で(?)俺達は今、温泉後の
俺は運動神経が鈍いので、同じくあまり運動神経がよくないと言う静江と卓球をやる事になった。
「おっ……お手柔らかにお願いします」
静江はもじもじと恥ずかしがりながら言った。
「こちらこそ宜しく。俺も下手くそだから緊張しないでくれよ」
「はっ……ハイ! ……では、行きますね……エイッ!」
静江が所謂皇子サーブの様にふわっと球を浮かすと、スカッと空振りして前のめりになると浴衣がはだけ、両肩が露出した。
「ああ! 惜しいな!」
もうちょいで「ポロリもあるよ」だったのだが。
「うううっ……確かに上手く当たりませんね」
俺がうっかり口にした言葉の本意を悟られずに少し安堵した。
静江はサーブ権が俺に移ったので球を投げて寄越した。
「じゃあ、行くよ」
俺が普通にサーブを打つと、静江は勢いの弱い球を卓球台の上に身を乗り出して打ち返そうとし、球はぷにゅっ! とはだけた浴衣の谷間に挟まった!
「はううううっ! 武先輩のエッチ!」
静江は今更はだけた浴衣をなおすと俺に背を向けるようにして隠した。
「いやいや! 狙ってないから!」
本当に狙ってはいないけど静江と言うキャラクターからこういう展開になるのは想像出来たけれどね。
「そっ……そうですよね。御免なさい。澪ちゃんじゃあるまいし、こんな事狙ってしませんよね?」
そう言いながら俺に球を返してきた。
「当たり前だろう? 狙ってやるとしてもそんな腕無いから」
堂々と痴漢行為を行う澪と違い、俺はムッツリスケベだから直接手を下すことは無いのさ。
「そうですよねぇ~武先輩がそんな事する訳ないですよねぇ~御免なさい」
俺は返って来た球を手に取ると挟まった谷間のぬくもりを確かめるように、何度も球を手の中に転がしているのだが、俺がそんな事をしているとは露とも知らず静江は謝って来た。
「じゃあ、また行くよ」
もう一回あの谷間にぶち込んでやるぜ!
気合を込めて俺は先程と同じ様にサーブを打つ。
だが、気合を入れすぎて今度は少し球の勢いが強くなっていたのか?
少し早めに飛んで行った球を静江が勢いよく空振りすると腰の回転で腕の後からついてきた爆胸に球がぶつかると、明らかにピンポン玉の質と量を超えたスピードで球が弾き返された。
「えっ?」
爆乳の持ち主は常にダンベルを肩にぶら下げているようなものだと聞いた事があるけれど、そのダンベルの重さで弾き返された球は弾丸の如き凶器となり、俺の額を打ち抜いた!
◇
「全く……卓球で怪我する人なんて初めて見たわね……」
勝子は呆れ顔で俺の額に絆創膏を貼ってくれた。
「いや……マジでアレは凶器だよ!」
俺もラケットで打つよりも強い球を爆乳で打つなんてギャグマンガでも見た事ないぞ。
静江、なんて恐ろしい子!
「……どうせイヤらしい目で静江の胸でも見ていて球に集中していなかったんでしょ?」
「その点、勝子の相手は卓球だけに集中出来て良いよなー……って、イテテ!」
勝子は俺の絆創膏が貼られた額に拳をぐりぐりとねじ込んできた。
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